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美容内科は何を根拠に選ぶべきか 薬や点滴のメニューだけでは見えない診療体制 繰り返された問題を踏まえ、国の関与と学会の役割を考える【編集長コラム】

 ヒフコNEWSでは、第26回日本抗加齢医学会の講演などを通して、体の内側から美容を支える「美容内科」といわれる分野について取り上げてきた。

 今や、ウェブサイトで簡単に検索するだけでも、美容内科をうたう医療機関は多数見つかる。それらを比べると、GLP-1関連薬の処方を含めた薬剤の処方、点滴などの診療内容が示されているが、利用者はどのような根拠で選べばよいのか。

内側から美容を見る医療で、運営体制に目を向ける

医療者が患者の前で問診票や説明書類に記入している様子。

美容内科を選ぶ際には、薬の処方だけで終わらず、問診や説明、フォロー体制が整っているかを確認したい。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

  • メニューだけで判断しない→ GLP-1関連薬や点滴などの内容だけでなく、診療体制を見る必要がある。
  • 責任の所在が重要→ 誰が診療に責任を持ち、副作用や経過に対応するのかを確認する視点が求められる。
  • 運営体制も選ぶ基準→ 美容医療で起きてきた運営上の問題は、美容内科でも起こる可能性がある。

 美容内科を選ぶとき、利用者はまず診療メニューに目を向ける。GLP-1関連薬を扱っているのか、点滴療法があるのか、サプリメントやホルモン関連の治療を行っているのか。そうした内容は分かりやすい。

 しかし、本当に見るべきなのは、メニューだけではない。誰が診療に責任を持っているのか、どのような医師が関わっているのか、治療後の経過や副作用にどのように対応するのか。美容内科が広がるほど、こうした運営体制の見え方が重要になる。

 美容医療ではこれまでも、医療機関の運営体制を巡る問題が指摘されてきた。例えば、医師が医学部卒業後の2年間の初期研修を終えてすぐに美容医療に進む「直美」が注目される中で、経験の浅い医師が院長として就任した医療機関で、トラブルになる事例が報告されることがあった。

 このほか、医療脱毛クリニックが倒産した後の問題もあった。運営会社が医院の開設や運営を実質的に支え、経営者となり、院長を雇う形で医療脱毛を提供していたケースでは、経営破たん後に、院長が未施術の脱毛に対応できなくなったり、返金不能の責任を負わされたりするのではないかという問題が浮上したことがある。

 「名ばかり院長」といった形で、一般社団法人が運営する美容クリニックにおいて、名義貸しのように実質的に診療に当たっていない医師が院長となり、無資格者が施術をしているような問題も存在していた。

 こうした問題が起きたとき、被害を受けるのは利用者だ。経営破たんした場合には院長を頼ることができず、施術で合併症や後遺症が起きた場合にも、責任の所在が見えにくくなる。

 従来、こうした問題は美容皮膚科や医療脱毛に近い分野で指摘されてきた。しかし、美容内科で同じような構図が起こらないとは言い切れない。

 美容外科や美容皮膚科と比べると、美容内科では、薬の処方、点滴療法、サプリメント、ホルモン関連の治療などが、メニューとして前面に出やすい面がある。だからこそ、それぞれの治療をどのように判断し、どのように経過を見ていくのかが重要になる。

 既に、オンライン診療で薬を処方したり、点滴やサプリメントなどを定期的に提供したりする医療機関の診療内容も見られる。実際に通院できるクリニックであっても、例えば、実態としてはGLP-1関連薬などを出すだけの施設もあるならば、診療責任や経過観察があいまいになりやすいのではないかと危惧する。

 これから美容内科が増えていくとした場合、この点は大きな論点になる。内側から美容を見る医療には可能性がある。一方で、運営体制や診療責任が見えないまま広がれば、美容医療で繰り返されてきた問題が、美容内科でも起こりかねない。利用者が医療機関を選ぶ際には、治療メニューだけでなく、誰が責任を持って診療しているのかを見る必要があるだろう。

薬の処方だけで終わらない施設か、運営体制を見る

白衣を着た女性が、薬のシートを手に持って説明している様子。

美容内科では薬や点滴などのメニューだけでなく、診療責任や経過観察の体制を確認することが重要になる。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

  • 薬を出すだけでは不十分→ 適応や副作用、持病、併用薬、中止後の管理まで含めた診療が必要になる。
  • 国の関与が強まる→ 美容医療への定期報告義務など、安全管理や情報公開を求める流れが進んでいる。
  • 学会の役割も重要→ 美容内科が医療として育つには、診療の考え方や安全管理の基準を示すことが求められる。

