女性のデリケートゾーンの形や大きさを整える婦人科形成。その代表的な手術である小陰唇縮小術は、1984年に初期の手術報告が発表され、2000年代以降、世界的に手術件数が増えてきた。手術件数が増える中で、切除方法や縫合技術にも工夫が重ねられている。スワンクリニック銀座(東京都中央区)院長の福澤見菜子医師に、婦人科形成の歴史と手術技術の進歩、学会活動や医師教育の意義について聞いた。(聞き手/ヒフコNEWS編集長 星良孝)

スワンクリニック銀座院長の福澤見菜子氏。婦人科形成を専門とし、小陰唇縮小術などを手掛ける。(写真:編集部)
福澤見菜子(ふくざわ・みなこ)氏
スワンクリニック銀座院長
- 婦人科形成の歴史→小陰唇縮小術は1984年に初期の手術報告。2000年代以降、インターネットの普及などを背景に広がった。
- 手術技術の進歩→傷跡を目立たせないため、皮膚の表面に糸を出さず、内側で縫合する方法などが工夫されてきた。
- 国内外の違い→術後の傷の管理や縫合方法には違いも。日本では細い糸を使った丁寧な縫合が発展してきたという。
──小陰唇縮小術は、比較的新しい美容外科手術という印象がある。いつ頃から行われるようになったのだろうか。
福澤氏:文献でよく紹介される初期の報告は1984年です。米国形成外科学会の学術誌である『Plastic and Reconstructive Surgery』に掲載されています。その後しばらくは手術件数がそれほど増えませんでした。大きく増えるようになったのは2000年代以降です。
──なぜ2000年代以降に手術が増えた?
福澤氏:インターネットの影響があったと考えています。
婦人科形成は、友達同士でもなかなか相談しにくい分野ですよね。以前は、自分の小陰唇が大きいのではないかと思っても、それが普通なのか、手術で改善できるのかを知る機会が少なかったと思います。
インターネットが普及すると、そうした悩みを自分で調べられるようになりました。小陰唇縮小術という手術があることも知られるようになり、希望する人が増えてきたのだと思います。
2010年代以降は、世界的にも手術件数が大きく増えた美容外科手術の一つといわれています。
相談する人が突然増えたというよりも、もともと悩んでいた人が、手術という選択肢を知るようになったことが大きいのではないかと思います。
──手術が広がる中で、技術も進歩してきた?
福澤氏:私は日本で多くの手術を経験してきたので、海外ではどのような方法で行われているのかにも関心がありました。
韓国では、実際、いくつかの医療機関を受診してみたことがあります。3カ所ほど訪ねました。
その中で感じたのは、術後の傷の管理方法についての考え方が違うということです。
──具体的には、どのような違いが?
福澤氏:例えば、日本や米国では、通常の傷の管理について、消毒を頻繁に行うよりも洗浄を基本にすることがあります。
私が韓国で訪ねた施設では、術後に洗面器に消毒液を入れて、患部を1日30分ほど浸すように説明されました。旅行中なので難しいと伝えたところ、洗面器を買うように言われたんです。私が知っている傷の管理方法とは違っていたので、印象に残っています。
韓国だけでなく、米国の形成外科学会や美容外科学会でも、海外の先生方がどのような手術をしているのか見てきました。学会の婦人科形成のセッションは人気があります。立ち見が出ることもあります。
私が見た海外の手術では、日本で使うものより太い糸を使っていたり、皮膚の表面を縫合していたりします。日本では、細い糸を使って丁寧に縫合することが多いです。傷跡をできるだけ目立たせないように、細かな工夫が積み重ねられてきたのだと思います。
──傷跡を目立たせないための工夫とは?
福澤氏:少し専門的な話になりますが、通常の手術では、皮膚の表面を糸で縫合します。
抜糸する場合もありますし、体内で分解・吸収される糸を使って、抜糸を行わない場合もあります。ただ、その間に糸が皮膚に食い込んで、跡が残ることがあるんです。これを「スティッチマーク」と呼びます。
婦人科形成でも、以前はこうした糸の食い込み跡が問題になることがありました。
そこで、皮膚の表面に糸を出さず、内側で縫合する方法が使われています。溶ける糸を組織の内部にかけて縫う、埋没縫合という方法です。
皮膚の表面に糸の食い込み跡が残りにくくなり、傷跡も滑らかに仕上がりやすくなります。また、抜糸の負担や、糸が食い込むことによる痛みも軽減できます。
私の知る範囲では、日本ではこうした縫合方法が発展してきたと思います。
背景には、欧米人と日本人などのアジア人では、傷跡の残り方に違いがあることも関係しているのではないかと考えていました。
もちろん海外にも優れた先生方はいらっしゃいますし、私が見てきた範囲での印象です。
──技術の違いには、医師が経験する症例数も関係している?
