脂肪細胞そのものを減らす新しい注射薬が、皮下脂肪だけでなく、内臓脂肪も減らす可能性が報告された。
研究成果は、2026年9月28日から10月2日にイタリア・ミラノで開催された欧州糖尿病学会(EASD)の年次総会で発表された。
脂肪細胞の自然死を促す

腹部の皮下脂肪を減らす新しい注射薬「CBL-514」の開発が進む。脂肪細胞の自然死を促す仕組みが特徴。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 薬の仕組み→CBL-514は脂肪細胞の自然死(アポトーシス)を促し、脂肪細胞そのものを減らすことを目指す注射薬。
- 皮下脂肪への効果→第2段階の臨床試験では、投与群の69.6%で腹部の皮下脂肪が150mL以上減少。プラセボ群では確認されず。
- 内臓脂肪の検証→MRIで評価した40人を対象に、CBL-514投与群23人とプラセボ群17人を比較。
開発したのは、台湾の製薬企業カリウェイ・バイオファーマシューティカルズ(Caliway Biopharmaceuticals)。開発中の薬は「CBL-514」と呼ばれる。
肥満の治療では、GLP-1受容体作動薬など、食欲や食事量に働きかけて体重を減らす薬が利用されている。一方、こうした薬を中止すると、減少した体重が再び増える場合がある。
新たに開発されているCBL-514は、これらとは異なる仕組みで脂肪を減らすことを目指す薬だ。
脂肪細胞に「アポトーシス」と呼ばれる、細胞が自ら死ぬ仕組みを働かせ、脂肪細胞そのものを減らすように設計されている。開発企業は、周囲の組織への影響を抑えながら、注射した部分の皮下脂肪を減らすことを目指している。
これまでの第2段階の臨床試験では、腹部の皮下脂肪が減少する効果が報告されている。
具体的には、投与終了8週間後の評価では、CBL-514を投与した人の69.6%で皮下脂肪の体積が150mL以上減少したのに対し、プラセボ(偽薬)を投与した人では、同じ程度の減少は確認されなかった。
今回の学会発表では、皮膚の下にある皮下脂肪だけでなく、腹部の臓器の周囲に存在する内臓脂肪への影響も検証された。
内臓脂肪の蓄積は、皮下脂肪に比べて、糖尿病や心血管疾患などのリスクと密接に関連する。内臓脂肪を減らすことができれば、健康面での効果も期待されるが、今回の研究では、そうした効果までは検証されていない。
米国アラバマ大学バーミンガム校を含む研究グループは、第2段階の臨床試験で、MRIによる内臓脂肪の評価が可能だった人を解析した。
投与終了8~12週間後までのデータが得られた40人を対象に、CBL-514投与群23人とプラセボ群17人を比較した。対象者のBMIは22~30だった。
CBL-514は腹部の皮下脂肪に3週間隔で投与し、脂肪の厚さに応じて注射の回数を調整した。投与量は最大600mg、投与期間は最大12週間だった。
MRI検査を利用し、投与前と投与終了4週間後、さらに8~12週間後の内臓脂肪の状態を比較した。
内臓脂肪が10.45%減少

脂肪細胞を減らす注射薬「CBL-514」について、GLP-1関連薬との併用によって体重の再増加を抑える可能性も研究されている。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 内臓脂肪への効果→投与終了8~12週間後に10.45%減少。プラセボ群では11.76%増加し、22.21ポイントの差。
- 安全性→注射部位の痛みや腫れ、赤みなどが報告されたが、多くは軽度から中等度で一時的。重篤な有害事象は確認されず。
- 今後の研究→皮下脂肪への効果を調べる最終段階の臨床試験が開始。GLP-1関連薬との併用による体重再増加の抑制も検証が必要。
解析の結果、CBL-514を投与した人では、腹部の内臓脂肪が減少していた。
投与開始前の内臓脂肪の平均体積は、CBL-514投与群が563.85mL、プラセボ群が659.81mLだった。
投与終了4週間後には、CBL-514投与群で内臓脂肪が開始前と比べて12.01%減少した。一方、プラセボ群では5.68%増加し、両群の変化率には17.69ポイントの差が認められた。
さらに、投与終了8~12週間後の評価では、CBL-514投与群の内臓脂肪は開始前より10.45%少なかった。プラセボ群では11.76%増加しており、両群の差は22.21ポイントに広がった。
この結果は、腹部の皮下脂肪に注射したCBL-514が、内臓脂肪にも影響する可能性を示している。
安全性については、注射部位の痛みや腫れ、赤みなどが認められたが、その多くは軽度から中等度で一時的なものだった。今回の報告では重篤な有害事象は確認されなかった。
体重の再増加を抑える可能性についても、ラットを使った動物実験の結果が紹介された。
肥満治療に使用されるGIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドとCBL-514を併用したところ、チルゼパチドだけを投与した場合よりも体重が減少。また、チルゼパチドの投与を中止した後も、CBL-514を併用した場合では体重の再増加が小さかった。
研究グループは、脂肪細胞の数を減らすことで、再び蓄積できる脂肪の量が制限され、体重が戻りにくくなる可能性があると考えている。
現在、腹部の皮下脂肪を減らす効果と安全性を詳しく調べる最終段階の臨床試験が始まっている。開発企業は、2027年末に最初の結果が得られる見通しを示している。また、GLP-1関連薬との併用による体重の再増加抑制についても、人を対象とした検証が必要になる。
参考文献
EASD Press Room Features New Data on CBL-514 for Reducing Subcutaneous and Visceral Fat
https://www.caliwaybiopharma.com/en/news-detail/-CBL-514-EASD-2026-subcutaneousfat-visceralfat-reduction-study-ENG/
