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ヒアルロン酸フィラーの溶けやすさは?米国皮膚科学研究で示されたヒアルロニダーゼの実験結果

カレンダー2023.8.9 フォルダー最新研究

ポイント

  • ヒアルロニダーゼ注入は6種類のヒアルロン酸フィラーを同様に溶かすことができた
  • 種類によって溶解速度に差は見られたが、2時間後には同じように溶けた
  • ヒアルロン酸注入後に適切に溶かせることは施術後の修正にとって重要
ヒアルロン酸注入後に修正が必要になることもある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

ヒアルロン酸注入後に修正が必要になることもある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 ヒアルロン酸注入後にヒアルロニダーゼを注入する実験により、6種類のフィラーが同じように溶けることが示された。米国のクリニックと、ヒアルロン酸を手掛ける製薬企業のアラガンとの共同研究グループが、2023年7月にこの結果を報告している。

ヒアルロン酸の種類で溶け方が違う?

ヒアルロン酸には複数の種類がある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

ヒアルロン酸には複数の種類がある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 ヒアルロン酸を使ったフィラー治療は、顔のシワを目立たなくするなど若返りの方法として人気がある。

 ヒアルロン酸注入後に修正を行いたければ、ヒアルロニダーゼという酵素で溶かすことができるという特徴を持っている。

※ヒアルロニダーゼとは、ヒアルロン酸を分解する酵素。

 ヒアルロン酸には複数の種類があり、ヒアルロニダーゼによって溶け方には違いがあるとされる。例えば、高濃度でヒアルロン酸の分子同士が架橋されたタイプは溶けにくい可能性が考えられている。

※架橋とは、分子同士を結合させること。架橋することで硬さを増すなどの変化がある。

 そこで研究グループは6種類のヒアルロン酸の溶け方を比べることにした。動物実験を行い、ヒアルロン酸を注入後、ヒアルロニダーゼを注入して変化を確認した。溶ける速度や注入された場所の高さを比較している。

 調べたヒアルロン酸は次の通り。

  • VYC-25L(商品名Juvéderm Volux、ジュビダーム ボラックス)
  • VYC-20L(同Juvéderm Voluma XC、ジュビダーム ボリューマXC)
  • TEO-UD(同Teosyal Ultra Deep、テオシアル ウルトラディープ)
  • RHA4(同Teosyal RHA4、テオシアルRHA4)
  • BEL-V(同Belotero Volume、ベロテロ ボリューム)
  • RES-L(同Restylane Lyft、レスチレン リフト)

6種類が2時間後に同様に溶けた

ヒアルロニダーゼ注入でヒアルロン酸を溶かすことができる。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

ヒアルロニダーゼ注入でヒアルロン酸を溶かすことができる。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 こうして分かったのは、ヒアルロン酸の種類によらず、最終的にはヒアルロニダーゼによって同じように溶かすことができたこと。

 具体的には、1時間後までは溶けやすさに差があったが、2時間後からはヒアルロン酸の種類による差はなくなった。48時間後には、元の高さと比べて6~20%の高さの差があったが、統計学的に有意な差は認められなかった。

※1時間後の時点では、RHA4はVYC-25Lと比べて溶ける速度が速く、統計学的な有意差が認められた。

 研究グループは、動物実験によってヒアルロン酸の溶けやすさが確認されたとして研究の意義を強調している。ヒアルロン酸注入を必要以上に注入した場合など対処可能であることが推測できる。

 今後、さらに同様な検証が行われることで、施術の適切な修正につながることが期待される。

参考文献

Cavallini M, Pierce A, Nakab L. Comparative in vivo degradation of hyaluronic acid-based fillers following injection of hyaluronidase. J Cosmet Dermatol. 2023 Jul 17. doi: 10.1111/jocd.15932. Epub ahead of print. PMID: 37461249.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37461249/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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