福澤氏:私は前職で年間300人ほど手術をしていたことがあります。米国の学会でその話をすると、現地の先生方に驚かれました。
日本はある程度人口が多く、国土もそれほど広くありません。評判のよい医師がいれば、全国から患者さんが集まります。そのため、特定の医師に症例が集中して、経験を積み重ねやすい面があると思います。
一方、米国は国土が広く、州ごとに制度も違いますから、一人の医師に症例が集中しにくいのではないかと感じています。
同じ手術を何度も経験する中で、どうすれば傷跡が目立ちにくくなるか、どうすれば合併症を減らせるかを考えるようになります。
- 症例経験の重要性→同じ手術を数多く経験することで、傷跡を目立たせず、合併症を減らすための工夫が蓄積される。
- 学会活動の広がり→婦人科形成の研究会が2026年10月に学会へ移行。美容外科医や産婦人科医が技術や経験を共有。
- 医師教育と臨床研究→技術指導セミナーや術後経過のデータ収集を通じて、手術の安全性や仕上がりの改善を目指す。
──個々の医師が経験を積むことに加えて、技術を共有する動きも広がっている。
福澤氏:婦人科形成には、研究会があります。
婦人科形成をきちんと学ぼうという組織で、ルーチェクリニック(東京都中央区)の佐野仁美先生が理事長を務めています。私も理事として参加しています。
研究会として活動してきましたが、10月に学会へ移行することになりました。
十分に勉強しないまま手術を行って、よくない結果になってしまう例もあります。そういう症例を見ると、きちんと学ぶ場所が必要だと思います。
研究会が立ち上がった背景の一つには、そうした問題意識があります。手術の技術を学び、経験を共有することには大きな意義があると思います。
──婦人科形成というと美容外科医が中心という印象があるが、産婦人科医も参加している。
福澤氏:産婦人科の先生にも、婦人科形成を学びたいという方がいます。
外陰部の形や大きさが気になって、婦人科を受診する女性もいます。ただ、病気ではない場合には、保険診療の対象にならないことがあります。
以前は「病気ではありません」と説明して終わっていた相談についても、婦人科形成という選択肢があることを知り、勉強したいと考える先生がいるんです。悩んでいる方に、どのような選択肢があるのかを伝えるという意味でも、学ぶ意義はあると思います。
──自身も医師向けの技術指導セミナーを行う。
福澤氏:年に4回ほど、医師向けに婦人科形成の技術指導セミナーを行っています。これまでに蓄積してきた症例や、手術後の経過についてのデータなどもまとめています。
婦人科形成は、まだ十分にデータが集まっていない部分もあります。ですから、単に手術件数を増やすのではなく、結果を確認して、必要に応じて改善していくことが大切だと思います。
──手術方法についても、研究を進めている。
福澤氏:手術をする上で、必ず守るべきルールをいくつか決めています。
どうすれば失敗を減らせるのかを、臨床研究でも検討しています。大学病院の倫理審査を受けて研究を進めています。
婦人科形成は、手術を受けた方に喜んでいただくことの多い手術だと思っています。
経験を積むこと、技術を学ぶこと、そして実際の結果をデータとして確認することを続けることで、よりよい医療につなげていきたいと考えています。(終わり)

スワンクリニック銀座院長の福澤見菜子氏。婦人科形成を専門とし、小陰唇縮小術などを手掛ける。(写真:編集部)
プロフィール
福澤見菜子(ふくざわ・みなこ)氏
スワンクリニック銀座院長。形成外科専門医、医学博士。2006年に慶應義塾大学医学部卒業。2008年に東京大学形成外科に入局し、関連病院で形成外科診療に従事。2012年に大塚美容形成外科千葉院院長、2017年に湘南美容クリニック松戸院院長、2019年に同赤坂見附院院長を歴任。2020年に医学博士を取得。婦人科形成手術、顔のアンチエイジング治療を専門とし、小陰唇縮小術や糸リフトなどを手掛ける。日本美容外科学会(JSAPS)および日本美容外科学会(JSAS)の正会員。日本形成外科学会、日本美容外科学会、日本抗加齢医学会などで婦人科形成や美容医療に関する研究発表・講演を行い、医師向けの技術指導にも携わる。2018年には米国形成外科学会(ASPS)の年次総会でOutstanding Presentation、Best Abstractを受賞。婦人科形成や美容医療に関する医学雑誌への寄稿も行っている。
