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契約後即日施術のキャンセル料トラブル、解約料100%取り下げで和解、厚生労働省も注意喚起する典型的な問題事例、国民生活センターが経緯を公表

カレンダー2024.7.12 フォルダー 国内
解約のトラブルに巻き込まれるケースは珍しくない。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

解約のトラブルに巻き込まれるケースは珍しくない。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 美容医療ではいったん施術を希望したものの、キャンセルをするケースもあり、この場合にトラブルに至ることがある。

 厚生労働省などが「契約後即日施術」は控えるよう求めているが、キャンセルを申し出たときに解約料100%を求められるケースが問題になっている。

 国民生活センターは2024年7月に、このような契約後即日施術を受け入れた後の解約料をめぐるトラブルの事例を公表した。

カウンセリングで即日施術を勧められ断り切れず

厚生労働省は、必要性が低い場合には契約後即日施術を控えるよう求めている。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

厚生労働省は、必要性が低い場合には契約後即日施術を控えるよう求めている。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 国民生活センター→ 紛争解決委員会を通して消費者のトラブル解決に取り組んでいる
  • 公開されるケース→ 重要なケースは法律に基づいて公表される
  • 事例→ 契約後即日施術のトラブルに巻き込まれたケース
  • Aさんの行動1→ 23年8月末にインターネットで見つけたクリニックに興味を持ち、カウンセリングを予約
  • Aさんの行動2→ 鼻を高くする手術を約10万円で受けられると示されていた
  • Aさんの行動3→ カウンセリングを受けた上で判断すると伝えた
  • Aさんの行動4→ 来院時に施術費用や割引について説明を受け、医療ローンを組んで契約
  • Aさんの行動5→ 当日施術を受けるかと問われ、受け入れるが、支払い総額約130万円のローンに不安を感じ、施術をキャンセル
  • Aさんの行動6→ 当日のキャンセル料は100%と言われたが、事前にキャンセル料の説明はなかった
  • Aさんの行動7→ 地域の消費生活センターに相談し、契約無効を求めた
  • Aさんの行動8→ クリニックはキャンセル料として契約金額の7割を求め、納得できずに国民生活センターを通じて話し合うことになった

 国民生活センターは、紛争解決委員会を通して消費者のトラブル解決に取り組んでいる。その多くは公開されないが、重要なケースは法律に基づいて公表される。これは、類似したトラブルの解決につながると考えられるためだ。

 今回、同センターが公開したADR(裁判外紛争解決手続)の結果報告の中で、美容整形手術の解約料に関するケースが公表された。これは契約後即日施術のトラブルに巻き込まれた事例だった。

 厚生労働省は、即日施術の必要性が認められないときは実施を控えるよう求めているほか、国民生活センターも、「初診の当日に契約や手術を迫るクリニックは避ける。しつこく迫られた場合は、家族や友人に助けを求める」と助言している。契約後即日施術のトラブルは珍しくはないもので、トラブルに巻き込まれた場合には、公表された事例を参考にするとよいかもしれない。

 同センターによると、事の始まりは、今回解約を希望した人物(以下、Aさん)が23年8月末にインターネットで見つけたクリニックに興味を持ち、カウンセリングを予約したことだった。ホームページには、鼻を高くする手術を約10万円で受けられると示されていた。カウンセリングを予約した際、当日の処置を希望するかと質問されたという。Aさんはカウンセリングを受けた上で判断すると意思を伝えた。

 9月、Aさんは来院して施術後のイメージを見せられるなどし、施術費用や割引について説明を受けた上で、クレジット会社の医療ローンを組んで契約を結ぶことになった。

 このときに「当日施術を受けるか」と問われ、断りづらく、受け入れたが、施術を待っている間にクリニックから医療ローンの総額が約130万円であると知らされ、不安を感じて施術をキャンセルしようとした。

 結果として、「当日のキャンセル料は100%になる」と言われた。契約を結ぶ前にキャンセル料の説明はなかった。

 Aさんは地域の消費生活センターに相談し、キャンセル料の支払いに納得できず、契約を無効にして請求をやめるよう求めることにした。

 クリニックはAさんと話し合ったが、キャンセル料として契約総額の7割を求めるという内容になり、Aさんは納得できずに国民生活センターを入れて話し合うことになった。

広告で示されたのはローン支払い1回分

高額なキャンセル料を求められた場合には公的な窓口に相談する手がある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

高額なキャンセル料を求められた場合には公的な窓口に相談する手がある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 国民生活センターが関わることで、クリニックはキャンセル料の請求を取り下げることとしたが、和解に際して守秘義務条項を含めることを希望した。クレジット会社も協力する意思を示した。

 Aさんはキャンセル料の請求の取り下げと、和解書には守秘義務条項が含まれることを受け入れ、Aさんとクリニックの双方が納得する形で解決に至った。

 先に示したように、今回の件は、厚労省や国民生活センターが繰り返し注意喚起している契約後即日施術のトラブルだ。もともとウェブサイトで示された約10万円は医療ローンの支払い1回分の金額だったと見られるが、実際の総額は約130万円と高額だった。同様なトラブルに巻き込まれないよう、契約では慎重に判断が欠かせない。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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