まつ毛を長く、濃くするために使う成分が、目の周りの脂肪を減らし、まぶたをくぼませる可能性がある。
米国の研究グループが、2026年10月、美容皮膚科学誌に発表した。
まつ毛が伸びる一方で、目の周りの脂肪が減少

目の周りに指を添える女性。まぶたのくぼみや目元の皮膚の変化は、加齢などによっても生じることがある。画像はイメージです。(出典:Adobe Stock)
- まつ毛を伸ばす成分→プロスタグランジン類似体は、まつ毛の成長を促す作用があり、緑内障治療薬やまつ毛貧毛症の治療薬などに使用。
- 目元への影響→目の周りの脂肪減少や上まぶたのくぼみ、まぶたの下垂、皮膚の色素沈着などが報告されている。
- 副作用の仕組み→脂肪細胞の成熟抑制や脂肪の分解促進が関係する可能性。ただし、美容目的での使用による発生頻度は不明。
「プロスタグランジン類似体」は、眼圧を下げる緑内障治療薬などに使われてきた成分のグループだ。この成分には、まつ毛の成長期を長くし、長さや太さを増す作用もある。そのため、まつ毛を増やす医薬品にも応用され、海外では関連する成分を含むまつ毛美容液も販売されている。
しかし、眼科では以前から、この成分によって目の周りの脂肪が減少するなどの副作用を報告してきた。今回、研究グループは、こうした副作用に関する研究や症例報告を整理し、美容目的での使用にも注意が必要だと指摘した。
これまでの研究では、プロスタグランジン類似体を使った人で、目の周りの脂肪が減る、上まぶたのくぼみが深くなる、まぶたが下がる、皮膚の色が濃くなるといった変化が報告されている。
こうした一連の変化を「プロスタグランジン関連眼窩周囲症(PAP)」と呼ぶ。研究グループは、成分が脂肪細胞の成熟を抑えたり、脂肪の分解を促したりする作用が、目の周りの脂肪減少に関係している可能性を説明している。
また、こうした変化は徐々に進むことがあり、加齢による目元のくぼみと区別しにくい場合もある。片方の目だけに薬を使った人では、左右の目元に違いが生じた例も報告されている。
ただし、これまでの研究の多くは、緑内障の点眼薬を使う人を対象としている。美容目的のまつ毛美容液には、医療用の点眼薬とは異なる類似成分を含む製品もある。まつ毛美容液の使用に伴う目元の変化については、症例報告が中心で、どの程度の頻度で起こるのか、十分なデータはない。
研究グループは、こうした副作用を美容目的でも見落とさないよう注意を促している。
使用中止後に改善した例も

女性の目元を写した写真。まつ毛の成長を促す成分の中には、目の周りの脂肪やまぶたの形に影響を及ぼすものがある。画像はイメージです。(出典:Adobe Stock)
- 使用中止後の変化→まつ毛美容液の使用中止から6カ月後、緑内障治療薬の中止から1年後に、目元のくぼみなどが改善した事例も。
- 日本の医薬品でも注意→まつ毛貧毛症治療薬「グラッシュビスタ」の添付文書には、上まぶたの溝が深くなる「眼瞼溝深化」を重大な副作用として記載。
- 市販美容液の成分表示→日本の研究で、表示のないプロスタグランジン類似成分を1製品から検出。美容目的での長期的な安全性も検証が必要。
今回、研究グループは、プロスタグランジン類似体の使用をやめた後、目の周りの脂肪減少やまぶたのくぼみが改善した事例についても整理した。
過去の症例報告では、まつ毛美容液を10カ月間使用し、目元の皮膚が薄くなったり、くぼみが生じたりした人が、使用中止から6カ月後に外見が改善することもあった。また、緑内障治療薬を使っていた9人を調べた研究でも、使用中止から1年後にまぶたのくぼみなどが改善していた。
こうした結果から、研究グループは、目元の変化は使用をやめることで回復する可能性があると説明している。ただし、必ず元の状態に戻るわけではなく、回復の程度や期間には個人差がある。美容目的で使用した場合の長期的な影響や、安全な使用方法についても、さらに研究が必要だという。
日本でも、プロスタグランジンに関連する成分が、まつ毛貧毛症の治療薬として使われている。
例えば、ビマトプロストを含む処方箋医薬品「グラッシュビスタ」は、まつ毛の成長を促す薬だ。その添付文書では、上まぶたの溝が深くなる「眼瞼溝深化」を重大な副作用として記載している。
一方、医薬品ではない市販のまつ毛美容液にも注意が必要だ。
国立医薬品食品衛生研究所の研究グループは、日本で市販されているまつ毛美容液の成分を分析し、成分表示に記載のないプロスタグランジン類似成分「イソプロピルクロプロステネート」を1製品から検出したと報告している。
今回のレビュー論文でも、研究グループは、海外で販売する一部のまつ毛美容液では、成分や濃度を十分に表示していないことを問題視している。研究グループは、まつ毛を伸ばすという美容上の効果だけでなく、目の周りの外見にどのような変化が起こり得るのかを理解することが重要だと指摘する。
参考文献
Kaufman L, Khuhro A, Schwierking S, et al. Periorbital Fat Loss From Prostaglandin Analogues: Dermatologic and Cosmetic Considerations. Journal of Cosmetic Dermatology. 2026;25(11):e71254.
https://doi.org/10.1111/jocd.71254
久保田領志、秋山卓美、五十嵐良明.市販まつ毛美容液におけるプロスタグランジンF2α類縁物質の含有実態調査.日本香粧品学会誌.2024;48(4):211-218.
https://doi.org/10.11469/koshohin.48.211
グラッシュビスタ外用液剤0.03%5mL 添付文書(PMDA)
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/112130_267970AQ1020_3_01
