国際的な化粧品メーカーであるロレアルが長寿の研究を重視している。
同社が2025年6月10日に関連研究について発表した。
老化の研究が国際的に活発になっていることを示す内容だ。
肌の老化を防ぐ

ロレアルが発表。(写真/Adobe Stock)
- ロレアルのLongevityビジョン→
ロレアルは「L’Oréal Longevity Integrative Science」を発表し、肌の健康を人の健康寿命と重ねるという新たなアプローチを提示。従来の「補正型」から「予防型」ケアへの転換を目指す。- Longevity AI Cloudの構築→
細胞のエネルギー生産や炎症、老化などに関連する260以上のバイオマーカーを解析するAIプラットフォームを開発。- 他企業との連携→
韓国NanoEntekと「Cell BioPrint」を共同開発し、皮膚内部の老化関連マーカー測定技術を活用。米国Tru Diagnosticとの連携によりエピジェネティクス解析を強化。
美容医療の分野ではアンチエイジングの研究が注目されている。老化の目安になるエピジェネティック・クロックが実用化され、身体的な年齢が測定できるようになり、薬により寿命を延ばすという研究結果が報告されるようになった。老化を防ぐことが絵空事ではなく、現実的な目標に据えることが可能になってきた。
そうした中で、老化を防ぐための技術を生かしたビジネスが動き始めている。国際的な化粧品会社が老化研究に力を入れるということは、影響力が大きいだけに、老化予防をより身近にする可能性があり、注目されている。ロンジェビティは健康に長寿を実現することだが、これがキーワードになっている。
ロレアルは、パリの研究施設「Le Visionnaire」で初のロンジェビティイベントを開催し、「L’Oréal Longevity Integrative Science(ロレアル・ロンジェビティ・インテグレーティブ・サイエンス)」を発表した。これは肌の健康を人の健康寿命と重ね合わせるビジョンだという。見かけを若く保つというだけではなく、本当に老化を遅らせることを目指すものだ。従来の「補正型」ケアから「予防型」ケアへの転換だと表現している。
同社によると、細胞のエネルギー生産、炎症、老化などに関連した260以上のバイオマーカーを解析する「Longevity AI Cloud(ロンジェビティAIクラウド)」を構築したという。
同社は、老化研究に関連した他社との連携を進めている。例えば、韓国NanoEntekと共同開発した「Cell BioPrint(セル・バイオ・プリント)」により、皮膚内部の老化関連マーカーを測定する技術の活用を検討する。さらに米国トル・ダイアグノスティック(Tru Diagnostic)と連携し、エピジェネティクスの分析を強化。これは「生物学的年齢」の測定を行う技術を提供するものだ。
このほかロレアルが出資するスイスTimelineがミトコンドリアの機能を再生する薬剤の臨床試験を行っている。同社は老化速度を遅らせる技術を競う国際的コンペXPRIZEでマイルストーン1を勝ち抜いた。さらに、PDRN配合の特許取得済みのクリーム、細胞の代謝を促す成分「NAD+ブースター」、「ゾンビ細胞」とも呼ばれる老化細胞を除去する成分「セネビビウム(Senevisium)」を組み合わせたクリームも開発したという。
その上、大学と連携し、肌や内臓、腸内細菌、オートファジーなどの研究も強化している。
老化予防は身近になるか
- 国際的な老化予防研究の加速→
海外の化粧品メーカーは老化予防研究を積極的に推進しており、この動きは今後さらに拡大すると見られる。- 美容医療に求められる高度対応→
化粧品では対応しきれない老化予防ニーズに対しては、美容医療機関によるより専門的な対応が求められる可能性がある。- 日本国内の課題→
国際的な老化予防の流れを踏まえ、日本でもその重要性を広く認識し、取り入れていけるかが今後の課題となる。

XPRIZE Healthspan。(出展/XPRIZEウェブサイト)
国際的に見て、化粧品のメーカーは、老化予防の研究強化にまい進し、今後はこの動きが強まってくると見られる。日本国内の化粧品メーカーも同様の分野に力を入れることは欠かせないだろう。
一方で、美容医療分野でも、ロンジェビティへの関心は高まっているが、化粧品メーカーでは対応しきれないような、さらに高度な対応が、医療機関には求められる可能性がある。
もっとも「老化は病」という考え方は国際的に認知されているわけではなく、老化予防のための医療は、日本国内で一般的になっているとはいえない。今後、国際的に、老化予防の動きが活発になる中で、日本国内でも老化予防を身近なものにしていけるのか、検討が必要だ。
ヒフコNEWSでは、フラーリッシングとロンジェビティが今後注目されると紹介したが、これはより具体化する可能性がある。
