女性向けホルモン治療で使われる「黄体ホルモン」と呼ばれるホルモン薬が、髄膜腫という脳腫瘍のリスク上昇に関連していることが判明した。この発見は2024年3月、フランスの研究者により報告された。
手術を受けた1万8000近くの女性を調査
- 黄体ホルモンの用途→子宮内膜症や多嚢胞性卵巣症候群の治療、更年期症状のホルモン療法、避妊薬の使用などに広く利用されている。
- 髄膜腫とは→脳や脊髄を覆う組織の異常増殖による病気で、通常は良性腫瘍に分類されるが、脳の働きに大きな影響を及ぼす。
- フランスの研究→2009年から2018年にかけて髄膜腫治療の手術を受けた1万8061人の女性を対象に、黄体ホルモンと脳腫瘍リスクの関連を調査。
黄体ホルモンは、子宮内膜症や多膿疱性卵巣症候群のような婦人科の病気の治療、更年期症状のホルモン療法、避妊薬などで広く使われている。美容医療を提供するクリニックでも使われていることがある。
髄膜腫は、脳や脊髄を覆う組織が異常に増殖する病気で、通常は良性腫瘍に分類されることが多い。転移ではない脳腫瘍の中で最も一般的とされる。脳はもろい組織であり、脳腫瘍の増大によりダメージを受けやすく、脳の働きに大きな影響を及ぼすため、良性腫瘍とはいえ重大な問題になる。
髄膜腫のリスク上昇と関連する要因として、高齢であること、女性であること、特定の高用量黄体ホルモンの使用が既に知られていた。黄体ホルモンにはさまざまな種類があり、これらが一般的に脳腫瘍にどのような影響を与えるのかが注目されていた。
フランスの研究者は、09年~18年にかけて脳内の髄膜腫を治療するための手術を受けた1万8061人の女性(平均年齢58歳)の女性を対象に、複数の黄体ホルモンについて脳内にできた脳腫瘍のリスクとの関連を調査した。
1年以上使っている人でリスク上昇を確認
- 研究の発見→黄体ホルモン薬を長期間使用すると髄膜腫のリスク上昇に関連することが明らかに。
- リスク上昇の具体例→「メドロゲストン」1年以上使用で4.1倍、「メドロキシプロゲステロン酢酸エステル注射薬」1年以上使用で5.6倍、「プロメゲストン」1年以上使用で2.7倍のリスク上昇。
研究から明らかになったのは、黄体ホルモン薬を長期間使っている人は、髄膜腫のリスクが上昇していたこと。
具体的には、「メドロゲストン」を1年以上使った場合、髄膜腫のリスクが4.1倍、「メドロキシプロゲステロン酢酸エステル注射薬」を1年以上使った場合、5.6倍、「プロメゲストン」を1年以上使った場合、2.7倍のリスク上昇が見られた。
なお次の薬はリスク上昇は見られませんでした。プロゲステロン、ジドロゲステロン、子宮内レボノルゲストレル
研究グループは、今回の研究からは因果関係を断定するには至らないものの、特に世界で7400万人に使われている避妊薬として「メドロキシプロゲステロン酢酸エステル」のリスク上昇には警鐘を鳴らす必要があると見ています。この避妊薬は注射式で、日本でも一部自由診療で使われていることがあります。
避妊薬だけではなく黄体ホルモンを用いた治療は日本国内でも一般的に行われています。このような研究の結果を知っておくことは重要かもしれません。