美容医療で使われるフラクショナルレーザーが、肌の見た目を改善するだけでなく、遺伝子の働きを調節する仕組みにまで影響する可能性が示された。
医療機器メーカーのキャンデラなどの研究グループが2026年6月に発表した。
顔の左右を比較、約380万カ所を解析

顔の肌質改善を目的とした美容施術のイメージ。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- DNAメチル化→DNA配列を変えずに遺伝子の働きを調節し、年齢や紫外線などの影響を反映する仕組み。
- 治療方法→成人22人の顔の片側に1940nmのフラクショナルレーザーを約4週間隔で3回照射し、反対側を対照とした。
- 解析内容→治療前から終了6カ月後まで表皮を採取し、約380万カ所のDNAメチル化と、シミや肌の凹凸を調べた。
肌の老化は、紫外線などによる長年のダメージに加え、遺伝子の働きを調節する仕組みの変化とも関係している。その一つが「DNAメチル化」だ。
DNAメチル化は、DNAの配列そのものを変えずに遺伝子の働き方を調節する仕組みで、年齢や紫外線、生活環境などの影響を反映する分子の目印として研究されている。
フラクショナルレーザーは、皮膚に一定の間隔を空けて格子状にレーザーを照射し、微細な点状の熱刺激を加える治療。照射されない周囲の組織を残すことで皮膚の修復反応を促し、シミや肌質、弾力などの改善を目指す。
今回、研究グループは、治療後の効果が比較的長く続く背景に、DNAメチル化のようなエピジェネティックな変化がある可能性に着目した。
研究には20~64歳の成人24人が登録され、規定の治療を完了した22人を主な対象として、表皮のエピジェネティックな変化を検証した。
顔の片側に1940nmのレーザーを照射し、反対側はレーザーを当てない対照部位とした。同じ人の顔の左右を比較することで、年齢や生活環境といった個人差の影響を抑えた。
治療は約4週間隔で計3回行われた。研究グループは粘着テープを使って表皮のサンプルを採取し、治療前、初回治療から約4週間後、全治療終了から1カ月、3カ月、6カ月の時点でDNAメチル化を調べた。解析対象は1検体当たり約380万カ所のCpG部位に及んだ。CpG部位はDNAの中でメチル化が行われる場所となる。
さらに、専用画像解析装置VISIAを用いて、茶色いシミ、色素斑、肌表面の凹凸なども数値化した。
老化と逆方向の変化が83.9%

頬にレーザーを照射する美容医療の場面。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- DNAメチル化→DNA配列を変えずに遺伝子の働きを調節し、年齢や紫外線などの影響を反映する仕組み。
- 治療方法→成人22人の顔の片側に1940nmのフラクショナルレーザーを約4週間隔で3回照射し、反対側を対照とした。
- 解析内容→治療前から終了6カ月後まで表皮を採取し、約380万カ所のDNAメチル化と、シミや肌の凹凸を調べた。
初回治療後の時点では、照射した側と照射しなかった側で、明確なDNAメチル化の差は見られなかった。しかし、3回の治療を終えて1カ月後から、計635の領域でメチル化の変化が確認された。変化は3カ月後まで広がり、6カ月後には安定する傾向を示した。
変化した領域には、表皮細胞の分化、コラーゲンの形成、傷の修復、幹細胞の維持、皮膚のバリア機能などに関係する遺伝子が多く含まれていた。レーザーの熱刺激をきっかけに皮膚の修復が進み、その影響がエピジェネティックな変化として数カ月残った可能性がある。
さらに研究グループは、18~90歳の685検体の皮膚データを使い、年齢とともにDNAメチル化が増えたり減ったりする傾向の強い場所を特定した。次に、その同じ場所がレーザー治療後にどのように変化したかを調べた。
加齢との関連もレーザー治療との関連も強かった約16万8000カ所のうち、83.9%では変化の方向が逆だった。年齢とともにメチル化が増える場所では治療後に減り、年齢とともに減る場所では治療後に増える傾向が見られた。
ただし、この結果は、肌が永続的に若返ることを示すものではない。確認されたのは、老化に伴うDNAメチル化の一部が、最長6カ月の研究期間中に若い状態へ近づく方向に変化したことにとどまる。
見た目では、照射側の茶色いシミが治療終了1カ月後に中央値で38%減り、肌の凹凸も15%減少した。一方、6カ月後の画像評価では、照射側と非照射側の明確な差は確認されなかった。6カ月後まで参加した人数が少なかったこともあり、効果の持続については今後の検証が必要だ。
表皮細胞の増殖や一部の皮膚がんとの関連が報告されている遺伝子の周辺でも、DNAメチル化の変化が確認された。ただし、皮膚がんの予防効果を調べた研究ではなく、発症を防ぐことが示されたわけではない。
今回の研究は、フラクショナルレーザーの効果が見た目の変化だけでなく、皮膚のエピジェネティックな変化にも及ぶ可能性を示した点に意義がある。一方、対象者は22人と少なく、遺伝子発現やタンパク質の変化は測定していない。今後、より大規模な研究で結果が再現されれば、DNAメチル化がレーザー治療の効果や持続期間を評価する指標になる可能性がある。
参考文献
Schallen KP, Schomacker K, Banila C, et al. Non-ablative fractional laser 1940-nm treatment modulates epigenetic signatures associated with skin aging in a split-face investigation. Scientific Reports. 2026;16:17695. doi: 10.1038/s41598-026-56604-4.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42380171/
New Human Study in Nature’s Scientific Reports Finds Candela’s Nordlys Non-Ablative Fractional Laser Reverses the Skin’s Epigenetic Signature of Aging.
https://candelamedical.com/press-releases/candela-nordlys-non-ablative-fractional-laser-reverses-the-skins-epigenetic-signature-of-aging/
