
Netflixシリーズ『ダウンタイム』のキーアート。美容医療をめぐる光と影を象徴するように、顔の一部が絵画的に表現されている。(出典:Netflix)
美容医療の世界を正面から描いたNetflixシリーズ『ダウンタイム』が、2026年9月17日に世界独占配信された。
主人公は高い手術技術を持つ形成外科医の沼田文。松岡茉優氏が演じる文が美容医療の世界に入り、仲里依紗氏が演じるカリスマ美容外科医の遠山凜らと関わりながら、美容医療を取り巻くさまざまな出来事が描かれている。
既にSNSなどには多くの感想や意見が投稿されているが、中身についてはドラマそのもので確認してもらいたい。
ここではメーンストーリーから少し離れ、ネタバレとは無縁の部分について簡単に書いてみたい。「裏側のその裏側」としたのは、そういう意図だ。
病院に「警察OB」がいるのは珍しいことではない

美容医療を舞台にしたNetflixシリーズ『ダウンタイム』の予告編より。(出典:Netflix)
- 警察OBの役割→病院では、苦情や暴言、暴力、不審者などへの対応や院内の安全確保を目的に、警察OBが配置されることがある。
- 実際の配置例→千葉県看護協会の2021年度調査では、回答した129病院のうち37病院、28.7%に警察OBの職員がいた。
- 作品での描写→『ダウンタイム』への警察OBの登場は、美容クリニックでも診療以外のトラブル対応が必要になる現実を感じさせる描写となっている。
作品では、舞台となる病院に警察OBが勤めている描写が出てくる。篠井英介氏が演じる高階義信だ。
かつて、ある病院の関係者と食事をする機会があった。4人での会食だったが、そのうち2人が警察OBだったことがあり、作品を見ながらそのときのことを思い出した。
受診する人や家族など多くの人が出入りする病院では、診療とは別に、苦情や暴言、暴力、不審者などへの対応が必要になることがある。こうした院内の安全やトラブルへの対応を目的として、警察OBを配置している病院は一定数あるようだ。
千葉県看護協会が県内の病院を対象に実施した2021年度の調査では、回答した129病院のうち37病院、28.7%が「職員に警察OBがいる」と回答していた。
そのほかにも、大学病院などで警察OBを配置していることを公表している施設が見られる。
それだけ病院にとってトラブルへの対応が重要だということだろう。美容クリニックも無関係ではない。
受診する側として病院を訪れていても、こうした仕組みを意識する機会はほとんどない。医療ドラマでも、目立つのは医師や看護師、手術室や診察室で、裏方として働く警察OBに焦点が当たることは多くない。
その意味では、『ダウンタイム』に警察OBが登場する描写は、美容クリニックにトラブルがつきまとう現実を、無意識のうちに印象づける効果もあったように見えた。
美容皮膚科系の施術が9割を超えるというデータ

Netflixが2026年公開予定で「ダウンタイム」制作。(出典/Netflix)
- 施術の変化→現在の美容医療では外科手術だけでなく、医療機器などを使った非外科的な施術も大きな割合を占めている。
- 利用者も多様化→若い女性だけでなく、男性や加齢による外見の変化に対応したい人など、美容医療を利用する目的は広がっている。
- ダウンタイム→外からは仕上がりだけが見えやすい一方、施術後には腫れや内出血、生活への影響など、本人にしか分からない負担もある。
もう一つ気になったのが、作品の中で描かれる施術内容だ。
外科手術だけでなく、医療機器を使った施術など、さまざまな美容医療が登場する。どの施術が多かったかを厳密に数えたわけではないが、ストーリーが移り変わっていくのに合わせるように、描かれる施術の内容も変化しているように感じられた。
現実の美容医療の施術内容は、「美容整形」という言葉から受けるイメージとはかなり異なる。外からは「美容整形」として二重まぶたや鼻、フェイスリフトなどの手術が思い浮かべられやすい。しかし内側に目を向けると、実際にはメスを使わない施術も大きな割合を占める。ヒフコNEWSで最近紹介したSBCメディカルグループホールディングスのデータでも、美容皮膚科系の施術が9割を超えていた。
そうした現在の美容医療を、無意識のうちに感じさせる描写だったように思う。
そもそも、美容医療には、外から見た姿と内側から見た姿に差がある。
外から見れば、美容医療には今も「美容整形」というイメージが強い。容姿を変えるための手術という印象が根強く、ときには軽く見られたり、偏見を持たれたりする。その内側には、問題のある医師もいれば、施術を受ける人の悩みに向き合い、治療について真剣に考える医師もいる。
作品では、美容医療を利用したことを外では秘密にしながら、クリニックの中では結果を喜び、医師に感謝する姿も描かれる。
さらに作品では、男性美容や加齢への対応も描かれていた。美容医療は「若い女性が美しくなるためのもの」というイメージを持たれがちだが、実際には男性の利用もあり、年齢による外見の変化への対応を目的に施術を受ける人もいる。美容医療を求める理由は多様だ。
こうした美容医療をめぐる見え方の違いを、象徴するものの一つがダウンタイムだろう。外から見えるのは施術後の結果だが、内側では、腫れや内出血、人に会いづらい期間、仕事や生活への影響を施術を受けた本人が引き受ける。それは、外からのイメージと、内側の苦労とを対照的に示す。
現在の美容医療では、ダウンタイムを抑えやすい非外科的施術が大きな割合を占める。そうした流れがある現在だからこそ、作品で描かれるダウンタイムの過酷さは、美容医療が持つ別の一面をより強く印象づけたようにも感じた。
参考文献
Netflix「“美しくなりたい”は希望か、呪縛か―― 美容整形の光と闇を描き、あなたの価値観を問うNetflixシリーズ『ダウンタイム』メイン予告&キーアート解禁!」
https://about.netflix.com/ja/news/plasticbeauty-maintrailer-and-keyart
千葉県看護協会「令和3年度医療安全管理に関する調査」
https://www.cna.or.jp/uploads/media/2024/04/20240430131826.pdf
