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米国のメドスパ事情、非外科的治療が人気になる一方で医師不在のリスクなども、トラブルメーカーの側面に悪評も広がる、米国形成外科学会が注意点を解説

カレンダー2024.7.11 フォルダー 海外
メドスパの人気が高まる。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

メドスパの人気が高まる。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 「メディカルスパ」や「メドスパ」と呼ばれる非外科治療を専門に行う美容医療施設が米国で人気が高まっている。一方で、トラブルの場としても注目されており、気を付ける必要がある。

 米国形成外科学会(ASPS)が2024年6月、メドスパを選ぶ際の注意点を解説した。

管理する医師の資格を要チェック

美容医療を受ける場として広がる。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

美容医療を受ける場として広がる。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 ヒフコNEWSで何度も伝えているように、美容医療の施術の中でもフィラー注射やボツリヌス療法など非外科的治療の人気が高まっている。23年は、ボツリヌス療法が9%増、ヒアルロン酸フィラー治療が8%増、レーザー脱毛を含む皮膚治療が6%増などといずれも伸びていた。

 このような非外科的治療は、大がかりな手術を必要としないことから広く受け入れられている。一方、米国ではメドスパの利用が伸びているという。米国形成外科学会では、「メドスパとは非外科的治療の専門施設」と説明する。

 その上で、メドスパを選ぶ際に最も重要視するポイントとして施設の管理をする医師の資格を挙げる。なぜなら、メドスパを運営する医師は、必ずしも美容医療に密接な関連のある資格を持つ医師でなくとも運営できるためだ。そのため学会では、美容医療に関連の深い形成外科、皮膚科、頭頸部外科の専門性を持った医師が管理している施設を選ぶことを勧めている。それらの専門医は、美容医療の施術に長けているからだ。

 さらに、その管理者がメドスパの現場に常駐しているかも重要になる。特に緊急の場合に正しい対処を取れることが重要であると学会は指摘する。非外科的治療でも、深刻な合併症が起こる可能性があると知っておくのは欠かせない。その上で学会では、施術者の資格や経験、ビフォーアフターの写真を確認したり、施術者が信頼できるかを考えたりする必要があるという。

 学会では、施術に掛かる費用が安いところは施術の質も高くはない可能性にも言及している。

トラブルメーカーとしての悪評に注目

トラブルが相次いで報告されている。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

トラブルが相次いで報告されている。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 裏を返せば、メドスパは、美容医療の専門性を持たない医師が開設しているケースも珍しくないとされる。また、管理者の医師が普段現場にいないこともある。施術スタッフが十分な技術を持っていない可能性もある。

 結果としてメドスパで健康被害が報告されるようになり、トラブルメーカーとして注目されるようになっている。

 24年4月にはメドスパで施術を受けた人たちの間でHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染拡大が明らかになった。これは、血液を使うヴァンパイア・フェイシャルによりウイルスが広がったと考えられた。さらに同じ4月には、ボツリヌス療法の偽造品が医療機関以外の施設で使われ、健康被害が起きていたことが明らかになった。こちらもメドスパが施術の場であった可能性がある。

 メドスパは非外科的治療が行われる場として紹介したが、6月には米国フロリダ州のメドスパで脂肪吸引や豊胸術などの外科的手術が行われて健康被害を引き起こしたケースも報告された。このケースでは施術者が無免許で、警察が摘発に踏み切った。

 メドスパはもともと利用者にとって便利な場所として生まれたと見られるが、残念ながら杜撰な管理によってレベルの低い美容医療施設に成り下がっている状況もが垣間見られる。日本でも非外科的治療だけを行う施設が増え、中にはメディカルスパを名乗るところもあるが、米国で問題が多発するようだと、今後はその名前のためにイメージダウンにつながるかもしれない。

 先に書いたとおり、非外科的治療も外科的治療と同様にトラブルが起きた場合、重大な健康被害につながることがあり、施術を受ける場所を選ぶ際には慎重に検討することが欠かせない。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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