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米国で未承認の肥満治療薬「レタトルチド」をうたう製品が流通 副作用を疑う症状の報告も多数 SNS約15万件をAI分析

カレンダー2026.10.29 フォルダー 海外
警告。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

警告。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 米国で、まだ承認されていない次世代の肥満治療薬「レタトルチド」をうたう製品が販売され、問題になっている。 米国では、美容医療施設であるメドスパなども販売に関与していると指摘されている。

 使用したとする人々からは、食欲増進や疲労、不眠など、副作用の可能性がある症状も多数報告されていた。

 米ペンシルベニア大学などの研究グループがSNSの投稿約15万件をAIで分析し、2026年10月14日、医学誌「JAMA Network Open」に研究成果を発表した。

未承認の肥満治療薬が流通、米FDAも警告

米国食品医薬品局(FDA)。(写真/Adobe Stock)

米国食品医薬品局(FDA)。(写真/Adobe Stock)

  • レタトルチド→イーライリリーが開発中の次世代肥満治療薬。3種類のホルモン受容体に作用し、高い体重減少効果が期待されるが、2026年10月時点では世界で未承認。
  • 未承認製品の流通→米国では研究用と称する製品などが一般消費者向けに販売され、FDAが警告。イーライリリーも美容関連施設など6事業者を提訴。
  • SNS投稿をAIで分析→Redditの投稿約15万件を解析。使用を自己申告した1万3589人を特定し、症状などを分類できた7823人の投稿を詳しく調査。

 レタトルチドは、米国の製薬大手イーライリリーが開発中の新しい肥満治療薬だ。GLP-1など3種類のホルモンに対応する受容体に作用し、臨床試験では大幅な体重減少効果が報告されている。

 ただし、2026年10月時点では米国を含め、世界のどの国でも医薬品として承認されていない。

 それにもかかわらず、米国ではレタトルチドを含むと称する製品が消費者向けに販売されている。

 米食品医薬品局(FDA)は、「研究用」「人体への使用不可」などと表示しながら、実際には使用量を案内して一般消費者に販売する事例があるとして警告。こうした製品は品質が確認されておらず、健康被害につながる恐れがあるとしている。

 イーライリリーも2026年8月、未承認のレタトルチド製品を違法に販売しているとして、米国内の美容関連施設や販売業者など6事業者を提訴した。

 こうした問題が広がる中で、研究グループは、製品を使用したとする人々がどのような体調の変化を経験しているのかに注目した。

 研究では、SNSの「Reddit」に2021年5月から2025年12月までに投稿された14万8640件の文章をAIで分析。レタトルチドの使用を自己申告した1万3589人を特定し、そのうち症状などを分類できた7823人の投稿を詳しく調べた。

食欲増進や不眠、心拍数増加などを報告

SNS。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

SNSで情報が流れている。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 主な症状の報告→7823人のうち、食欲増進17.1%、疲労15.2%、吐き気11.6%、不眠6.1%、心拍数増加4.8%などの報告を確認。
  • 臨床試験との違い→これまでの臨床試験では吐き気や下痢などの消化器症状が中心だったが、SNS分析では食欲増進や睡眠、心拍数に関する訴えも確認。
  • 研究の限界→SNS上の自己申告であり、副作用の発生率や薬との因果関係は不明。使用された製品が本物のレタトルチドだったかも確認されていない。

 分析の結果、さまざまな体調の変化が報告されていた。

 症状などを分類できた7823人のうち、食欲増進を報告した人は1336人(17.1%)、疲労は1188人(15.2%)、吐き気は907人(11.6%)だった。不眠も475人(6.1%)、心拍数の増加も374人(4.8%)から報告されていた。

 特に目立ったのは、体重を減らすための薬であるにもかかわらず、食欲が増えたという報告だ。これまでの臨床試験では吐き気や下痢などの消化器症状が中心だったが、今回は食欲や睡眠、心拍数などに関する訴えも確認された。

 ただし、これらはSNS上の自己申告であり、実際の副作用の発生率を示すものではない。使用された製品が本物のレタトルチドだったかも確認できず、症状が薬によって引き起こされたかどうかは分かっていない。

 研究グループは、未承認製品の使用によって生じている可能性のある健康問題を把握するうえで、SNSの分析が役立つと指摘している。

 そもそも、承認前の医薬品をうたう製品が一般消費者向けに販売されていること自体が問題だ。さらに、品質や安全性が確認されていない製品を使用したとする人々から、さまざまな症状が報告されていることにも注意が必要だ。

参考文献

Sehgal NKR, Tronieri JS, Rader B, et al. Self-Reported Adverse Effects Among Social Media Users Taking Nonapproved Retatrutide. JAMA Network Open. 2026;9(10).
https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2026.38929

Penn Engineers Use AI, Reddit to Identify Potential Side Effects of Unapproved New GLP-1(University of Pennsylvania、2026年10月15日)
https://www.engineering.upenn.edu/stories/penn-engineers-use-ai-reddit-to-identify-potential-side-effects-of-unapproved-new-glp-1/

FDA’s Concerns with Unapproved GLP-1 Drugs Used for Weight Loss
https://www.fda.gov/drugs/drug-alerts-and-statements/fdas-concerns-unapproved-glp-1-drugs-used-weight-loss

Lilly calls on online platforms, payment companies and regulators to shut down the illegal retatrutide black market(2026年8月12日)
https://investor.lilly.com/news-releases/news-release-details/lilly-calls-online-platforms-payment-companies-and-regulators

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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