ドイツに拠点を置くメルツ・アエステティックスは、北米に新たに研究開発拠点を開設した。同社の北米部門が2024年9月19日に発表した。美容医療で使用される機器のさらなる高性能化により、安全性や効果の向上が期待される。
エネルギーベースデバイスを中心とした研究開発
メルツ・エステティックスが開設したのはリサーチ・アンド・ディベロップメント・イノベーション・センター(RDIC)。
この施設は、エネルギーベースデバイス(EBD)の研究開発を専門とする拠点であり、代表的製品ウルセラ(Ultherapy)を中心とした機器の開発が進められる。ウルセラは、超音波を使ってコラーゲンの生成を促進し、肌を引き締める治療法である。いわゆるHIFU(高強度焦点式超音波治療)と同様のメカニズムを持つ機器である。同社によれば、米国食品医薬品局(FDA)により、首、あご、眉のリフトアップやデコルテ部分のシワ改善に特化して認可されている。
新施設では、生物学的な研究を行うラボや、電気・超音波などの機械的な研究を行うラボなど、複数の専門的な施設が設置される。ここで、エネルギーを発生させる技術と皮膚組織の相互作用に関する研究が行われる予定だ。
この施設は、地元の科学者や業界専門家との連携を深め、美容業界の研究を底上げする場として期待されている。
なお、メルツ・エステティックスは、ボツリヌス療法やフィラー製剤、バイオスティミュレーターなどを含む幅広い製品ラインナップを提供している。これらの研究開発は別の体制で進められているようだ。
機器の安全性や効果の向上に期待
エネルギーベースデバイスをめぐっては、日本国内でトラブルが相次いでいる。特にHIFU(高密度焦点式超音波、ハイフ)による事故が深刻化しており、国の調査によりその実態が明らかになってきた。
24年4月10日、東海大学形成外科の河野太郎教授が第67回日本形成外科学会総会・学術集会で、HIFUによる事故の国調査の中間報告を発表した。調査では、ヤケドや皮膚障害が全体の約66%を占める一方、神経障害が約31%と高い割合で発生していることが判明した。美容医療のトラブル増加を受けて、厚生労働省は2024年6月に「美容医療の適切な実施に関する検討会」を設置した。
一方で、AI(人工知能)を活用した新しい機器の開発も活発になっている。世界的に美容医療に関連した機器の開発が進んでおり、新たな研究開発により、美容医療で使用される機器の安全性や有効性の向上が期待される。