再生医療を生かし、白髪、うねり、ぱさつきなど、頭皮や髪の衰えの進行を押しとどめたり、元に戻したりする新しいヘアケアが実現する可能性がある。
ロート製薬が2024年9月に報告した。
脂肪幹細胞を増やして、頭皮やせの解決を目指す
ロート製薬は、美容施術での使用実績も多い脂肪幹細胞の研究を積極的に進めていることで知られている。
脂肪幹細胞は、間葉系幹細胞の一つとして知られ、皮膚の再生治療やアンチエイジングなどさまざまな用途に利用されている。
同社ではこの細胞をヘアケアに応用し、毛髪成長を促す技術の開発を進める方針を示した。
例えば、解決に取り組む髪にまつわる悩みの一つは、加齢に伴い頭皮の厚みがなくなる「頭皮やせ」という現象。女性は30代後半から70代にかけて、頭皮の皮下組織の厚みが減少していくことが知られている。皮下組織は脂肪幹細胞から作られ、加齢によって脂肪幹細胞の数が減少していくことが問題になる。そこで脂肪幹細胞を増やすアプローチによって頭皮の状態を改善できるのではないかと考えた。
同社は、脂肪幹細胞の増殖を助ける足場になるコラーゲンに着目。脂肪幹細胞がコラーゲンを生成する力を持っているところから、このコラーゲンの生成を促せば、脂肪幹細胞の増殖が促進されるのではないかと研究を進めた。結果として、「加水分解シロバナルーピンタンパク」というタンパク質が効果的であることを確認。さらに、脂肪幹細胞の増殖などを促す物質として「トリペプチド1-銅」や「カプロオイルテトラペプチド-3」が有効であることも突き止めた。
くせ毛の原因を分子レベルで確認
さらに同社では、加齢に伴うくせ毛の解決にも取り組もうとしている。くせ毛は、髪質の変化や髪のうねりが関連している。また、「トステア(アミノエチルチオコハク酸ジアンモニウム)」という成分が毛髪の内部構造に作用し、くせ毛の改善に有効とされている。
同社では、髪の原子や分子レベルの解析を行ったり、髪の表面の見た目を調べたりすることで、髪の内部にねじれが生じていることを確認することに成功した。
今後、ロート製薬は、再生医療の技術を使い、研究結果に基づいて、ヘアケアのために製品を開発していくという。
美容医療において髪の健康は欠かせない問題であり、このような研究から新しい治療が実現する可能性もある。