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スレッドリフトの限界とは?フェイスリフトを選ぶ見極め 糸では「余り」は取れない ドクタースパ・クリニック院長・鈴木芳郎氏に聞く Vol.3

カレンダー2026.1.15 フォルダーインタビュー
鈴木芳郎(すずき・よしろう)氏。ドクタースパ・クリニック院長。(写真/編集部)

鈴木芳郎(すずき・よしろう)氏。ドクタースパ・クリニック院長。(写真/編集部)

鈴木芳郎(すずき・よしろう)氏
ドクタースパ・クリニック院長

  • スレッドリフトの限界→ 糸は皮膚を「引き上げてずらす」治療であり、年齢が高くなり余剰皮膚が多い場合、その余りを取り除くことはできない。
  • 年齢と治療選択→ 若年層ではスレッドリフトが選ばれやすい一方、年齢が上がるほどフェイスリフトが必要になる傾向がある。
  • フェイスリフトの進化→ 従来のフェイスリフトは外側中心で、顔の内側(ほうれい線など)に効果が届きにくい課題があったが、現在はSMASや深部構造を含め、どの層をどの範囲ではがすかを精密に見極めることで、内側まで引き上げる術式が発展している。

──スレッドリフトがここまで広がる中で、そこには限界もある。

鈴木氏: ありますね。糸だけでは、たるみが完全に取り切れない人はいます。年齢が高くなればなるほど、たるみの程度が大きくなるので、糸で取り切れない場合は「切った方がいい」という話になることもあります。

──その分かれ目は、どこで判断?

鈴木氏: スレッドリフトは基本的に「引き上げて、ずらす」治療です。皮膚を上げると余りが出ます。そういう余りは糸だと取れません。その余りを取らないと本当に綺麗な形にならないという状況なら、取るべきだと考えます。そうなると切れる治療、つまりフェイスリフトの領域になってきます。

──結果として、年齢層の傾向も出る。

鈴木氏: 年齢層としては、フェイスリフトの人の方が高くて、糸は若い人が多い、という傾向はあります。

──フェイスリフトでも難しいことはある。

鈴木氏: フェイスリフトは外側から引き上げる治療なので、内側に行けばいくほど「引っ張る力」が伝わりにくい、という限界があります。耳の周りはきれいにできたけれど、ほうれい線が残る、というような現象は起きやすい。

 だからその欠点を補うため、いろいろな方法が出てきました。ポイントは、単に切る場所を変えるというより、顔の中心に近い部位で、はがす層や範囲を変えることです。

──フェイスリフトのアプローチを変えていく。

鈴木氏: 顔の組織は表面から、皮膚(表皮、真皮)と皮下組織(脂肪層、血管、神経など)があり、その下にSMASがあります。さらに下に脂肪層や支持靱帯、骨膜、骨があります。

 これらの層の構造は顔の部位により変化します。例えば、中顔面では、筋肉が層をまたいでいますから単純に層が平行に積み重なっているわけではありません。

 フェイスリフトでは、これらの層のうちどの層を、どの範囲まではがしてゆるめ、ずらすかを見極めます。このように工夫することで、最近では内側まで持ち上げられる方法も取れるようになってきています。

 当然ながら、皮下組織などには重要な神経や血管も通っていますので、傷つけないよう配慮は欠かせません。

  • やり過ぎへの慎重さ→ フェイスリフトは支持組織を含めて顔の構造を動かす治療であり、必要以上にはがすと構造を壊し、表情の違和感や合併症のリスクにつながる。
  • 最小限の操作とダウンタイム→ 動かすべき部分だけを的確にはがし、残すべき構造は温存することで、腫れや内出血などのダウンタイムを抑えられる。
  • 深層アプローチと技術力→ ディーププレーンなど深い層を操作する手法が注目されているが、深く広く行うこと自体が目的ではない。部位ごとの解剖理解に基づき、必要な範囲を個別に設計することが重要で、神経損傷リスクを避けるための経験と「見分ける目」が医師に強く求められる。

──「やり過ぎ」には慎重になる必要もある。

鈴木氏: フェイスリフトは皮膚だけではなく支持組織を含めて顔の組織の構造を動かす治療です。ですから、必要以上にはがしてゆるめると、その構造を壊してしまい、顔の表情や印象に違和感を残す可能性があります。手術も大がかりになりがちで、合併症のリスクにもつながります。

