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皮膚科と形成外科が協力すると何が変わるのか 細胞と構造から治療を組み立てる ヒルズグレイスクリニック院長・奥謙太郎氏、副院長・奥美香子氏に聞く Vol.3

カレンダー2026.6.10 フォルダーインタビュー
奥謙太郎(おく・けんたろう)氏。ヒルズグレイスクリニック(HILLS GRACE CLINIC)院長、医療法人社団光悠会理事長。(写真/編集部)

奥謙太郎(おく・けんたろう)氏。ヒルズグレイスクリニック(HILLS GRACE CLINIC)院長、医療法人社団光悠会理事長。(写真/編集部)

奥謙太郎(おく・けんたろう)氏
ヒルズグレイスクリニック院長

  • 皮膚科と形成外科の視点→ 細胞や組織を見る視点と、血管・神経・筋肉まで含めた構造を見る視点を重ねている。
  • 単独治療では限界も→ シミ、シワ、たるみは、機器治療や注入治療を組み合わせて考える必要がある。
  • 効果と安全性を両立→ 複数の専門性を組み合わせることで、リスクを抑えながら治療効果を高めることを目指す。

──一つの症状を、皮膚科と形成外科の両方の視点から見ている。

奥謙太郎氏: 私は皮膚科医で、奥美香子医師は形成外科医です。もともとのトレーニングが違うので、ものの見方も違います。

 皮膚科では、組織や細胞を見ます。顕微鏡で組織を見て、細胞レベルで何が起きているのかを考え、そこから治療法を組み立てます。一方、形成外科では、より大きな構造として、形態や機能、血管、神経、筋肉、皮下組織など有機的なつながりを含めて考えます。

 この2つの視点があることで、ミクロからマクロまで見ることができます。美容医療でも、一つの症状を一つの科だけで完結させるのではなく、全体を見て治療を組み立てる体制が必要だと思っています。

──シミ、シワ、たるみも、一つの治療だけでは対応しきれない。

奥謙太郎氏: 例えば、シミ、シワ、たるみといった悩みがある時に、機器だけで治せる、注入だけで治せるということは多くありません。

 私はエネルギーベースデバイス(レーザーや高周波、超音波などの照射機器)を専門にしています。一方で、奥美香子医師は注入治療を専門にしています。私の方からは、機器でどのようにアプローチするかを考えます。奥美香子医師は、注入や形成外科の視点から、どのようにアプローチするかを考えます。

 それぞれの視点を組み合わせることで、効果を高め、リスクを抑える治療が可能になります。単独の治療では補いきれない部分も、組み合わせることで補えることがあります。一足す一が二ではなく、三や四になるような治療を目指せるのです。

──実際に、組み合わせ治療を研究としてまとめている。

奥謙太郎氏: 私たちは、エネルギーベースデバイスと注入製剤を組み合わせた治療について論文にしました。機器で熱を加えることと、注入製剤で組織に物理的な刺激を加えることを組み合わせ、肌にどのような変化が出るのかを見たものです。客観的な評価、受けた方の主観的な評価、肌の状態などを測定し、結果をまとめたものです。

 原理を考え、仮説を立て、実際に検証する。その流れが必要なのですが、本論文では、線維芽細胞にどのような刺激を与えるのか。どの層に熱を加え、どの層に注入製剤で働きかけるのかを系統立ててまとめています。

 美容医療では、症状だけを見て治療を選ぶのではなく、細胞や組織の状態をどう捉えるかが重要です。そのためにも、皮膚科と形成外科の視点を組み合わせることには大きな意味があります。

奥美香子(おく・みかこ)氏。ヒルズグレイスクリニック(HILLS GRACE CLINIC)副院長。(写真/編集部)

奥美香子(おく・みかこ)氏。ヒルズグレイスクリニック(HILLS GRACE CLINIC)副院長。(写真/編集部)

奥美香子(おく・みかこ)氏
ヒルズグレイスクリニック副院長

  • 層ごとに治療を考える→ 表皮、真皮、皮下組織など、どの層に何が起きているかを見て治療を組み立てる。
  • 深い層では解剖理解が重要→ 血管や神経を傷つけないため、形成外科的な解剖の知識が安全性に関わる。
  • 症状の背景まで見る→ 見た目の症状だけでなく、原因や組織の状態を考えて必要な治療を選ぶ。

──層ごとに見ていくと、治療の組み立ても変わる。

奥美香子氏: 皮膚は層構造になっています。表皮、真皮、皮下組織では、それぞれアクセスするターゲットが違います。表皮や真皮の状態を整える治療もあれば、皮下組織や筋肉に近い深い層を意識する治療もあります。

 以前は、一つのレイヤーに一つの治療を行うような考え方もありました。しかし今は、複数のレイヤーに、複数の方法でアプローチする流れに変わってきています。

 表面に見えている症状を取るだけではなく、どの層に何が起きているのかを考えながら治療を組み立てる。そのためにも、皮膚科の視点と形成外科の視点を重ねることが大切だと思います。

