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再生医療連載vol.1 日本独自の再生医療のルールを解説、知っておきたいこと

カレンダー2023.4.18 フォルダー連載・コラム

ポイント

  • 日本では一定条件を満たすと、製造と販売の認可前でも自由診療や研究目的で再生医療を実施可能
  • これは2014年に再生医療を規制する「再生医療等安全性確保法(安確法)」施行による
  • 安確法に基づいた再生医療提供では所定の手続きが定められ、違反すると罰則が適用される
細胞培養。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

細胞培養。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 ヒフコNEWSでは、再生医療について連載する。初回では、特に自由診療や研究目的で行われている再生医療に関連し、それがどのようなルールの下で行われているのかを取り上げる。再生医療は、一般的な医薬品や医療機器などを規制する「薬機法」と同時に別のルールによっても規制されている。それは2014年に施行された再生医療を規制する「安確法」によるもので、このルールができたことで、国内では製造と販売の認可前であっても自由診療や研究目的で再生医療が提供できるようになっている。

※「薬機法」は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、「安確法」は「再生医療等の安全性等確保に関する法律」のそれぞれ略称である。

再生医療は3種類に分類される

厚生労働省。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

厚生労働省。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 日本には、欧米の法律と同様に、医薬品や医療機器などを規制する薬機法と呼ばれる法律がある。再生医療もこの薬機法のルールが適用されるが、前述の通り、日本では安確法という海外にはない法律でも再生医療が規制されている。この独自のルールがあるために日本では一般的な医薬品や医療機器などと異なり、製造や販売が承認されるのに先だって幹細胞などを自由診療や研究目的で使用することができるようになっている。細胞を扱う医療機関や細胞を培養、加工、保存する施設が適切に運用されているかどうかなどが重要である。

 転換点となったのは14年で、この年に安確法と共に、薬機法が施行された(旧薬事法の改正)。安確法の施行により、ここまでに述べたように自由診療や研究目的で再生医療を利用できるようになり、薬事法改正によって再生医療に用いる細胞などを製品として製造、販売する場合に通常よりも早く承認を受けられる「条件及び期限付承認制度」が導入されることになった。再生医療がこの年から一挙に身近になったと言える。

 これら再生医療に関連する法律で定められたルールは多岐にわたり複雑だが、ここでは再生医療がどのように分類されるのか、そして、再生医療を利用するために満たさなければならない要件とは何かという2つの重要なポイントに焦点を当てる。

 まず分類についてだが、日本における再生医療は、安確法に基づき、そのリスクの度合いによって3つのタイプに分類されている。「第1種再生医療等」は最もリスクが高く、世界で初めて行われるiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使う治療など、人に行われたことのない治療などが含まれる。それと比べると「第2種再生医療等」「第3種再生医療等」についてはよりリスクの低いものが分類され、それらの中には美容医療でも用いられることのある体性幹細胞を使う治療などが含まれる。例えば、脂肪幹細胞を使用する治療は第2種に分類されると考えられ、脂肪組織や多血小板血漿(PRP)を使用する治療は第3種に分類されると考えられる。

国以外が運営する委員会の審査が重要

医療の安全性を守るためのルールがある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

医療の安全性を守るためのルールがある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 日本の再生医療を実施する施設は、再生医療を行う前に計画を作成し、審査を受け、厚生労働大臣に提供計画を提出する必要がある。これは、すべての種類の再生医療に必要になる。ただし、審査のプロセスや政府の関与は、再生医療の分類によって異なる。

 比較的リスクの低い第3種では、再生医療と法律の専門家で構成される「認定再生医療等委員会」が計画を審査する。第1種と第2種では、高い審査能力を持ち、公平な立場の「特定認定再生医療等委員会」が審査する。こうした委員会は、病院やクリニック、学術団体などが設置し、治療を行う施設とは独立して運営されることになる。特にリスクの高い第1種については、懸念などがあれば、国から計画の変更を求められることがある。

 ここで重要なのは、第2種と第3種の再生医療は、国が審査せずに、その代わり認定再生医療等委員会または特定認定再生医療等委員会が審査することである。要するに、再生医療を実施できるか否かは、国以外によって運営されている組織の審査により決められている。再生医療の安全性は、この委員会がどれだけ適切に計画を審査するかにかかっている。

 医療機関が細胞の培養や加工、保存を行う場合には、国への届出が求められる。ただし、医療機関が自らこれら培養や加工、保存ができないときには、外部の施設に委託することが可能で、この場合は委託先の施設について国から許可を得る必要がある。

 以上が、再生医療の提供や再生医療に使用する特定細胞加工物の培養や加工、保存を行うために必要な手続きの要点である。これらの手順に違反した場合は、罰則が適用されることになる。

 再生医療は美容医療にも用いられるが、繰り返しているように、日本では一般的な医薬品や医療機器などとは異なる法律でも規制されている。しかし、再生医療のルールの遵守状況については課題も浮かび上がっている。こうした課題について引き続き連載の中でお伝えしていく。

参考文献

再生医療について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/saisei_iryou/index.html

再生医療等の安全性の確保等に関する法律について
https://www.mhlw.go.jp/content/000679801.pdf

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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