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ロレアルが長寿研究の強化、予防の重視を宣言、老化への対策で提携を広げる、「フラーリッシング×ロンジェビティ」で変わる美容医療

カレンダー2025.6.22 フォルダー 海外

 国際的な化粧品メーカーであるロレアルが長寿の研究を重視している。

 同社が2025年6月10日に関連研究について発表した。

 老化の研究が国際的に活発になっていることを示す内容だ。

肌の老化を防ぐ

ロレアルが発表。(写真/Adobe Stock)

ロレアルが発表。(写真/Adobe Stock)

  • ロレアルのLongevityビジョン→
    ロレアルは「L’Oréal Longevity Integrative Science」を発表し、肌の健康を人の健康寿命と重ねるという新たなアプローチを提示。従来の「補正型」から「予防型」ケアへの転換を目指す。
  • Longevity AI Cloudの構築→
    細胞のエネルギー生産や炎症、老化などに関連する260以上のバイオマーカーを解析するAIプラットフォームを開発。
  • 他企業との連携→
    韓国NanoEntekと「Cell BioPrint」を共同開発し、皮膚内部の老化関連マーカー測定技術を活用。米国Tru Diagnosticとの連携によりエピジェネティクス解析を強化。

 美容医療の分野ではアンチエイジングの研究が注目されている。老化の目安になるエピジェネティック・クロックが実用化され、身体的な年齢が測定できるようになり、薬により寿命を延ばすという研究結果が報告されるようになった。老化を防ぐことが絵空事ではなく、現実的な目標に据えることが可能になってきた。

 そうした中で、老化を防ぐための技術を生かしたビジネスが動き始めている。国際的な化粧品会社が老化研究に力を入れるということは、影響力が大きいだけに、老化予防をより身近にする可能性があり、注目されている。ロンジェビティは健康に長寿を実現することだが、これがキーワードになっている。

 ロレアルは、パリの研究施設「Le Visionnaire」で初のロンジェビティイベントを開催し、「L’Oréal Longevity Integrative Science(ロレアル・ロンジェビティ・インテグレーティブ・サイエンス)」を発表した。これは肌の健康を人の健康寿命と重ね合わせるビジョンだという。見かけを若く保つというだけではなく、本当に老化を遅らせることを目指すものだ。従来の「補正型」ケアから「予防型」ケアへの転換だと表現している。

 同社によると、細胞のエネルギー生産、炎症、老化などに関連した260以上のバイオマーカーを解析する「Longevity AI Cloud(ロンジェビティAIクラウド)」を構築したという。

 同社は、老化研究に関連した他社との連携を進めている。例えば、韓国NanoEntekと共同開発した「Cell BioPrint(セル・バイオ・プリント)」により、皮膚内部の老化関連マーカーを測定する技術の活用を検討する。さらに米国トル・ダイアグノスティック(Tru Diagnostic)と連携し、エピジェネティクスの分析を強化。これは「生物学的年齢」の測定を行う技術を提供するものだ。

 このほかロレアルが出資するスイスTimelineがミトコンドリアの機能を再生する薬剤の臨床試験を行っている。同社は老化速度を遅らせる技術を競う国際的コンペXPRIZEでマイルストーン1を勝ち抜いた。さらに、PDRN配合の特許取得済みのクリーム、細胞の代謝を促す成分「NAD+ブースター」、「ゾンビ細胞」とも呼ばれる老化細胞を除去する成分「セネビビウム(Senevisium)」を組み合わせたクリームも開発したという。

 その上、大学と連携し、肌や内臓、腸内細菌、オートファジーなどの研究も強化している。

老化予防は身近になるか

  • 国際的な老化予防研究の加速→
    海外の化粧品メーカーは老化予防研究を積極的に推進しており、この動きは今後さらに拡大すると見られる。
  • 美容医療に求められる高度対応→
    化粧品では対応しきれない老化予防ニーズに対しては、美容医療機関によるより専門的な対応が求められる可能性がある。
  • 日本国内の課題→
    国際的な老化予防の流れを踏まえ、日本でもその重要性を広く認識し、取り入れていけるかが今後の課題となる。
XPRIZE Healthspan。(出展/XPRIZEウェブサイト)

XPRIZE Healthspan。(出展/XPRIZEウェブサイト)

 国際的に見て、化粧品のメーカーは、老化予防の研究強化にまい進し、今後はこの動きが強まってくると見られる。日本国内の化粧品メーカーも同様の分野に力を入れることは欠かせないだろう。

 一方で、美容医療分野でも、ロンジェビティへの関心は高まっているが、化粧品メーカーでは対応しきれないような、さらに高度な対応が、医療機関には求められる可能性がある。

 もっとも「老化は病」という考え方は国際的に認知されているわけではなく、老化予防のための医療は、日本国内で一般的になっているとはいえない。今後、国際的に、老化予防の動きが活発になる中で、日本国内でも老化予防を身近なものにしていけるのか、検討が必要だ。

 ヒフコNEWSでは、フラーリッシングとロンジェビティが今後注目されると紹介したが、これはより具体化する可能性がある。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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