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米国で偽造ボツリヌス注射による健康被害相次ぐ、目の症状、便秘や失禁など、すべて医療機関以外で施術、米国学会や政府機関が警鐘

カレンダー2024.4.17 フォルダー 海外

 米国で偽造のボツリヌス注射が健康被害を引き起こしているとして、2024年4月11日、米国皮膚科学会(AAD)が警告を発した。政府の関連機関も相次いで注意喚起を行っている。

医療機関以外で施術を受けて被害

偽造ボツリヌスのパッケージ。(写真/米国食品医薬品局=FDA)

偽造ボツリヌスのパッケージ。(写真/米国食品医薬品局=FDA)

  • セマル・R・デサイ会長の警告→偽造ボツリヌス注射が原因で重大な健康問題(視力障害、失明、感染症、脳卒中)を引き起こす可能性があると指摘。
  • 被害の実態→被害者はすべて医療機関以外で施術を受けており、被害件数は19人、9つの州から報告。
  • 被害者の状況→被害者は全員女性で、25~59歳。美容目的でボツリヌス注射を受け、無免許者や個人から非医療施設で施術を受けた。

 米国皮膚科学会のセマル・R・デサイ会長は、「偽造されたボツリヌス注射が原因で、ボツリヌス中毒に似た症状を引き起こしている」と注意を促している。「偽造のボツリヌス注射の使用は、視力障害や失明、感染症、脳卒中などの重大な健康問題を引き起こす可能性がある」と同氏。

 学会ではボツリヌス療法の施術を受けるときには施術者の資格を厳しくチェックし、医療機関での施術を受けるように求める。同学会の会員である皮膚科医は、施術を提供する上では十分な知識と経験を持つと強調する。

 一方で、実態としては、被害者すべてが医療機関以外で施術を受けていることが明らかになっている。

 米国疾病対策センター(CDC)では、被害件数をまとめている。これまでに9つの州から19人の被害が報告されている。報告された州は、コロラド州、フロリダ州、イリノイ州、ケンタッキー州、ネブラスカ州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、テネシー州、ワシントン州。

 被害者のうち9人は入院し、4人はボツリヌス毒素が注射部位以外に広がっている可能性が考えられたため、ボツリヌス毒素を打ち消す治療を受けたという。ボツリヌス中毒の検査を受けた5人は陰性だった。

 被害者は全員女性で、年齢は25~59歳(中央値39歳)18人が美容目的でボツリヌス注射を受けており、すべての人が無免許または個人から、自宅や医療施設ではない場所で注射を受けていた。同センターは、ボツリヌス注射を受けるときには、医療機関で注射を受けるよう強調する。

ボツリヌス毒素に関連した症状と類似

偽造ボツリヌスの容器。(写真/米国食品医薬品局=FDA)

偽造ボツリヌスの容器。(写真/米国食品医薬品局=FDA)

  • FDAの公表情報→偽造ボツリヌス注射による健康トラブルが増加。症状として目のかすみ、物が二重に見える、飲み込みにくい、口の渇き、便秘、失禁、息切れ、脱力感、頭を持ち上げづらいなどを報告。
  • 国際的な問題→日本やベトナムでも、医療機関以外での美容施術により違法なルートで偽造医薬品が使用される事例が発覚。
  • 医療機関での施術の重要性強調→医療機関で有資格者から施術を受けることが重要。

 米国食品医薬品局(FDA)も、偽造のボツリヌス注射により入院を含むトラブルが起きているとして、詳細を公表している。それによると、これまでに報告されている症状は、目のかすみ、物が二重に見える、飲み込みにくい、口の渇き、便秘、失禁、息切れ、脱力感、頭を持ち上げづらいなどがあった。こうした症状は、ボツリヌス注射で使われているボツリヌス毒素が体内に広がったときに見られる症状と似ていると説明している。

 日本やベトナムでも、医療機関以外で美容施術が行われていた事例が発覚して、関係者が摘発されている。そうしたルートが違法な状態で広がっていた場合、偽造の医薬品が使われる可能性もある。米国で健康被害が発生している中、国内でも施術を受けるときには医療機関を受けることが重要となる。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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