隆鼻術の方法には、体に吸収される「PCL(ポリカプロラクトン)」という素材のメッシュを使う方法が存在するが、その施術でどのような合併症が発生するのか。
鼻をメッシュで高くする方法とは?
鼻の高さは、「鼻中隔」という鼻の中央部分にある軟骨の大きさなどによって左右される。アジア人は鼻中隔が小さいなどの理由から、鼻筋が低い傾向がある。そのため、鼻を高くするための隆鼻術が人気で、耳たぶの軟骨や胸の肋軟骨を使って鼻の軟骨を補う方法のほかに、人工的な素材を使って補う方法がある。
人工物を使う場合、PCLメッシュやゴアテックスの糸といった人工素材が選ばれることがある。日本国内では、「オステオポール」や「Gメッシュ(G-Mesh)」といったPCLを用いた製品が隆鼻術に使われることがある。オステオポールは、シンガポールに拠点を持つ医療機器メーカーのオステオポール(Osteopore)が販売する製品「オステオメッシュ(Osteomesh)」に由来している。一方、Gメッシュと呼ばれる施術はPCLの糸を使う方法として日本でクリニックにより一般的に行われている。
※編集部注 Gメッシュという施術名は海外では一般的ではないと見られる。論文やウェブサイトを調べた範囲では見つけることができなかった。
メッシュを使って鼻中隔を補強する方法のほか、ボール状に加工したものと鼻先に挿入する方法、PCLの糸を鼻筋に挿入する方法などが実施される。PCLの糸は体に時間をかけて吸収されるため「溶ける糸」と表現されることもある。
こうした人工物を使った隆鼻術の合併症について報告した研究報告がこれまでに行われている。
その一つとして、韓国のグループが22年に、PCLのメッシュを使った隆鼻術の合併症について報告している。17年から19年にかけ、PCLメッシュによる隆鼻術を受けた774人を対象に合併症の調査を行った。施術を受けた人は、メッシュだけを使ったグループと、他のPCL素材も使ったグループ(複合PCL)に分けられた。
結果として、複合PCLグループでは96.7%、メッシュのみのグループでは94.3%が施術に満足していると回答した。合併症は、複合PCLグループでは17人に発生し、鼻先の低下、鼻先の形のゆがみ、メッシュの感染、メッシュの露出が確認された。メッシュのみのグループでは、2人にメッシュの感染が発生した。
合併症は自分の軟骨を使った方が少ない
サウジアラビアの研究グループも20年に、過去の論文を基にした分析で、アジア人の隆鼻術で認められた合併症のリスクを報告している。結果によれば、全体の合併症発生率は7.1%で、人工の素材を使ったグループは7.8%に対し、自分自身の軟骨を使ったグループは6.9%と、人工の素材を使ったグループの方がリスクが高かった。主な合併症は、再手術が4.1%、感染が2.1%、変形が1.6%、肥厚性瘢痕が1.6%認められた。
この研究では、アジア人は皮膚が厚く、軟骨が弱いことから、合併症の数は少ないとされた。一方で、手術の衛生状態が合併症に影響を及ぼす要因とされる。アジア人は、鼻の軟骨の構造が弱いため、自分の軟骨を使った場合に再手術の可能性が高くなる可能性も指摘している。
人工物を使った隆鼻術は、合併症が一定の割合で報告されている。国内でも合併症が報告されており、施術を検討する際にはそうしたリスクを理解しておくことは重要だろう。