米国でも日本と同様に美容医療トラブルが問題になっているが、美容医療の非外科的治療に関わる専門家向けの教育を強化していく動きが見られる。
米国とカナダの専門医団体が作る美容医療関連「The Aesthetic Society(エステティック・ソサイエティ)」という団体が2024年7月に発表した。
米国でも美容医療に関する問題
- 新制度→ABPSの専門医およびカナダ王立医師協会の医師により構成されるエステティック・ソサイエティが「AlliedPro(アライドプロ)」という教育制度を作成。
- AlliedProの対象者→看護師、ナースプラクティショナー、医療助手、エステティシャン、診療所スタッフ。
- 提供される教育→ボツリヌス療法やフィラー治療、レーザー治療などの非外科的治療についての教育プログラム。
- 認定やネットワーキング→認定取得を促し、会員同士のコミュニケーションを促進し、知識やスキルを高める。
- 情報提供→資料や論文などの情報も提供。
米国では、形成外科専門医をはじめとする美容医療関連資格を持たない医師が、美容医療を手掛け始めていることが問題になっている。2020年に、カリフォルニア州で小児科医が実施した脂肪吸引手術中に28歳の女性が死亡する事故が報告され、大きな問題になっている。この事件を受けて、米国形成外科学会(ASPS)やカリフォルニア州形成外科学会は、美容外科手術を行う医師に対して適切な資格とトレーニングを求める声明を発表している。特に、ASPSは、ABPS(American Board of Plastic Surgery)の認定を受けた専門医のみが美容外科手術を行うべきだと強調する。
米国以外ではオーストラリアが、美容医療に専門医資格を求めるという動きで進んでいる。ヒフコNEWSで伝えているが、オーストラリアでは有資格者のみが美容医療を手掛けられる方向に規制強化が進む。
このように医師の専門性について問題になっているが、医師以外の専門家の専門性を高めるニーズも高まっている。
今回、ABPSの専門医およびカナダ王立医師協会の医師により構成されるエステティック・ソサイエティが、非外科的治療の美容専門家を対象とした「AlliedPro(アライドプロ)」という教育などの制度を作った。同団体によると、その専門家とは、日本とは制度が違うので、役割が異なると考えられるが、看護師のほか、通常の看護師よりも幅広い医療行為を行えるナースプラクティショナー、医療助手、エステティシャン、診療所スタッフが含まれる。
この中では、美容医療の中でも特に増加しているボツリヌス療法やフィラー治療、レーザー治療などの非外科的治療についての教育プログラムを提供していく。認定取得を促すほか、会員同士がコミュニケーションを取れるようにして、知識やスキルを高められるようにする。資料や論文などの情報も提供する。
日本では美容医療の検討会、看護師の実態にも言及
このような米国での美容医療関連の教育制度は日本でも参考になる可能性がある。美容医療では、医師の指示の下で看護師が施術を行うケースが多い。看護師の知識やスキルを高めることは、美容医療の効果や安全性を高める上では欠かせなくなっている。
折しも、厚生労働省が6月から美容医療関連の初の検討会「美容医療の適切な実施に関する検討会」を開始している。美容医療に関連したトラブルが増加する中で、課題を洗い出し、法的な規制を含めた対策が練られる予定だ。第1回は検討会のスコープと検討の進め方を確認するのが目的となった。年内にも方向性がまとめられる見通しだ。この中では、医師の指示の下で行われる看護師の施術についても施設によって実態にバラツキがあるという課題が指摘されていた。
美容医療には課題が多く、医師や医療関係者の教育の仕組みを作ることは日本でも重要視されている。北米の動きは、そのまま日本に適用できないかもしれないが、今後参考になる可能性もある。