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美容クリニック、人気のカギは「何年選ばれ続けるか」 SNSの使い方や医療の質などの視点から5人の医師が考えを披露 AMWC Japan 2026

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AMWC Japan 2026の開催日程と会場名が記された、東京の夜景を背景にした会場パネル。

AMWC Japan 2026は2026年9月12日から13日まで、東京で開催された。(撮影:編集部)

 美容クリニックの成功を理解するヒントは、どれだけ長くそのクリニックに通い続けている人がいるのかという点にあるかもしれない。

 2026年9月に東京で開催されたAMWC Japan 2026では、「美容医療クリニック成功の方程式―収益、患者、満足度を高める実践知―」と題したセッションが開かれた。切り口は異なったが、「短期に来院を集めるより、長期の信頼を重視する」という共通した方向性が見えた。

「新規を集める」だけではない医院へ

AMWC Japan 2026の会場に掲示された、国内外の演者の顔写真と氏名を並べたスピーカーリスト。

AMWC Japan 2026では、109人の演者のうち半数以上を海外の医師が占めた。(撮影:編集部)

  • 長く通う人を重視→新規来院者を増やすだけでなく、継続して通う人の割合や顧客生涯価値などを見ながら、長期的な関係を築く考えが示された。
  • SNSで信頼形成→フォロワー数や再生回数だけを追わず、専門性や誠実さ、人間性を継続的に伝えることが来院前からの信頼につながるとされた。
  • 体験全体を工夫→治療の質に加え、院内の雰囲気や接遇、スタッフの働く環境まで含めて「また来たい」と思えるクリニックづくりが重視された。

 美容医療クリニック選びでは、医師の技術や施術メニュー、価格などに目が止まりやすい。一方で、そうした要素を含め、人気のクリニックはどのように形作られているのか。

 スイスのリゾート地として知られるクラン=モンタナで美容医療に携わるフィリップ・マジストレッティ氏は、「顧客生涯価値(lifetime value、LTV)」をはじめ、数字を使ってクリニックの状況を把握し続けているという。例えば、新しい来院者一人に来てもらうために広告などでいくらかかったかを示す「顧客獲得費用」、来院を続ける人の割合、キャンセル率などだ。

 マジストレッティ氏は、一人の来院者が長期的にもたらす売上が、新規獲得にかかった費用の何倍になるかを重視し、自身ではおおむね4~10倍を一つの目安としているという。

 施術料の安易な値下げには慎重な考えを示した。長く通っている人に施術などで還元することは、「ディスカウント(値引き)」ではなく「リワード(還元・特典)」と位置付け、長く選んでくれている人にお返しするアプローチを取っているという。

 こばとも皮膚科(名古屋市中区)院長で、皮膚科専門医の小林智子氏は、SNSの使い方について考えを示した。

 小林氏が強調したのは、フォロワー数や再生回数そのものを目的にしないこと。実際の来院者から「何年もYouTubeを見ていた」「以前から投稿を読んでいた」と言われることがあり、一つの投稿が爆発的に広がることより、小さな接点を長く重ねることが医師への信頼につながると説明した。その際に、「専門性」「誠実さ」「人間性」の3つを重視する。専門知識のほか、治療の限界やリスク、あえて治療を勧めない場合まで伝える。その上で、来院者が「自分の悩みを理解してくれる」と感じられることが重要になる。

 SNSごとの役割も分けている。Instagramは「ショーウインドー」、YouTubeは「診察室」、Xは「学会の廊下」という捉え方。Instagramで知ってもらい、YouTubeでは時間をかけて治療の仕組みや限界、医師の判断過程を説明し、Xでは専門家同士の議論や自身の考えを示す。同じ情報を各SNSへ機械的に転載するのではなく、それぞれに合った伝え方へ変換する必要があるとした。

 小林氏は、診察は初診の日から始まるのではなく、利用者がスマートフォンで医師を探し、投稿を読み、動画を見る段階から始まっているとの考えを示した。

 クリニックK(東京都中央区)院長、金児盛氏は「ファン」を増やすという考え方を重視している。

 治療の質を重視するのはもちろんだが、それだけではない。院内の雰囲気を季節ごとに変えたり、施術の際にその人が好む音楽を流したり、雨の日には傘を用意したりする。美容医療そのものだけではなく、クリニックに入ってから帰るまでの細かな体験も、「また来たい」と思ってもらうための要素として考えている。

 その視点はスタッフにも向けられる。学会への参加や休暇を取りやすくするほか、食事や旅行などにも配慮するという。スタッフ自身が良い環境で働けるように心掛けている。

 そうした工夫を通じて来院した人との関係を深め、「選ばれ続けるクリニック」を目指す考えを示した。

「30年選ばれる」関係と独自の医療

AMWC Japan 2026の講演会場で、大型スクリーンに学会ロゴが映し出され、参加者が着席している様子。

AMWC Japan 2026の講演会場。2026年は講演会場を5会場に拡大し、幅広いテーマで議論が行われた。(撮影:編集部)

  • 長期的な関係→新規来院者数だけでなく、一人の来院者と何年間関係を続けられているかを重視する考えが紹介された。
  • 医療の質→紹介や信頼を積み重ねるには、医師の技術や安心・安全に加え、複数の医師が専門性を持ち次世代を育てる体制も重要とされた。
  • 独自性を磨く→新しい機器を追うのではなく、来院者の需要や既存治療との差を見極め、独自の価値を提供し続ける姿勢が示された。

 自由が丘クリニック(東京都目黒区)理事長の古山登隆氏は1995年に同院を開設し、2025年には30周年を迎えた。古山氏も、「長期間にわたって選ばれ続けること」を重んじている。

 自由が丘クリニックでは、会員制度を通じて治療履歴や希望を把握し、継続的な情報提供などを行っている。講演では、会員が約1万8000人に上ることを紹介した。新規来院者が何人来たかだけでなく、一人の来院者と何年間関係を維持できているかを見るという。

 友人や家族からの紹介も重視する。その背景にあるのは、広告よりも実際の治療結果や信頼によって評判が積み上がるという考えだ。自由が丘の行事への参加や美容医療の職業体験などを通じ、クリニックと地域との関係も築いてきた。

 クリニック独自の院内調査によれば、選ばれる理由として紹介、医師の技術、安心・安全などが上位に挙がったと説明した。長く選ばれるためには、医療の結果も欠かせないという考えだ。同院では、一人の著名な医師に依存する体制ではなく、複数の医師が専門性を持ち、次世代を教育する仕組みも必要だとした。

 台湾・高雄市を拠点とする皮膚科医ピーター・ペン氏は、1998年にP-Skinプロフェッショナルクリニックを開設した。同院には多数の美容医療機器があるが、ペン氏は「新しい機器だから買う」のではないとした。現在の来院者に需要があるのか、既存の機器にはない価値を提供できるのか、投資に見合うのかを判断して導入するという。診療中の発見を治療法の検討や論文化につなげる姿勢を紹介した。

 5人の話は、数値による経営管理、SNS、ファン化、30年続く関係、独自の治療と、切り口は少しずつ異なるものの、行き着くところは近い。新しい来院者を集めることだけではなく、「ここに通い続けたい」と長く思ってもらうこと。そのために信頼を築き、医療の質を高め続けることが、美容医療クリニックの成功を考える上で重要になりそうだ。

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ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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