日本再生医療学会は2024年5月20日、医療機関が運営する情報提供サイトで、「厚生労働省の承認を正式に得て再生医療を提供している」などと示されているケースがあることについて、あたかも厚生労働省が承認しているような表記をすることは法律違反であると注意を促す声明を発表した。
安確法に基づく再生医療は承認を受けていない
- 審査の仕組み→ 再生医療の計画は、国以外の「認定再生医療等委員会」などが審査する。
- 日本再生医療学会の指摘→ 現在の安確法では再生医療は「届出」を経て実施されるもので、国の「承認」を受けていないことを指摘。
- 注意点→ 医療機関は「届出」をしただけであり、「承認」を受けているわけではないことに注意。
再生医療は、一般的な医薬品とは別のルールによっても規制されている。14年に再生医療を規制する「案確法」が施行されて、国内では製造と販売の承認を受ける前でも、研究目的や自由診療で再生医療が行われることができるようになっている。
※「薬機法」は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、「安確法」は「再生医療等の安全性等確保に関する法律」のそれぞれ略称である。
このルールの場合、国以外が運営する「認定再生医療等委員会」などの病院やクリニックなどの設置する組織が、再生医療の計画を審査する仕組みになっている。
再生医療を実施する施設は、この審査を受けた後に、厚生労働大臣に計画を提出する必要がある。
今回、日本再生医療学会は、「現在の安確法では、再生医療等技術は厚生労働省への「届出」を経て実施されるものであり、行政庁による許可、認可、免許といった『承認』のような判断表示が行われるものではありません。このような誤解を招く表記は、法律に違反するだけでなく、患者・市民の皆様に対して不正確な情報を提供することになります」と問題視している。
医療機関はあくまで「届出」をしただけであって、国のお墨付きともいえる「承認」を受けているわけではないところは注意するとよいだろう。
クリニックの運営姿勢を疑う根拠に
- 再生医療の広告→ 再生医療は安確法に基づいて行われるが、薬機法に基づいて承認されているわけではないため、広告での記載に注意が必要。
- 違法な広告→ 「厚生労働省承認」などの違法な記載をしているクリニックは、その運営姿勢を疑うべき。
ヒフコNEWSで医療広告ガイドラインについて紹介してきたが、今回の日本再生医療学会が指摘するような「厚生労働省承認」の表示は法律に違反しており、「虚偽・誇大な広告等」以前の問題といえる。
また、日本では提供される医療が承認されているか否かについては一層厳しくなっている。というのも、医療広告ガイドラインは24年3月に一部改正されて、未承認の医薬品を使う場合には広告に明記することが求められるようになった。安確法に基づいて行われる再生医療は別のルールに従っているとはいえ、薬機法に基づいて承認されているわけではなく、医療機関も承認されているかどうかに従来以上に注意する必要があるだろう。
広告で違法な「厚生労働省承認」のような記載をしているクリニックは、その運営の姿勢を疑ってかかることもできるだろう。利用する医療機関を選ぶときに、問題のある施設を避けるための着眼点となるかもしれない。美容医療でも安確法に基づく再生医療が一般に行われているが、トラブルも報告されており、広告で問題を起こしていると一層評判を下げることになりかねない。ルールに従ったホームページでの情報提供が求められている。