2023年2月に発表された研究によると、NMN(β-ニコチンアミドモノヌクレオチド)の使用により、健康な40~65歳の成人のNAD+代謝を向上させ、血管の硬さを低下させる可能性が示された。
これは日本のDHCにより発表された論文で、国際的な専門出版社グループであるドイツ Springer Nature社が刊行するScientific reportsで23年にダウンロードが多かった「Journal Top 100 of 2023」の一つに選出された。
「発電機」ミトコンドリアとNMN
- 老化とミトコンドリアの関係→ミトコンドリアはエネルギーを生み出す細胞内の「発電機」で、NMNやNR(ニコチンアミドリボシド)はその機能に必要な成分として注目されている。
- NMNの役割→NMNは「NAD+」に変化し、NAD+の低下は老化と関係しているため、NMNを補給することで老化防止が期待されている。
- DHCの研究→40~65歳の成人36人を対象に、12週間のNMNサプリメント摂取がNAD+や血管の硬さに与える影響を調査した。
老化とミトコンドリアとの関係が注目されている。ミトコンドリアは、酸素を利用して、エネルギーを生み出す細胞の中にある「発電機」の役割を果たす。この発電機を機能させるために必要になるのがNMNやNR(ニコチンアミドリボシド)のような成分で、これらはサプリメントとして注目されている。
NMNは、エネルギーを生み出すために必要な「NAD+」に変化するが、NAD+の低下は老化と関係しているとされる。NMNを補給することで、NAD+の生成が促されて、老化防止につながると考えられている。
DHCの研究グループは、12週間のNMNサプリメントにより、40~65歳の成人のNAD+や血管の硬さにどのように影響するかを確かめた。36人の健康な成人を2つのグループに分けて、一方のグループには1日2回125mgのNMN、またはプラセボを摂取してもらい効果を比べた。
BMIや血糖値が高い人で特に効果
- NAD+の代謝向上→NMNを摂取したグループでNAD+の代謝向上が示される。
- 脈波速度(PWV)値の変化→NMNを摂取したグループで低下傾向が見られ、特にBMIや血糖値が平均以上の人たちにおいて有意な減少が確認された。
- NMNの効果→心血管疾患のリスク軽減に役立つ可能性があると指摘されている。
ここからNMNを摂取したグループでは、NAD+の代謝向上が起きていると確認された。
血管の硬さについては、脈が血管を伝わるスピードである脈波速度(PWV)値から調べたところ、NMNを摂取したグループで低下する傾向が確認された。この変化は統計的な有意差とは判定されなかったが、BMIや血糖値が平均以上の人たちに限って解析すると、NMNを摂取したグループで有意な減少が確認された。血管の硬さが低下したことになる。
研究グループは、NMNが心血管疾患のリスク軽減に役立つ可能性があると指摘する。
冒頭のようにこの論文は国内外で注目され、DHCによると、「昨年、2万報を超える論文が同誌に掲載され、そのなかで NMN に関する当社の論文は昨年の 1 年間で 1万5899 件のダウンロード数を記録しました」と紹介している。