アラガン・エステティックスが「美容医療の倫理」をテーマにしたインタビュー集を発表したことを紹介しているが、この中で、世界の美容医師がそれぞれの国の事情を話しており、美容医療で起こるトラブルをどのように避けるかという点から参考にできる部分もありそうだ。
そこで今回はオーストラリアの美容医師である、カーラ・マクドナルド氏の話に注目して、オーストラリアでの美容医療の規制の動きを紹介していく。
施術責任は「アフターケア」まで
- オーストラリアの美容医療規制→新たな規制を導入し、規制強化の動きが加速
- 規制強化の背景→非外科的治療を含めたオーストラリアでの美容医療トラブルの増加
- インフォームド・コンセントの重視→施術前コンサルテーション強化、被害防止を目的とした計画
- 施術後の管理強化→施術後のフォローアップ責任、代替手段の提供の指針確立
ヒフコNEWSで紹介しているが、オーストラリアでは、美容医療の新たな規制を導入する動きが加速している。背景にあるのは美容医療のトラブルが相次いで社会問題になっているためだ。この規制強化の動きは現場の医師も実感しているようだ。
カーラ・マクドナルド氏は、規制強化の背景と具体的な内容、それらが美容医療業界に与える影響について詳細を述べている。
特に、オーストラリア医療従事者規制庁(AHPRA)は、美容医療について、宣伝広告のガイドライン導入を含めて、フィラー治療のような非外科的治療のルールを強化しようとしているという。
カーラ氏によれば、「計画されている規制の見直しでは、施術前のコンサルテーション強化とインフォームド・コンセント(施術を受ける前に、その施術を受ける人が施術内容やリスクを理解し同意すること)により一層の重点が置かれる予定です」という。これは、施術に対する十分な理解がない状態での施術受診による被害を避けることを目的としている。
オーストラリアではルールを強化することで、このような規制強化により、希望と結果のミスマッチを防ごうとしている。
またオーストラリアのAHPRAでは、美容医療の施術では、施術後の管理についても引き続き責任を負うという方向でガイダンスが定められるという。施術後のフォローアップが必要であり、もし施術後に対応できない場合は、代替手段を用意しないといけない。
宣伝広告ガイドライン違反に罰金も
- タスマニア州の規制→認定医療施設でのみフィラー治療許可、患者の安全と緊急対応能力保証
- 宣伝広告の規制→AHPRAガイドラインに基づく厳格な規制、最高12万ドルの罰金、ブランド名言及の禁止
日本では非外科的治療のトラブルが大きな問題になっている。オーストラリアのタスマニア州は世界でも最も厳しい規制内容になっているといえるかもしれない。
同州ではクリニックの医師は、認定医療施設でのみフィラー治療が許可されるという。これは、施設が患者の安全を確保し、緊急時に対処できる能力を有していることを保証するため。
さらに宣伝広告の規制も厳しい。AHPRAのガイドラインに従っており、違反した場合、特定の地域では最高12万ドル(日本円で約1800万円)の罰金が科せられる。「医師は、ウェブサイトやソーシャルメディアなどの宣伝広告の中でブランド名を言うことができない」といった規制もある。この規制についてカーラ氏は、非外科的治療の正しい情報発信もできなくなる可能性があるところを懸念している。
このようなオーストラリアの事例に関連して、日本でもフィラー治療によるトラブルの事例がSNS上で注目を集めることはある。最近もフィラー治療と見られる施術後に涙袋が異常に大きくなったという書き込みと実際の写真が「でめきん」などと紹介されていた。意図しない結果だとすれば問題に発展しかねない。本人が満足できる施術を広げるにはオーストラリアの規制は意味があるだろう。
日本では美容医療の施術後に合併症が起きた場合に、その不適切な対応がトラブルを悪化させるケースがあるとされる。施術提供者による合併症への対応が望ましい状況だが、他の医師がやむを得ず修復などに当たっている実態もある。
でめきんもオーストラリアであれば当然施術提供者が対応することになりそうだが、日本ではトラブル対処が別の医師によることも珍しくはない。
オーストラリアでは次々と美容医療への規制が導入されており、国際的にも注目度が高い。アラガン・エステティックスのレポートでも特にページ数が割かれていた。ヒフコNEWSでも引き続き注目していく。
アラガン・エステティックスのレポートからはまた別の医師の談話にも注目する。