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国際幹細胞学会が自由診療の再生医療などに改善を要求、エクソソーム、点滴治療、PRPなどどうなる?増える再生医療クリニックでは淘汰が進む可能性も

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日本では自由診療として再生医療が広く行われている。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

日本では自由診療として再生医療が広く行われている。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 美容医療の分野では、再生医療による施術が広く行われている。こうした施術は法律に基づいて行われているものの、2025年2月22日、国際幹細胞学会(ISSCR)は、会長ヴァレンティーナ・グレコ氏の名で、日本の厚生労働大臣、福岡資麿氏に宛て、さらなる再生医療の審査体制改善を求める書簡を公開した。

 以下では、今後、日本国内での実施にどのように影響を与えるかを考える。

審査をする委員会メンバー「専門性が不足」

国際幹細胞学会が日本の再生医療に改善を求める。(出典/国際幹細胞学会)

国際幹細胞学会が日本の再生医療に改善を求める。(出典/国際幹細胞学会)

 日本では、安確法と呼ばれる法律が2014年に施行され、再生医療が、製造や販売の承認前でも、自由診療や研究目的で提供可能となっている。美容クリニックなどで再生医療が行える状況になっているのはこのためだ。このような状況は海外では見られない。

※「安確法」は「再生医療等の安全性等確保に関する法律」の略称である。再生医療法とも呼ばれることがある。

 今回の書簡は、日本における安確法の改正に際して発表された。書簡の冒頭で、法律の改正に関して意見を述べたいと記されている。

 書簡では、国際幹細胞学会が、日本を含む約5000人の幹細胞研究者が所属する団体であることを紹介した上で、安確法の規制強化の方針を評価している。しかし、さらなる改善が必要だと強調している。

 国際幹細胞学会はいくつかの課題を指摘している。特に美容クリニックなどで提供される再生医療に関連したところでは、再生医療を実施するための認定再生医療等委員会による審査が求められるが、この委員会のメンバーの専門性が不足しているという指摘があり、安全性を裏付ける科学的根拠の不備なども問題視している。

 書簡では、2014年以降、第2種の再生医療の提供計画が1000件以上審査を通過し、毎年1万人を超える人たちが再生医療を受けていることを指摘。中には、脂肪由来間葉系幹細胞の点滴で視力障害を起こした事例が2024年に東京都で報告されたことも問題視している。

※日本における再生医療は、安確法に基づき、そのリスクの度合いによって3つのタイプに分類されている。「第1種再生医療等」は最もリスクが高く、世界で初めて行われるiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使う治療など、人に行われたことのない治療など。「第2種再生医療等」「第3種再生医療等」についてはよりリスクの低いものが分類される。例えば、脂肪幹細胞を使用する治療は第2種、脂肪組織や多血小板血漿(PRP)を使用する治療は第3種に分類される。

 書簡では、日本の再生医療が国際的なガイドラインに沿った形で運用されるように求めている。委員会のメンバーの専門性を重視すること、お手盛り審査を排除することなどの指摘が出されているほか、安全な再生医療が行われるように対策を講じるよう要請している。

日本からルールを作るくらいの動きを

山田秀和(やまだ・ひでかず)氏。近畿大学医学部皮膚科客員教授。近畿大学アンチエイジングセンターファウンダー。日本抗加齢医学会理事長。(写真/編集部)

山田秀和(やまだ・ひでかず)氏。近畿大学医学部皮膚科客員教授。近畿大学アンチエイジングセンターファウンダー。日本抗加齢医学会理事長。(写真/編集部)

 今回の書簡を見ると、日本の自由診療での再生医療を直ちに中止を求めているのではなく、日本の再生医療の有効性や安全性を向上させるように求めるものであることが分かる。

 世界的に見ても再生医療の利用が先行している日本に対して、その進展を評価しつつも、問題を起こさないように釘を刺す形になっている。

 日本では、安確法の次の改正に向けて、現在は細胞を使わないため再生医療の範囲外に置かれているエクソソームの規制強化の方向性が議論されている。今回指摘されたような幹細胞や認定再生医療等委員会の運営などの課題についても議論が進む可能性はある。

 ヒフコNEWSで伝えているが、日本抗加齢医学会理事長の山田秀和氏は、海外も日本と同じように再生医療の利用を進めたいと考えていると指摘する。

 日本では政府が再生医療を一定程度容認しており、研究や実用化が進めやすい状況にあります。一方で、欧米の一部から「危険な先行事例」と見られる面もあり、ネイチャー誌などで批判的な論調が示されることもあります。それをどのように整合的に説明するかが日本の課題です。

 しかし数年前まで米国が再生医療に否定的だったのに、今では「自分たちもやる」と動きが変わってきた。日本が先行しようとしたからといって、一概に悪いとは言えない可能性があります。

 国際基準の整備や国際的なサポートが必要とされる一方、最先端を走っているからこそ、日本がリードできる余地もある。

 このような見方も踏まえると、日本が海外から指摘を受ける前に、ルールを作り上げることこそが重要であるとも考えられる。また現場においても不適切な審査や施術が行われないようにすることは不可欠だろう。今回、認定再生医療等委員会のメンバーの専門性が足りないことや、科学的根拠が乏しいものが審査材料になっていることなどが指摘されたが、これらはもっともな指摘であり、改善すべき点は是正する必要があるだろう。

 再生医療は引き続き注目されると考えられるが、エクソソームの扱いがもう少し厳しくなるという考えがあるなど、規制強化の方向にある。再生医療クリニックは多数設立されたが、国内外の厳しい声を見ていると、これからは良いところは残り、悪いところは退場を迫られるという淘汰の時代になる可能性も考えられる。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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