美容医療で「ぼったくり商法」が横行している可能性に注意した方がよさそうだ。2024年3月、国民生活センターが医師の書いたコラムを示して注意喚起している。
クマ取り治療や包茎治療でトラブル発生
- 悪質な広告手口→1万円未満で可能と表示される注射や手術の広告を通じて顧客を集め、無資格のカウンセラーが手術へと迫る。広告で示された価格よりも高額な実際の請求が問題。
- 高額費用と結果→実際には複数の施術が必要であり、その結果として100万円を超える支払いにつながる場合も。治療後の不具合については一時的なものと説明されるが、改善が見られないケースも。
コラムを執筆しているのは、銀座みゆき通り美容外科(東京都中央区)院長の水谷和則氏。自ら被害者に対応することがあり、男性の包茎手術と、男女ともに関係ある目の下のクマ治療を例に取って、ぼったくり商法と考えられる悪質な美容医療の営業の実態を説明している。
いずれも手口は共通している。目の下のクマを治そうと希望する人をテレビやSNSの広告で集める。そうした広告には1万円に満たない価格で注射が可能であると示されていたり、手術費用のローン支払い1回分の価格が示されていたりする。受診すると営業担当の無資格のカウンセラーがたたみかけるようにして手術に踏み切らせる。
価格はもともと広告で見た水準よりも高くなる。広告で示されていたのは、クマで切除する脂肪1つ分で、例えば、6つ取る必要があると説明して、6倍の施術費用を請求するという内容になる。施術を希望して受診した人は、高額の施術費用に難色を示すが、カウンセラーは放置すると問題だとけしかける。
結局、断り切れずに契約して施術を受けても、術後やアフターケアの問題が起こる可能性がある。手術を受けた後に、医師は説明せずに去り、手術の結果についても目の下のクマが思うように消えていないこともある。それどころかクマが一層目立ってしまうこともある。それに対して、クリニックは時間が経つと収まると説明する。その後、腫れが引いても改善せず、クリニックは別の注射薬をしようと勧めて、20万円を支払う羽目になる。その後、そのような追加の施術がかさみ、最終的には100万円を超える支払いが発生する。
包茎手術も内容は似通っており、低価格の施術料金で人を集め、受診すると施術内容が変わり、かかる費用もそれにともなって増えるというものだ。
水谷氏は、次の通り注意を促している。
- 無資格者が症状を説明して勧誘するのは医師法(17条、20条)に違反している
- 医療に絶対はなく、リスクを一切伝えずに必ず良くなると説明するクリニックを信じない
- ウェブサイトを含む広告に提示された美容医療の内容や費用と、実際に提示された内容や費用に大きな差がある場合、ぼったくりの可能性がある
- 初診の当日に契約や手術を迫るクリニックは避ける。しつこく迫られた場合は、家族や友人に助けを求める。
厚生労働省はインフォームド・コンセントの指針示す
- 厚生労働省の通知→3月に都道府県知事へインフォームド・コンセントの取り扱いについて通知。施術内容の適切な説明や提供すべき情報の基本を示す。
- ガイドラインと違反事項→品位を損ねる情報提供や脅しまがいの説明、即日施術の制限などが指摘されており、これらの行為はガイドライン違反とされる。
- 美容医療のノルマ問題→スタッフに課せられたノルマを達成するために無理な施術が行われることが指摘されており、美容面での不適切な施術が増加している可能性。
ヒフコNEWSでは、修正治療を重ねることで、高額な費用を稼ぐクリニックが増えていることを伝えてい国民生活センター者庁が注意喚起するほどに、こうした問題は幅広く起きている可能性がある。
厚生労働省はこの3月に、医療機関に対してインフォームド・コンセントを取るときの注意点を、都道府県知事などに通知している。この中には、施術内容の説明方法や、提供すべき情報についての基本を示している。
この中では、診療情報を提供するときには、「品位を損ねる、またはその恐れがある情報および方法を用いて説明してはならない」と指摘している。無理に治療を迫ったり、脅しまがいの説明で治療を受けざるを得なくしたりするのはガイドライン違反となる。
また受診したその日のうちに施術するのもNGとなる。医学上、即日施術の必要性が認められない場合、実施を慎むべきと強調した。
美容医療では、スタッフにノルマが課せられることも指摘されている。そうしたノルマを達成するために無理な施術が実施されるケースがあると考えて良いだろう。美容面での改善が得られなければなおさら問題になる。ぼったくり商法には気を付けることが重要だ。
【訂正】(2024/4/18) ・本文中厚生労働省が通知を出した年を一部2023年3月と記載していましたが、正しくは2024年3月です。お詫びして訂正します。
・本文中消費者庁と記載していましたが、正しくは国民生活センターです。お詫びして訂正します。(2024/5/10)