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口唇口蓋裂の発症リスクを高める わずか「1文字」のDNAの違いを特定、アトピーとの意外な接点も、東京科学大と英国オックスフォード大の共同研究

カレンダー2025.6.7 フォルダー最新研究
遺伝的な変化が先天異常の原因になる場合がある。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

遺伝的な変化が先天異常の原因になる場合がある。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 口唇口蓋裂は、生まれつき見られる先天異常の一種。これは外見や機能の問題となり、形成外科および美容外科的な治療が求められる。

 2025年5月、東京科学大学と英国オックスフォード大学の研究グループが、この病気に関わる原因の一端を発表した。人のDNAは約30億文字で書かれているが、塩基の1つの違いが原因の一つである可能性を見出した。

生まれつき上くちびるに裂け目
遺伝的な変化が口唇口蓋裂の原因の一つに。(出典/東京科学大学)

遺伝的な変化が口唇口蓋裂の原因の一つに。(出典/東京科学大学)

 口唇口蓋裂は、上くちびる(口唇)や上あごの天井(口蓋)の一部がくっつき切らずに裂け目が残る先天異常の一種。

 赤ちゃんが母親のおなかにいる時、顔のパーツは左右から中央に寄り、中央で合体するように作られている。この合体が、途中で止まった場合に、すき間が残り、口唇口蓋裂となる。

 口唇口蓋裂は、大きく2つのタイプが存在している。一つは、心臓の奇形などの複数の先天異常が同時に存在するタイプ、もう一つは、他の症状がないタイプ。このうち他の症状を伴わないタイプが多くを占めている。この他の症状がないタイプは、「非症候性」と呼ばれるが、メカニズムの全容は明らかになっていない。

 今回、東京科学大学とオックスフォード大学の共同研究チームは、人の体の設計図となるDNAの約30億文字の中で、タンパク質をコードしている領域と、残りの非コード領域のうち、非コード領域に注目して口唇口蓋裂の原因と探った。非コード領域は、タンパク質の設計図そのものではなく、いつ、どこで設計図を使うかを指示する「指令書」の部分となる。ここが非症候性口唇口蓋裂と関連することが分かってきたためだ。

※DNAはアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種類の塩基がつながった約30億塩基の鎖で構成されている。塩基配列は大部分が共通しているものの、一部に個人差があり、1カ所だけの差が大きな体質や病気のかかりやすさ、先天異常などの差になることがある。例えば、お酒を飲めるかどうかは、ある1カ所の塩基の違いで差が生まれる。今回の研究は、この遺伝子の塩基の差を調べたもの。この一つの塩基の差のことを「一塩基多型」と呼び、SNPと略される。今回の研究もSNPについて調べた。

わずか1カ所の変化が影響

DNAの変化を分析。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

DNAの変化を分析。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 こうした研究の結果から、研究グループは、非コード領域の中の「ケラチン18」という遺伝子の近くにある「rs3741442」という1カ所の塩基が非症候性口唇口蓋裂と関連することを発見した。

 非症候性口唇口蓋裂のリスクのないグループでは、「C(シトシン)」という塩基であるのに対して、リスクのあるグループでは「T(チミン)」という塩基に変化していることを突き止めた。このC→Tの変化によって、皮膚や口の軟膜の細胞の分化に変化が生じ、口唇口蓋裂の発症につながる可能性が示された。

 なお、この変化は皮膚のバリアにも影響し、アトピー性皮膚炎とも関連する可能性が確認されていた。

 現在、口唇口蓋裂の場合、形成外科や美容外科的な手術のほか、歯科治療により修正することになる。口唇口蓋裂の原因、メカニズムが理解されることは、今後、予防や治療につながる可能性があり、これらを支える追い風になり得る。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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