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米国の無認可スパの利用者でヴァンパイア・フェイシャルによるHIV感染が広がる、少なくとも3人の感染が判明、米国疾病対策センターが警鐘

カレンダー2024.4.29 フォルダー 海外
針を通してHIV感染が広がった可能性がある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

針を通してHIV感染が広がった可能性がある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 2024年4月24日、米国疾病対策センター(CDC)は、米国南西部ニューメキシコ州にある無認可スパで行われた「ヴァンパイア・フェイシャル」により、施術を受けた人の間でHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染が広がったことを発表した。調査では、施設の衛生状態の問題も明らかになっている。

3人の感染が確認

HIV感染者が判明。(出典/CDC)

HIV感染者が判明。(出典/CDC)

  • ヴァンパイア・フェイシャル→PRP(多血小板血漿)とマイクロニードルを使用した施術。自己の血液から得た成長因子豊富な血漿を肌に注入し、同時にマイクロニードルで肌に微細な穴を開けてコラーゲン生成を促進。
  • リスク→2018年、無認可スパでのヴァンパイア・フェイシャル施術後にHIV感染が疑われる事例が報告される。使用された針が感染原因と考えられる。
  • 影響→感染の疑いがあった59人のうち、最終的に3人の女性がスパにおいて感染した可能性があると確認された。
  • 継続調査と対策→CDCによる無料検査の実施を通じて、さらなる感染者の特定が進行中。

 ヒフコNEWSでも紹介している通り、ヴァンパイア・フェイシャルは、PRP(多血小板血漿)とマイクロニードルを組み合わせた施術。PRPは、自分自身の血液を遠心分離器などで血小板が豊富な血漿とその他の血液成分に分け、肌の再生を促す成長因子を含む血漿を肌に注射する。一方で、マイクロニードルは、肌に微細な穴を開けてコラーゲン生成を促す。この治療では、微小な穴からPRPの吸収も促される。ヴァンパイアの名前の通り、マイクロニードルで顔の肌表面に微小な穴を開けると、顔の表面ににじみ出し、顔が血で真っ赤になる。

 CDCによると、2018年夏にHIV感染が疑われる女性の報告を受け、この女性には薬物使用やリスクの高い性的接触がなかった。調査により、無認可で営業を続けていたスパ(2018年に閉鎖済み)で施術を受けた際、使われた針が原因でHIV感染した可能性があると考えられた。

 さらなる調査の結果、感染者を出したスパを利用したことがあり感染の可能性のある59人が特定された。この中にはヴァンパイア・フェイシャルの施術を受けた39人と、ボツリヌス療法などの他の施術を受けた20人が含まれていた。

 結局、4人の女性と、そのうちの一人の性的パートナーである1人の男性のHIV感染が判明した。感染時期を詳しく調べた結果、性的パートナー同士の2人は、スパ利用前に感染していた可能性が高まり、残りの3人がスパの施術を通して感染したと考えられた。感染したウイルスの分析から共通の感染源であることも確認された。

 CDCなどは引き続きスパ利用者を対象とした無料検査を続けており、新たな感染者が出てくる可能性もある。

見当たらない「オートクレーブ」

設備での感染症予防への意識の低さが確認された。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

設備での感染症予防への意識の低さが確認された。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 衛生状態の問題→検査チームがスパで確認した遠心分離器、加熱用機器、ラベル無しの血液試験管。医療器材の適切な滅菌設備も欠如。
  • メディカルスパの特性→医療処置とリラクゼーションサービスを組み合わせた施設。美容施術にボツリヌス療法やフィラー治療を含む美容施術も行われる。今回は無認可が問題を起こした。
  • 国際的な問題→日本国内でも外国籍の人々による違法な美容施術が警察に摘発されるケースがあり、感染症を広げるトラブルの危険性も心配される。

 調査チームによるスパへの立ち入り検査では、台所のような場所に、遠心分離器や加熱用の機器、ラベルが貼られていない血液の入った試験管が確認された。さらに、食品と一緒に血液を入れる試験管や注射剤などが冷蔵庫に保管されているのも見つかった。医療器材は通常、高温高圧で消毒されるべきであるものの、施設内にはそのための高温高圧滅菌器(オートクレーブ)がなかった。機械類は消毒液で表面が拭き取られる程度の対応しかされていなかった。

 今回、問題になったのは「スパ」と呼ばれている施設で、「クリニック」とは異なっている。これはヒフコNEWSで紹介したが、海外で台頭しているメディカルスパの形態を取っていたものである可能性がある。メディカルスパとは、医療処置と、いわゆるスパで行われるリラクゼーションサービスを組み合わせて提供するもの。日本で一般的なスパとは異なり、ボツリヌス療法やフィラー治療などの美容施術も行われる。ヒスパニック系の人々が多く住む地域で施設は営業されており、利用者の多くもスペイン語を話す人たちだったという。

 米国では最近、偽造ボツリヌス注射による健康被害が報告されていたが、それも医療機関以外で施術が行われていたことが明らかになっている。無認可の脱法施設が増えている可能性があり、海外での美容関連の施術では注意が必要だろう。

 日本国内でも、医療機関以外で外国籍の人たちによって美容施術が違法に行われ警察に摘発する事例が起きている。このようなケースでは、フィラー治療を中心に手術を必要としない非外科的治療が勝手に行われている。感染対策が不十分である可能性は高く、米国で起きたHIV感染のような事例が日本で起きる可能性もある。

参考文献

Investigation of Presumptive HIV Transmission Associated with Receipt of Platelet-Rich Plasma Microneedling Facials at a Spa Among Former Spa Clients — New Mexico, 2018–2023
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/73/wr/mm7316a3.htm

PRP(多血小板血漿)関連施術ヴァンパイア・フェイシャル Vol.1、肌の質感や色調を改善、米国美容協会が解説するメリット
https://biyouhifuko.com/news/column/4349/

PRP(多血小板血漿)関連施術ヴァンパイア・フェイシャル Vol.2、マイクロニードルと組み合わせて効果を高める、米国美容協会が解説する施術のプロセス
https://biyouhifuko.com/news/column/4456/

PRP(多血小板血漿)関連施術ヴァンパイア・フェイシャル Vol.3、赤みや腫れ、あざなど問題になることも、米国美容協会が説明する向いている人とリスク
https://biyouhifuko.com/news/column/4610/

PRP(多血小板血漿)関連施術ヴァンパイア・フェイシャル Vol.4、ほかの肌若返り法と比べてどう違う?米国美容協会が説明する
https://biyouhifuko.com/news/column/4703/

「メディカルスパ」のトレンド、若返り治療+リラクゼーション、海外で拡大
https://biyouhifuko.com/news/world/3588/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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