──深い層にアプローチする時には、安全性の見方も重要になる。

奥美香子氏: 表皮や真皮などの浅い層は、皮膚科に近い領域です。一方で、皮下組織や筋肉など、もう少し深いところは形成外科の専門に近くなります。

 深い層にアプローチする時には、血管や神経を傷つけないことが大切です。解剖学をどれだけ理解しているかは、安全性を担保した治療を提供するための前提になります。

 美容医療を受ける方は、美しくなるために来られます。ただ、その前提には安全性がなければいけません。安全を前提とした美しさを提供することが、私たちにとって大切です。

──一つの所見でも、見る角度によって治療の選択肢が変わる。

奥謙太郎氏: 皮膚科と形成外科では、同じ症状を見た時の入り口が違います。例えば赤み一つを見ても、皮膚科医としては、どの細胞や反応が炎症に関わっているのかを考えます。一方で、形成外科の視点から見ると、どの血管が拡張しているのか、構造としてどう見えているのかという見方も出てきます。

 そこから、治療のアプローチが変わることがあります。日々、その連続です。一つの視点だけでは気づきにくいことも、二つの視点があることで見えてきます。

 だからこそ、新しい治療法を考える時にも、今ある治療を改良する時にも、皮膚科と形成外科の両方から見ることが重要です。

──最初に皮膚科で診るのか、形成外科で診るのかは、症状によって変わる。

奥美香子氏: それは症状によります。シミで来られる方、シワやたるみで来られる方、注入を希望される方など、入り口はさまざまです。

 ただ、最終的には、細胞や組織の状態まで考えた上で、機器治療と注入治療を組み合わせることもあり、二つの視点から診ることになります。

 役割としては、奥謙太郎医師がエネルギーベースデバイスを中心に、私は注入治療を中心に担当しています。それぞれの専門性を生かしながら、必要に応じて一緒に治療を組み立てます。

──二人に共通しているのは、症状の背景まで見て治療を考える姿勢。

奥美香子氏: そうです。美容医療は、見た目を整えるだけのものではありません。症状そのものだけでなく、その背景や、その方の思いも含めて向き合う必要があります。

 一人ひとりが持つ本質的な美しさを引き出し、自信を取り戻して前向きに過ごしていただくことが、診療の大きな目的だと思っています。そのためにも、安全性を前提に、医療として美容医療を提供していきたいと考えています。

奥謙太郎氏: 美容医療では、症状だけを見て、機器や製剤を当てはめるのではありません。診察し、診断し、原因を考え、必要な治療を組み立てる。その中で、皮膚科と形成外科が協力できることには、大きな意味があると思っています。(続く)

プロフィール

奥謙太郎(おく・けんたろう)氏。ヒルズグレイスクリニック(HILLS GRACE CLINIC)院長、医療法人社団光悠会理事長。(写真/編集部)

奥謙太郎(おく・けんたろう)氏。ヒルズグレイスクリニック(HILLS GRACE CLINIC)院長、医療法人社団光悠会理事長。(写真/編集部)

奥謙太郎(おく・けんたろう)氏

ヒルズグレイスクリニック院長、医療法人社団光悠会理事長。福島県立医科大学卒業後、大学病院や関連病院で皮膚科研修を行い、皮膚科および美容皮膚科クリニックの院長を歴任。2015年4月、あざみ野ヒルズスキンクリニックを開院。2018年4月に医療法人社団光悠会を設立し、2022年3月、ヒルズグレイスクリニックを開院した。皮膚科医として、レーザーや高周波、超音波などのエネルギーベースデバイスを用いた美容医療、画像診断、細胞・組織の状態に基づく診療に取り組む。米国レーザー医学会(ASLMS)フェロー。レーザー機器や各種美容医療機器を用いた治療法の研究、論文発表、国内外での講演、医師向け教育にも力を入れている。

奥美香子(おく・みかこ)氏。ヒルズグレイスクリニック(HILLS GRACE CLINIC)副院長。(写真/編集部)

奥美香子(おく・みかこ)氏。ヒルズグレイスクリニック(HILLS GRACE CLINIC)副院長。(写真/編集部)

奥美香子(おく・みかこ)氏

ヒルズグレイスクリニック副院長、形成外科医。株式会社ヒルズプレミアム代表取締役。福島県立医科大学卒業後、大学病院やがんセンターなどで形成外科、美容皮膚科、美容外科研修を行い、2015年4月、あざみ野ヒルズスキンクリニック副院長に就任。2022年3月、ヒルズグレイスクリニックの開院に伴い、副院長に就任した。形成外科医として、注入治療を中心に、各種注入製剤と機器治療を組み合わせた美容医療に取り組む傍ら、注入指導医として医師向け教育を行っている。美容医療の持つ社会学的意義に関する研究を大学施設との共同で行うなど、臨床診療にとどまらない活動を行っている。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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