 実際、美容内科をうたう医療機関を見ていくと、院長や診療責任者が誰なのか、どのような医師が診療に関わっているのかが分かりにくいクリニックもある。診療メニューは目立つが、運営体制や診療上の責任の所在が見えにくい。利用者が確認すべきなのは、まさにこの部分だ。

 「美容内科」と書かれているだけで、内科的な視点から安全に診てくれる施設だと受け止めたくなるかもしれない。しかし、その看板だけで安心できるわけではない。むしろ見るべきなのは、薬を出した後にきちんとフォローする体制があるか、その責任を誰が持っているかだ。

 その意味では、院長や診療責任者の存在は大きなポイントになる。院長名や医師の経歴が明示されているか。実際に診療する医師が分かるか。副作用が出たとき、体調が変化したとき、治療を中止したいときに、誰が判断し、誰が対応するのか。ここが見えなければ、利用者にとっては不安材料になる。

 特に、薬や点滴などのメニューを中心にした美容内科では、この点が重要になる。GLP-1関連薬などを用いた痩身医療は、単に薬を出せば終わるものではない。適応、禁忌、副作用、併用薬、持病、投与中止後の体重管理まで含めて見る必要がある。こうしたフォローを誰が担うのかが分からないまま、オンライン診療や定期配送の仕組みだけが前面に出ると、医療を受けているのか、商品を買っているのかが分かりにくくなる。

 院長や診療責任者が見えない場合、単なる情報不足にとどまらない可能性もある。実際には別の運営主体が前面に出ており、医師の関与が限定的になっているのではないか。責任の所在があいまいなまま、薬の処方だけが流れているのではないか。そうした運営体制の問題が隠れている可能性も考えざるを得ない。

 そうした点が見えないまま薬の処方などの管理を伴わない対応だけが広がれば、美容医療で繰り返されてきた運営上の問題が、美容内科でも起こりかねない。

 もっとも、国が美容医療への制度的な関与を強めようとしていることは、前向きな変化と受け止められる。医療法等の一部改正では、美容医療を行う医療機関に定期報告義務等を設けることが盛り込まれた。厚労省の検討会報告書でも、安全管理措置の実施状況、専門医資格の有無、副作用や合併症が起きた場合の相談先などを報告・公表する仕組みが示されている。

 この流れの中では、美容内科と呼ばれる領域も無関係ではいられないだろう。重要なのは、「美容内科」という名称そのものではなく、美容目的でどのような医療行為を行い、誰が責任を持って診療しているかだ。薬の処方、痩身医療、点滴療法、サプリメント、ホルモン関連の治療などが自由診療として提供されるなら、安全管理や説明責任の在り方を明確にする必要がある。

 日本美容内科学会は、内科的な視点から美容医療を検討する学会として発足している。抗加齢医学や糖尿病領域などの専門家を招いた企画も進めている。今後は、こうした活動をさらに進め、診療の考え方、安全管理、説明、医療機関の責任体制について、望ましいあり方を示していくことが重要になるだろう。

 美容内科には、体の内側から美容と健康を考えるという大きな可能性がある。その可能性を生かすには、日本内科学会や糖尿病、内分泌、肥満症などの主要な内科系学会との連携も欠かせない。美容内科が「薬を出すクリニック」や「点滴メニューを並べるクリニック」で終わるのか、内科的な知見に基づいて美容と健康を支える医療として育つのか。その分かれ道に、既に差しかかっている。

参考文献

見えない美容クリニックの闇、グループの医師が個人事業主に?支配され追い込まれる、東京中央美容外科(TCB)運営が約9億円の追徴課税の報道も、ウルフクリニック倒産では経営破たんの責任を負いかねない事態も【編集長コラム】
https://biyouhifuko.com/news/column/11244/

一般社団法人のクリニック運営を監督強化へ 厚労省が非営利性の徹底方針 増える一般社団法人クリニックにメス 毎年度の決算書類提出を義務化
https://biyouhifuko.com/news/japan/16562/

医師関与しない美容クリニックへの不信感、運営実態の透明性欠かせない、一般社団法人による医療機関の規制強化の動き、厚生労働省は営利目的を問題視する考え方を示す【編集長コラム】
https://biyouhifuko.com/news/column/10162/

厚生労働省、美容医療7つの対応策、検討会がまとめる、25年からガイドライン整備、直美の検討は別会議で継続、「美容医療の適切な実施に関する検討会」報告書案
https://biyouhifuko.com/news/japan/9883/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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