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非吸収性フィラーの長期リスク、炎症・感染・しこりに、吸収性のヒアルロン酸やバイオスティミュレーターの合併症も拡大中、オランダの研究グループが報告

カレンダー2024.9.24 フォルダー最新研究
フィラー注射は合併症を起こすことがある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

フィラー注射は合併症を起こすことがある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 美容医療において、フィラー治療は世界的に広く行われており、非吸収性フィラーと吸収性フィラーが使用されている。これらのフィラーは合併症のリスクを伴うため、施術を受ける際には十分な注意が必要である。

 オランダのエラスムス医療センターの研究チームは、2024年9月23日に発表した研究で、2011年から2016年と2022年のデータを比較し、非吸収性フィラーと吸収性フィラーによる合併症の発生率に変化が確認されたと報告した。

非吸収性フィラーの合併症リスクと使用の禁止

ヒアルロン酸やバイオスティミュレーターによる合併症も増えている。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

ヒアルロン酸やバイオスティミュレーターによる合併症も増えている。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 非吸収性フィラーは、かつて多くの国で広く使用されていたが、合併症のリスクが高いため、その使用は減少傾向にある。オランダでは2015年から非吸収性フィラーの使用が禁止されており、日本でも美容医療診療指針で使用を推奨されていない。

 非吸収性フィラーは体内に長期間にわたって残り、遅発性(遅れて発生する)炎症や感染、異物反応による肉芽腫(しこり)形成などの合併症を引き起こす可能性が高い。これらの合併症は施術から数年後に発症することがあり、患者にとって長期的な身体的・精神的負担となる。

 11年から16年の間にエラスムス医療センターの皮膚科外来をフィラーの合併症で受診した401人の新規患者のうち、77.6%(311人)が非吸収性フィラーによる合併症を経験していた。

 データをまとめると次のようになる。

外来診療における非吸収性フィラーと吸収性フィラーの割合(2011~2016年と2022年)
フィラーの種類 患者数(%)
2011~2016年 2022年
非吸収性 311人(77.6%) 160人(50.6%)
吸収性 75人(18.7%) 139人(44%)
 ヒアルロン酸 55人(13.7%) 131人(41.5%)
 バイオスティミュレーター 14人(3.5%) 8人(2.5%)
  CaHa(カルシウムハイドロキシアパタイト) 13人(3.2%) 7人(2.2%)
  PLLA(ポリ-L-乳酸) 1人(0.3%) 1人(0.3%)
 コラーゲン 6人(1.5%) 0人(0)
不明 0人(0) 5人(1.6%)
その他 15人(3.7%) 12人(3.8%)

 一方、2022年にはフィラー合併症で受診した316人の新規患者のうち、非吸収性フィラーによる合併症は50.6%(160人)に減少した。この減少は、非吸収性フィラーの禁止措置や使用の減少によるもの見なされる。

 非吸収性フィラーの使用が禁止されてから数年経過しているにもかかわらず、海外で施術を受けた患者や、合併症の発症が遅れるケースがあるため、新たな合併症の報告が続いている。特に、中東やカリブ海地域でのフィラー注入が原因となる例が多く見られる。

 一方で、吸収性フィラーによる合併症も起こっているので、そちらも注意する必要がある。特にヒアルロン酸フィラーおよびバイオスティミュレーターによる合併症は増加している。

 11年から16年の間では、吸収性フィラーによる合併症は18.7%(75人)で、そのうちヒアルロン酸フィラーは13.7%(55人)だった。22年には、吸収性フィラーによる合併症は44%(139人)に増加し、そのうちヒアルロン酸フィラーは41.5%(131人)を占めている。

 バイオスティミュレーターは、コラーゲン産生を促進することで効果を発揮する吸収性フィラー。これらのフィラーによる合併症も報告されており、主にしこりや遅発性の炎症などが見られる。割合は少ないが注意は必要だ。

 11年から16年の間では、バイオスティミュレーター3.5%(14人)で、内訳はCaHa(カルシウムハイドロキシアパタイト)が3.2%(13人)で、PLLA(ポリ-L-乳酸)が0.3%(1人)。22年、バイオスティミュレーターは2.5%(8人)で、CaHa2.2%(7人)、PLLA0.3%(1人)と報告されている。

長期に非吸収性フィラーの合併症には注意

非吸収性は長期にわたってリスクがあり注意。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

非吸収性は長期にわたってリスクがあり注意。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 研究グループによると、非吸収性フィラーによる合併症は、施術から数年後に遅発性として発症することが多い。一方、吸収性フィラーによる合併症は、施術直後から数週間以内に発症することが多いが、まれに遅発性の反応も報告されている。

 先に述べたように、日本の美容医療診療指針でも、非吸収性フィラーの使用は推奨されておらず、特にその不可逆性や長期的な合併症リスクが問題視されている。

 過去に非吸収性フィラーの施術を受けた人を中心に、その後の合併症に継続的に注意しておく必要がありそうだ。

参考文献

Decates, T., Vroege, V., Hamer, M. and Velthuis, P. (2024), Comparison of Complications of Non-Resorbable (Permanent) Fillers and Resorbable Fillers. J Cosmet Dermatol.
https://doi.org/10.1111/jocd.16553

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ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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