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フィラー注入の合併症リスクを減らすために知っておくべきこと、信頼できる施術者選びは第一に考える、米国形成外科学会のウェブで専門医解説

カレンダー2024.10.24 フォルダー 海外
フィラー注入で発生し得る合併症のリスクを避けるには。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

フィラー注入で発生し得る合併症のリスクを避けるには。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 フィラー注入による合併症を防ぐために気を付けておくべきことは何だろうか。米国形成外科学会(ASPS)が2024年10月8日に公開したコラムで、合併症リスクを減らすための重要なポイントが示された。

 フィラー注入を検討する際に、どのような点に注意すべきかを見ていく。

施術者選びとSNSの見極め

施術者選びは重要。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

施術者選びは重要。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 フィラー注入はシワ改善や顔のボリューム改善を目的として幅広い年齢層に人気の施術。一方で、リスクを伴うことがよく知られている。

 米国形成外科学会のウェブサイトでコラムを寄せているのは、マサチューセッツ州ブルックリンの医師、ショーン・T・ドハーティ氏。ドハーティ氏は、第一に、施術者の選択が重要と強調する。

 「高い技術を持つ施術者こそが、合併症を防ぐ最善の方法」とドハーティ氏は述べる。

 特に、施術者が顔の解剖学的構造を熟知し、最新のフィラー製品の微妙な長所と短所を理解していることが重要だ。リスクを避けるための重要な要素であると強調している。施術者の誤った選択が美的バランスに影響を与える。

 SNSについてもコメントを寄せている。ドハーティ氏は、SNSに投稿される「ビフォー・アフター」の画像は加工されていることも多く、他の施術の効果が影響していることが隠されている場合もあると述べる。

 ドハーティ氏は「SNSの情報に惑わされず、専門家との直接相談を通じて、自分自身の解剖学的特徴に基づいた現実的な結果を理解することが重要」と強調。美容医療の選択は、単なる見た目の変化以上に、顔全体のバランスや自然な美しさを重視すべきだという。

特に注意が必要な皮膚壊死と失明の合併症

合併症を理解する。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

合併症を理解する。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 フィラー注入には様々な合併症のリスクがある。ドハーティ氏の解説に沿って合併症を説明する。

 軽度の合併症として腫れや内出血が挙げられ、これらは通常の術後反応であり数週間以内に自然に消えることが多い。適切なケアとしては、冷却やビタミンKなどの塗り薬が効果的。

 中等度の合併症には、アレルギー反応や結節(しこり)、そしてティンダル現象がある。これらの問題は、不適切な注入技術やフィラーの選択ミスが原因になり、熟練した施術者選びがリスク回避の鍵になる。

※ティンダル現象は、フィラーが浅い部位に注入された際に起こる現象。フィラーに光が当たって青白く見える。

 最も深刻な重度の合併症は、皮膚壊死や失明。これらはまれではあるものの、発生した場合には迅速な対応が必須。皮膚壊死はフィラーが血管内に誤って注入された際に起こり早期対応が重要。皮膚が白っぽく変色したり、長時間続く痛みが起こったりすると注意が必要。

 失明はさらに深刻な事態で、視力が低下したり、視野が狭くなったりする。

 いずれも即座の対処が必要で、ヒアルロン酸を溶かすためのヒアルロニダーゼによる即時対応や病院での対処を行う。

 失明の合併症を引き起こす可能性のあるフィラー注入部位について、目の下の涙袋、鼻周り、ほうれい線、眉間のシワという4カ所に注意する必要があると指摘している。

 ドハーティ氏の説明は次のように整理できる。

分類 合併症 原因 対処法
軽症 腫れ・内出血 フィラー注入後の自然な反応 頭を高くして休む。冷却するほか、ビタミンK、アルニカ、アロエベラなどの塗り薬を使う。
一時的な痛みや違和感 注入時の針やカニューレの刺激 適切な施術者の選択と細心のケア。痛みが続く場合は専門の医師に相談。
中等症 結節(しこり) 不適切な注入技術や過剰注入 正確な技術で適切な量を注入する。フィラーの種類を正確に選択。
ティンダル現象 浅い層にフィラーが過剰に注入され、皮膚が青く変色 深い層に注入する。ヒアルロニダーゼで修正が可能。
アレルギー反応 フィラー成分に対するアレルギー 事前のアレルギーテスト。アレルギーが疑われる場合は専門家と相談。
重症 皮膚壊死 フィラーが血管内に誤って注入された場合。静脈の圧迫。血管壁への損傷 迅速なヒアルロニダーゼの投与。経験豊富な施術者を選ぶ。症状が現れた場合は速やかに施術者へ連絡。
失明 フィラーが動脈または静脈に逆行性に流れ込み閉塞を引き起こす 迅速なヒアルロニダーゼの投与と病院での対応。適切な部位に注入することでリスクを回避。

 米国での事例を基にした解説ではあるものの、日本国内でもフィラー注入の参考になる部分はあるだろう。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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