
池田欣生(いけだ・よしお)氏。東京皮膚科・形成外科総院長。フランス・パリで取材。(写真/編集部)
池田欣生(いけだ・よしお)氏
東京皮膚科・形成外科総院長
- 再生医療への関心→ 池田氏はアンチエイジングへの関心から、自分の細胞を使う再生医療に注目した。
- 幹細胞への期待→ 当時は幹細胞への期待が大きく、劇的な改善例も語られていた。
- 未病や老化への可能性→ 病気になってから治すだけでなく、早く働きかける医療として可能性を感じていた。
──アンチエイジングへの関心が、幹細胞や再生医療へつながっていった。
池田氏: そうです。プラセンタのような治療にも関心はありましたが、そこから先に進もうとすると、人のものを使うより、自分のものを使った方がよいのではないか、という発想が自然に出てきました。
その流れの中で、脂肪由来の細胞や再生医療の領域に関心が向いていきました。
当時の研究会や学会でも、そうした話題が広がり始めていましたし、自分としても、見た目だけではなく「未病」や「老化」にどう働きかけるかという意味で面白い領域だと感じていました。
──幹細胞に大きな期待が集まっていた。
池田氏: ありました。実際に劇的に見える症例もありました。歩けなかった人が少し歩けるようになったり、血管が増えたように見えたり、そういう話が強いインパクトを持って広がっていった時期です。
そうなると、治療への期待も大きくなります。数百万円払ってでも受けたいという人が出てきた。車椅子で来た人が歩いて帰るようなイメージが語られると、それはやはり強いですよね。私自身も、こういう可能性があるのかと思わされる場面はありました。
──関心は未病や老化に向いていった。
池田氏: そうですね。病気になってからではなく、その前に何かできないかという発想です。
例えば、美容目的で、細胞を用いた髪の毛の治療なども見ていました。そうした治療に関わる中で、細胞を培養すると、あまりよくないのではないかという感覚も生まれてきました。今でこそ老化細胞の話がありますが、当時はまだそうした知識ははっきりとしていません。
- 培養しない方法へ→ 細胞を培養すると老化するのではないかと考え、培養せずに使う方法に関心が向いた。
- 細胞が出す物質に注目→ 細胞そのものより、細胞が分泌する物質を使う治療に可能性を感じた。
- 老化細胞への関心→ 若返り効果が一時的に見えても戻るため、老化細胞への関心が強まった。
現場でやっていると、分裂を重ねると細胞が止まる、培養速度が落ちる、ということは見えていたので、やはり細胞は老化していくのではないかと感じていました。
そうした中で、無理に培養するよりも、採取した組織から幹細胞を抽出して使う方がいいのではないかと考えるようになりました。実際、そのほうが大がかりな設備も要らず、安くて、効果も確認しやすいという判断もありました。
培養の施設を整えるとしたら莫大なコストがかかります。開業医が簡単に続けられるものではありません。
──細胞そのものだけではなく、細胞が出す物質も注目された。
池田氏: そうです。培養した細胞を移植するとアレルギー反応の問題も出るけれど、細胞が出している物質を注射するのであれば、そこは違うのではないかと考えられました。細胞移植よりも、細胞由来の物質を使う方向のほうがよいのではないかと思いました。特に高齢の患者さんは、注射すると若返ったとすごく喜ばれました。評判は良かったのですが、そこで次の壁に当たることになります。
──若返っても、元に戻ってしまう。
池田氏: そうなんです。時間がたつと戻る。打つとまた良くなるけれど、また戻る。効くのに、なぜ維持できないのか。私は老化細胞のほうへ関心を向けるようになっていきました。(続く)
プロフィール

池田欣生(いけだ・よしお)氏。東京皮膚科・形成外科総院長。フランス・パリで取材。(写真/編集部)
池田欣生(いけだ・よしお)氏
東京皮膚科・形成外科総院長。大阪医科大学(現大阪医科薬科大学)卒業後、田嶋定男元教授、谷野隆三郎元教授の下で形成外科の診療に従事。2000年に銀座・いけだクリニック(現・東京皮膚科・形成外科)を開設しダウンタイムの少ない手術を追求し、エンジェニードル、美容用チタンピン鑷子(せっし)、Gコグスレッドなどの開発に取り組む。2010年に日本アンチエイジング外科学会、2017年には医療アートメイク学会を設立し、会長を務める。2023年、第111回日本美容外科学会(JSAS)学会長。銀座、品川、日本橋、大阪、香川、上海を拠点に美容医療の普及に取り組んでいる。日本形成外科学会専門医。日本美容外科学会(JSAS)専門医。東海大学病院形成外科非常勤講師。