 私自身は、あまりやり過ぎるとその人のアイデンティティがなくなってしまうということも考えています。

 ですから、どこまで引き上げるかを一律で考えることはしません。その人の骨格、脂肪、靱帯、皮膚などの状態、その方の希望も踏まえ、構造を壊しすぎないようアイデンティティを保ちながら自然に若返った状態を作るのがベストだと考えています。

 その上で、私はフェイスリフトの中で、昔の顔に若返らせるだけでなく、できれば昔の顔より綺麗になった、美人になった、今までの人生の中でこんな綺麗な輪郭になったことはなかったと感じてもらえるようにも努力しています。

──動かしたいところだけ動かすことで、ダウンタイムも抑えられる。

鈴木氏: 無駄に作り替えずに動かしたいところだけをしっかりはがして動かす。残したいところは残す。そうすると、腫れや内出血などのダウンタイムも短くできます。

 多くの方は長いダウンタイムを許容できませんから、なるべく負担を減らしたい、という発想になります。

──最近の流れとして、深い層で広範囲に操作するフェイスリフトが注目されている。

鈴木氏: SMASの下の層をはがして、支持靱帯をゆるめるディーププレーン、エクステンディッド・ディーププレーンの考え方が出てきています。深い層の位置関係を変えていくのです。

 SNSで海外のドクターが結果を出し、それをインスタグラムに出し、「この方法であれば、こんなにうまくなる」と世界中で話題になりました。

 しかし、顔面の部位ごとの解剖、本人のたるみの状態などにより最適な方法は変わってきます。ですから、深く、広くはがすこと自体を目的とするのではなく、必要な範囲を個別に設計することが大切です。

──深く攻めるほど、神経を傷つけるなどのリスクが上がる。

鈴木氏: 深く入ってはがしていけば、重要な神経を傷つけるリスクは上がります。例えば、皮膚の下だけをはがすだけであれば、重要な神経に当たることは基本的に少ない。しかし、深いところの組織を狙うと神経に当たることがあります。医師がリスクを避けながらはがしていける技術を持つかが問われます。

──結局は、解剖の理解と「見分ける目」が必要になる。

鈴木氏: 神経がどこにあるか、これが神経なのか血管なのかを判別できるだけの目を持っているか、知識や経験があるかは大きいです。

 最近は電気的な神経刺激装置を使いながら、途中で刺激して筋肉が動けば神経と確認して進める技術もあります。しかし、結局は解剖の理解と経験こそ重要だと考えています。私自身は形成外科時代に耳下腺の手術を多く経験し、重要な神経を扱ってきましたから、頭の中でそれらの位置関係を深く理解できます。技術や経験に基づいて安全性を意識した手術をすることが重要です。(続く)

プロフィール

鈴木芳郎(すずき・よしろう)氏。ドクタースパ・クリニック院長。(写真/編集部)

鈴木芳郎(すずき・よしろう)氏。ドクタースパ・クリニック院長。(写真/編集部)

鈴木芳郎(すずき・よしろう)氏
ドクタースパ・クリニック院長。
1957年生まれ。1983年東京医科大学医学部卒業。東京医科大学形成外科教室入局後、国立東京第二病院で研修・勤務。マイクロサージェリー(切断指再接着術など)を日常的に行うなど形成再建外科の技術を習得し、顔面外傷治療の経験を通じて顔面解剖・構造への理解を深めた。1990年日本形成外科学会認定医取得。1992年東京医科大学形成外科助手、1993年医学博士取得。1995年同講師。1996年海老名総合病院形成外科部長。米国など海外の著名医師に師事し美容外科の研鑽を積む。2001年サフォクリニック副院長。日本のスレッドリフト黎明期から糸による引き上げ治療に取り組み、中顔面若返り手術であるケーブルスーチャー法を国内で早期に導入した医師として知られる。2006年ドクタースパ・ クリニック新宿美容外科・歯科院長、2010年ドクタースパ・クリニック開業。2014年東京医科大学形成外科学分野 客員講師。日本糸リフト協会理事長、日本美容医療協会理事長、日本美容医療総合学会理事。千葉大学形成外科客員講師、滋賀医科大学形成外科客員講師。日本美容外科学会(JSAPS)専門医、日本形成外科学会(JSPRS)専門医。国際美容外科学会(ISAPS)正会員、日本抗加齢医科学会(JAAM)専門医。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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