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「約1000円」広告から120万円以上の契約に、包茎手術の返金問題 和解でローンキャンセルと請求免除へ 国民生活センターがADRの経緯を公表

カレンダー2026.7.9 フォルダー 国内
自由診療の契約や返金を巡る紛争事例の文書を、スポットライト風に示した資料画像。

国民生活センターは、低価格広告をきっかけにした自由診療の高額契約を巡るADRの経緯を公表した。(出典:国民生活センター)

 SNS広告をきっかけに契約した包茎手術などをめぐり、返金やローン契約の解消をめぐるトラブルの経緯が明らかになった。

 国民生活センターがADR(裁判外紛争解決手続)の事例として公表したものだ。

SNS広告から無料カウンセリング

医師が男性患者と向き合い、クリップボードの書類を確認している様子。

自由診療の契約では、施術費用だけでなく、ローンを含む支払総額や契約条件の説明を十分に受けることが重要となる。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

  • SNS広告がきっかけ→ 「切らない治療約1000円」とする広告から無料カウンセリングを予約した。
  • 当日契約と施術へ→ 来院後に高額なコースや亀頭増大術を勧められ、その日のうちに契約、手術を受けた。
  • 支払総額は120万円超→ 後にローンの支払総額が120万円以上で、7年以上の支払いになると分かった。

 国民生活センターでは、消費者と事業者の間で起きたトラブルについて、裁判によらず解決を図るADR(裁判外紛争解決手続)を実施している。寄せられた紛争の中でも、同種トラブルの防止につながると考えられる事例については、概要を公表している。

 今回その対象となったのが、包茎手術などの契約を巡り、返金やローン契約の扱いが問題となった事案だ。

 申請人(以下、Aさん)は2025年6月下旬、SNS上で「切らない治療約1000円」などと記載されたクリニックの広告を見て、メッセージアプリに登録し、無料カウンセリングを申し込んだ。来院後、カウンセラーから個室に案内され、問診票に「お金のことが気になる」旨を記載したという。

 その後、医師の診察を受けた後に、カウンセラーから「仮性包茎で切らない手術は無理」「約1000円の手術はできない」「状態が良くないので今日手術したほうがいい」などと説明されたとAさんは主張している。さらに、術後の見た目に違和感がないコースを選び、包皮が戻りにくくなるとして亀頭増大術も勧められたという。

 契約額は当初の広告から大きく離れたものだった。Aさんによると、100万円を超えるコースについて、学生割引などで80万円程度になるとの説明を受け、「月々1万5000円なら払えるよね」などと言われた。Aさんは高額だと感じながらも、状態が良くないと言われたことなどから契約に至った。

 契約手続では、タブレットに氏名や年収を入力し、施術契約や信販契約の契約書、治療に関する説明文書などに署名した。しかしAさんは、読み合わせや十分な説明はなかったと主張している。その後、17時から約1時間の手術を受けた。

 7月中旬、信販会社から届いた書面を家族が確認したことで、支払総額が120万円を超え、支払期間が7年以上に及ぶことを知った。

 Aさんは消費生活センターに相談し、クリニックに契約解除通知を、信販会社に支払い停止の申出書を送付した。信販会社は引き落としを保留するとした一方、クリニックは減額には応じないとの立場を示した。

クーリング・オフが論点に

白衣の医師が、診察室で男性患者に説明している様子。

低価格の広告をきっかけに来院し、当日に高額な自由診療契約に進むケースでは、費用や施術内容を慎重に確認する必要がある。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

  • 訪問販売に当たるかが論点→ 低価格の限定予約枠を示して来院を促した場合、クーリング・オフ対象になる可能性が検討された。
  • 契約書面にも問題→ 契約書面にクーリング・オフの記載がなく、全額返金の必要性も論点になった。
  • ローン契約はキャンセルへ→ 最終的にクリニック側が請求を免除し、手続外で和解が成立した。

 ADRの手続で、クリニックは当初、契約の過程に不当な点はなく、サービス代金も明記していたとして、和解の仲介に協力しない姿勢を示した。診療報酬も他の診療所と比べて特別高額ではなく、消費者契約法などに反する勧誘もしていないため、減額に応じる理由はないと主張した。

 一方、仲介委員は、Aさんが提出した契約書面や、クリニックとのメッセージアプリ上のやり取りを確認した。そこには、クリニックからAさんに対し、Aさんのために確保した「切らない包茎治療約1000円の限定予約枠」といった趣旨のメッセージが送られていた。また、契約書面にはクーリング・オフに関する記載がなかった。

 ここで問題となったのは、Aさんが自分から来院したケースであっても、実質的に「訪問販売」に当たる可能性があるかという点だ。特定商取引法では、事業者が通常より著しく有利な条件で契約できると告げて来院を促した場合などには、店舗やクリニックで契約していても、訪問販売として扱われることがある。

 仲介委員は、メッセージアプリ上の案内がこれに当たるのであれば、今回の契約はクーリング・オフの対象になる可能性があると整理した。その場合、交付された契約書面が訪問販売に対応した内容ではなかったため、Aさんが送った通知によってクーリング・オフが成立し、クリニックは契約金額を全額返金する必要があるとの見方も示された。あわせて、消費者契約法に基づく契約取消しも論点になるとされた。

 これに対してクリニックは、広告は不特定多数が閲覧できるものであり、「約1000円」という価格も同院の一般的な価格として示したものだと主張した。そのため、特定の人だけに有利な条件を示して来院を促したわけではなく、訪問販売には当たらないとの立場を取った。

 ただし最終的には、Aさんの年齢や資力、国民生活センターが関与した事実を踏まえ、AさんがADRの申請を取り下げることを条件に、ローン契約をキャンセルし、クリニックからの請求を免除する提案をした。信販会社への既払金がある場合には、その分を返金する内容であった。

 Aさんはこの提案を受け入れ、手続外で和解が成立したとして申請を取り下げたため、ADR手続は終了した。

 今回の事案は、低価格の広告をきっかけに来院し、その場で高額な自由診療やローン契約に進むリスクを示している。費用や支払総額、施術の必要性に不安がある場合は即決せず、早めに消費生活センターなどへ相談することが重要だろう。

参考文献

国民生活センターADRの実施状況と結果概要について(令和8年度第1回)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260708_1.html

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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