肌の再生力は、女性の方が男性よりも高い可能性がある。皮膚の細胞の働きや傷の治り方に、性別による違いがあることが報告された。
ベルギーのブリュッセル自由大学などの国際研究グループが2026年10月、世界的な科学誌「Nature」に研究成果を発表した。
肌の再生の仕組みに男女で違い

肌の生まれ変わりを支える皮膚の幹細胞。最新の研究では、オスとメスで細胞の働き方が異なり、メスでは傷の修復も早く進むことがマウスの実験で確認された。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 皮膚の再生→皮膚の幹細胞が新しい細胞を生み出し、肌の生まれ変わりや傷の修復を支える。
- 研究の目的→皮膚の幹細胞や、そこから生まれた細胞の働き方が、オスとメスでどのように異なるかを検証。
- 動物実験→マウスの皮膚を特殊な顕微鏡で観察し、同じ幹細胞から生まれた細胞が増殖・変化する様子を5カ月間追跡。
肌は常に新しい細胞に生まれ変わっている。皮膚の表面では古い細胞がはがれ落ち、その下では新しい細胞が作られ、肌の状態が維持されている。
こうした肌の生まれ変わりを支えているのが、皮膚の「幹細胞」だ。幹細胞は新しい細胞を生み出し、肌の再生や傷の修復に関わっている。
肌の再生の仕組みについては、これまでも研究が進められてきたが、オスとメスで細胞の働き方にどのような違いがあるのかは、十分に分かっていなかった。
今回、研究グループは、皮膚の細胞がどのように生まれ変わるのかを詳しく調べるため、動物実験を実施した。
マウスの皮膚を特殊な顕微鏡で観察し、同じ幹細胞と、そこから生まれた細胞がどのように増え、変化していくのかを5カ月間にわたって追跡した。
メスの方が皮膚の傷も早く治る

顔に手を添える若い男女。皮膚の再生や肌の状態に見られる男女の違いをイメージした写真。(出典:Adobe Stock)
- 細胞の働きに性差→メスでは同じ幹細胞から生まれた細胞が連携して増殖・成熟する一方、オスでは比較的独立して働いていた。
- ホルモンの影響→男性ホルモンは皮膚の細胞の成熟を促し、女性ホルモンは幹細胞の増殖や細胞同士の連携を促進。
- 傷の治りにも違い→メスの方が傷が早くふさがり、特に初期の数日間で差が目立った。主にマウスでの結果だが、性別に応じた治療法の開発につながる可能性。
その結果、オスとメスでは、皮膚の細胞の働き方が異なっていることが分かった。
メスでは、同じ幹細胞から生まれた細胞が、足並みをそろえるように増えたり、成熟した細胞に変化したりしていた。一方、オスでは、それぞれの細胞が比較的独立して働いていた。
この違いの背景にあったのは、男性ホルモンや女性ホルモンの働きだった。男性ホルモンは皮膚の細胞の成熟を促す一方、女性ホルモンは皮膚の幹細胞の増殖や、細胞同士の連携を促していることが確認された。
さらに、研究グループは、皮膚の傷が治る速さについても、オスとメスで比較した。するとメスの方がオスよりも傷が早くふさがっていた。特に傷ができてから最初の数日間で違いが目立ち、その後は差が小さくなった。メスでは、皮膚の幹細胞が早く働き始め、細胞同士が連携して再生を進めることが、傷の治りの速さに関係していると考えられた。
今回の研究は主にマウスを対象としたものだが、ヒトの皮膚を再現した実験でも、男性ホルモンが皮膚の細胞の成熟を促すことが確認された。研究グループは、こうした男女の違いを理解することで、手術後の傷などに対する、性別に応じた治療法の開発につながる可能性があると見ている。
参考文献
Engelman D, Hochstetter J, Bauduin A, et al. Sexual dimorphism in epidermal stem cell dynamics. Nature. 2026.
https://doi.org/10.1038/s41586-026-11159-2
Université libre de Bruxelles(2026年10月14日)La peau a un sexe: femelles et mâles ne renouvellent pas leur peau de la même façon
https://actus.ulb.be/fr/actus/recherche/la-peau-a-un-sexe-femelles-et-males-ne-renouvellent-pas-leur-peau-de-la-meme-facon
