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GLP-1薬の使用者で脱毛リスク37~68%上昇 1万人超の診療記録をほかの糖尿病薬と比較 急激な体重減少などが影響した可能性

カレンダー2026.7.24 フォルダー最新研究
GLP-1薬の効果や安全性。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

GLP-1薬の効果や安全性。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 糖尿病や肥満の治療に使われるGLP-1受容体作動薬(以下、GLP-1薬)について、2型糖尿病の成人では、ほかの糖尿病薬の使用者よりも脱毛が新たに診断されるリスクが高いことが明らかになった。

 米ペンシルベニア大学などの研究グループが2026年7月に発表した。

約1万2000人のGLP-1薬使用者を比較

日本でもGLP-1薬を巡る問題が指摘され続けている。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

日本でもGLP-1薬を巡る問題が指摘され続けている。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 研究対象→GLP-1薬を新たに使い始めた2型糖尿病の成人約1万2000人を、SGLT-2阻害薬やDPP-4阻害薬の使用者と比較した。
  • 追跡方法→治療開始後に脱毛が新たに診断されたかを最長5年間追跡し、年齢や性別、肥満度、持病などの影響を調整した。
  • 研究の特徴→大規模な診療記録を使い、異なる比較薬や解析方法でも同じ傾向が見られるかを検証した。

 GLP-1薬は、体重を減らす目的で利用が広がる一方、髪が抜けやすくなる可能性も指摘されてきた。特にセマグルチド(商品名オゼンピック、ウゴービなど)や、GLP-1とGIPの両方に作用するチルゼパチド(同マンジャロ、ゼップバウンド)では、市販後の副作用報告や小規模な研究から、脱毛との関連が疑われていた。

 これまでの報告では、急激な体重減少や体調変化をきっかけに起こる休止期脱毛のほか、男性型脱毛症(AGA)や女性型脱毛症との関係も示されている。

 ヒフコNEWSで伝えた研究では、GLP-1薬を減量目的で使った254人のうち、76.0%が脱毛を訴えていた。

 ただし、これまでの報告には、対象者が少ない、本人へのアンケートや副作用報告に基づく、適切な比較対象がないといった限界があった。このため、GLP-1薬の使用者で本当に脱毛が増えているのかは、はっきりしていなかった。

 そこで今回の研究では、米国の診療記録を使い、GLP-1薬を新たに使い始めた2型糖尿病の成人約1万2000人を、別の糖尿病薬の使用者と比較した。

 SGLT-2阻害薬との比較分析では、GLP-1薬の1万2004人とSGLT-2阻害薬の1万5221人を比較。DPP-4阻害薬との比較分析では、GLP-1薬の1万1964人とDPP-4阻害薬の1万1233人を比較した。

 なお、SGLT-2阻害薬には、カナグリフロジン(商品名カナグル)、ダパグリフロジン(同フォシーガ)、エンパグリフロジン(同ジャディアンス)などが含まれた。DPP-4阻害薬には、シタグリプチン(同ジャヌビア)、サキサグリプチン(同オングリザ)、リナグリプチン(同トラゼンタ)などが含まれた。治療開始後に脱毛が新たに診断されたかを最長5年間追跡した。

 年齢、性別、肥満度、持病、血糖値、腎機能など、脱毛リスクに影響し得る条件は統計的に調整した。さらに解析方法を変えた複数の検証でも、結果が変わらないかを確かめた。

脱毛リスクは37~68%上昇

脱毛症は男女ともに問題に。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

脱毛症は男女ともに問題に。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 脱毛リスク→GLP-1薬の使用者では、脱毛リスクがSGLT-2阻害薬より37%、DPP-4阻害薬より68%高かった。
  • 脱毛の特徴→休止期脱毛などを含む非瘢痕性脱毛が増え、治療開始後1年以内に多く確認された。
  • 今後の課題→薬の直接作用か、急な減量や栄養状態の変化によるものかは分かっておらず、さらに検証が必要。

 分析の結果、GLP-1薬の使用者では、ほかの糖尿病薬を使った人よりも脱毛が多く確認された。

 SGLT-2阻害薬との比較では、GLP-1薬の脱毛リスクは37%高かった。DPP-4阻害薬との比較では68%高かった。脱毛は治療開始後1年以内に多く確認され、発生のピークは治療開始から12カ月を迎える直前に見られた。

 脱毛の種類別では、「非瘢痕性脱毛」が増えていた。非瘢痕性脱毛は、毛を作る毛包が破壊されないタイプで、髪が再び生える可能性が残されている。急激な体重減少や栄養状態の変化をきっかけに起こる「休止期脱毛」などが含まれる。

 非瘢痕性脱毛は、GLP-1薬では、SGLT-2阻害薬と比べて53%、DPP-4阻害薬と比べて72%、リスクが高かった。

 背景には、急な減量や食事量の低下、鉄や亜鉛などの不足が影響した可能性がある。ただし、今回の研究では体重の減り方や栄養状態を詳しく調べておらず、脱毛が薬の直接的な作用によるものか、減量や栄養状態の変化によるものかは明らかになっていない。

 脱毛の発生数そのものは多くなかった。1000人を1年間追跡した場合に換算すると、SGLT-2阻害薬との比較では、GLP-1薬で約7件、SGLT-2阻害薬で約5件に相当した。DPP-4阻害薬との比較では、GLP-1薬で約7件、DPP-4阻害薬で約4件に相当した。発生頻度は低いものの、二つの比較でいずれもGLP-1薬の使用者に脱毛が多かった。

 これまでの副作用報告や小規模研究でも、GLP-1薬と脱毛の関連は指摘されてきた。今回、より大規模な比較研究でも同じ傾向が示され、関連を裏付ける材料が増えた。

 GLP-1薬による治療を始める際には、脱毛の可能性も含めて利点とリスクを検討する必要がありそうだ。

参考文献

Tang H, Zhang B, Lu Y, Zhang D, Liu R, Lu Y, Cotsarelis G, Asch DA, Chen Y. Risk of hair loss associated with glucagon-like peptide-1 receptor agonists in adults with type 2 diabetes: target trial emulation. BMJ. 2026 Jul 22;394:e100077. doi: 10.1136/bmj-2026-100077. PMID: 42486607.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42486607/

GLP-1薬と髪の抜け毛、その関係が少しずつ見えてきた 急な減量や薬剤ごとの差に加え、発毛改善の報告も 減量後に増える抜け毛やAGA、女性型脱毛症との関係に注目
https://biyouhifuko.com/news/research/18493/

GLP-1薬で脱毛は起きるのか 使用者の76%が抜け毛を訴え、一部薬剤や女性で目立つ傾向 因果関係は今後の課題
https://biyouhifuko.com/news/research/17630/

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ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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