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米国が警告、美容整形後に真菌性髄膜炎疑い、メキシコでの医療観光に懸念広がる

カレンダー2023.5.21 フォルダー 海外

ポイント

  • メキシコで美容整形手術を受けた人において感染症の集団発生があった
  • 原因の病原体は特定されていないが、検査から「真菌性髄膜炎」が疑われている
  • 硬膜外麻酔を受けた後に発熱や頭痛などが起きた場合に注意が必要と助言されている
アラート。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

アラート。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 2023年5月17日、米国疾病対策センター(CDC)は、テキサス州と接するメキシコ・マタモロスで美容整形手術を受けた米国人の間で真菌性髄膜炎の発生が疑われるとして、警告を発した。メディカルツーリズムに伴うリスクを知っておく上で、米国での情報ではあるものの参考になりそうだ。

※髄膜炎は、神経を保護する膜が感染症などに侵され、腫れや痛みなどを引き起こす病気。原因の一つとして、いわゆるカビの仲間「真菌」がある。真菌によって起こった髄膜炎を真菌性髄膜炎と呼ぶ。

複数の女性が美容整形手術後に発症

発熱などに注意。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

発熱などに注意。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 CDCによると、5月8日、メキシコのマタモロスで美容整形を受けたテキサス州の女性2人が髄膜炎の症状で入院したことが判明した。症状は頭痛や発熱、光に対する過敏症、首の凝りだった。さらに、別の医療機関で美容整形手術を受けた2人の女性も同様な症状を示し、テキサス州の医療機関に入院。CDCとテキサス州政府が調査に着手していた。

 これまでに病原体の特定にまでは至っていないものの、検査の結果、1人の脳脊髄液において真菌の目印になる検査値の上昇が確認された。

※脳脊髄液は、脳や神経を保護するように周囲を満たしている体液のこと。

 これまでのところ美容整形手術で受ける硬膜外麻酔で感染が起きていると考えられている。感染症が起きた場合には適切な治療を受ける必要がある。

※硬膜外麻酔は、脊髄を保護する硬膜という膜の外に対して麻酔薬を注射する麻酔。脊髄に近い部位に注射するため感染を起こす可能性がある。

発熱や頭痛、首の凝りなどに注意

再び活発になりつつあるメディカルツーリズム。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

再び活発になりつつあるメディカルツーリズム。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 CDCでは23年1月以降に、メキシコのマタモロスで硬膜外麻酔を伴う手術などを受けて、発熱、頭痛、首の凝り、吐き気、嘔吐、光への過敏反応、精神状態の変化がある場合には注意するよう説明している。

 ヒフコNEWSでも、米国からのメディカルツーリズムで起こる合併症や後遺症について取り上げているが、その中で目立っていたのは感染症だった。今回の警告からは2023年でもリスクが存在していることを理解できる。

 CDCの報告は米国のものではあるが、日本からもメディカルツーリズムで美容整形手術を受けるケースが増えているとされているので、感染症などの合併症には気をつける必要はある。今回の警告に示された症状は参考にしてよいかもしれない。

参考文献

Outbreak of Suspected Fungal Meningitis in U.S. Patients who Underwent Surgical Procedures under Epidural Anesthesia in Matamoros, Mexico
https://emergency.cdc.gov/han/2023/han00491.asp

美容整形を海外で受ける前に知っておきたいこと、米国の研究から学ぶ潜在的なリスク
https://biyouhifuko.com/news/world/1261/

韓国のメディカルツーリズムが急回復、2022年にはコロナ前の50%に
https://biyouhifuko.com/news/world/1391/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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