顔へのヒアルロン酸注射は人気のある美容医療の選択肢の一つだが、過剰な注入は顔面のオーバーフィルド症候群(入れすぎ症候群)を引き起こすリスクをはらんでいる。
この問題に対応するため、オランダのエラスムス大学をはじめとする研究グループが2023年10月、超音波イメージングを駆使し、注入されたヒアルロン酸の正確な位置を把握し、効果的にヒアルロン酸をヒアルロニダーゼ注射で溶かす方法を報告した。過剰なヒアルロン酸注入の安全で効果的な修正法として注目される。
超音波で皮膚の下のフィラーを調べる
- ヒアルロン酸注射の普及→顔の若返りや美しさを引き出す非外科的治療法として世界中で広く受け入れられる。
- オーバーフィルド症候群の症状→頬が張り出したり、笑顔が不自然になったり、口の動きが悪くなるなどの異常が起こる。
- 治療法の試み→超音波イメージングを使ってヒアルロニダーゼの正確な注入を試み、治療の効果を確かめる。
世界中で顔の若返りや美しさを引き出す非外科的治療法として、ヒアルロン酸注射が広く受け入れられている。唇、頬、あごなど、顔のあらゆる領域が対象となり、研究の進歩によりフィラーは使い勝手がよくなっている。
しかし、過剰注入や不適切な注入により顔面オーバーフィルド症候群が発生するリスクがあり、問題になっている。頬が必要以上に張り出したり、笑顔が不自然になったり、口を動かしづらくなったりするなどの異常が起こる。
研究グループは不自然な笑顔に特に焦点を当て、顔の内部の解剖学的な構造に着目してフィラーの位置を確かめることで、より効果的な問題解決を目指した。
研究では、28人の患者(女性26人、男性2人)を対象に、超音波イメージングを用いて以前に注入されたフィラーの位置を評価。それからヒアルロニダーゼの正確な注入を試みて、治療の効果を確かめた。
口角を動かしやすくなった
- 研究からの発見→超音波イメージングでヒアルロン酸の位置を把握し、ヒアルロニダーゼを注射する手法が顔面オーバーフィルド症候群治療に有効。
- 確認された異常→28人の患者には、不自然な笑顔のほか、顔の張り出しやしこりも確認。
- 治療の成果→超音波イメージングによりフィラーの位置を把握し、ヒアルロニダーゼ注射。表情筋の動きに影響を与えるフィラーの除去に成功。
研究から明らかにされたのは、顔面オーバーフィルド症候群の治療をする上で、超音波イメージングでヒアルロン酸の位置を把握てから、ヒアルロニダーゼを注射する手法が有効だということ。
28人の患者を対象にした今回の研究では、不自然な笑顔だけではなく、顔の不自然な張り出しやしこりも確認された。超音波イメージングにより、注入されたフィラーが把握され、そこにヒアルロニダーゼを注射。表情筋の動きに影響を与えていたフィラーの除去に成功。
治療により患者の笑顔の自然さと顔の張り出しが顕著に改善し、特に治療前後で口角の位置が垂直方向に0.60cm、水平方向に0.30cm改善。口角の動きがよくなった。安全かつ効果的な顔面オーバーフィルド症候群の治療が提供されることが示された。
日本でもオーバーフィルド症候群は問題になっている。今回の研究で示されたような超音波を使ったヒアルロン酸の位置の把握と、その後にヒアルロニダーゼを注射する方法が参考になるかもしれない。