ヒフコNEWS 美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイト

当日の高額コース契約&施術、キャンセル時の返金トラブル、国民生活センターが経緯を明らかに

カレンダー2023.10.6 フォルダー 国内

ポイント

  • 国民生活センターは、重要な消費者のトラブル事例を公表。2件は美容医療関連だった
  • 目の下のたるみの施術をめぐるキャンセル時に、クリニックから全額を請求されトラブルとなった
  • 美容医療におけるカウンセリング当日の契約と施術は慎重であるべきであることがうかがわれる
美容医療をめぐるトラブル。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

美容医療をめぐるトラブル。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 美容医療の返金問題が起きて和解に向けた交渉が行われたが、最終的に決裂に至った──。そのプロセスが公表された。2023年10月4日、国民生活センターが重要性が高いものとして公開した。

美容医療トラブルが2件公表

美容医療のトラブル2件が公表。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

美容医療のトラブル2件が公表。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 国民生活センターでは、紛争解決委員会を通して消費者のトラブルの解決に取り組んでいる。それらの多くは公開されないが、重要なケースは法律に基づいて公表されている。その理由は、似たトラブルの解決につながると考えられるためだ。

 今回、同センターは公開したADR(裁判外紛争解決手続)の結果を報告する中で、重要なトラブル解決の事例を24件報告。そのうち2つが美容関連の施術によるものだった。今回は「美容手術費の返金に関する紛争」について紹介する。

※ADRとは、従来の訴訟手続とは異なる観点から紛争に対処するための手法。関係者全員が納得できる柔軟な紛争解決を目指す。今回の場合は、国民生活センターが、あるエステでの返金トラブルについて当事者間の話し合いによる解決に取り組んだもの。

 ヒフコNEWSでも前回の結果公表の際に、エステの返金についてのトラブルについて記事で伝えている。返金のトラブルはかねて指摘されているもので、身近で重要な事例と見なされたようだ。

目の下のたるみの手術キャンセルの返金トラブル

返金トラブル。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

返金トラブル。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 公表されたケースは、目の下のたるみの手術についての返金トラブルだった。全体の流れは次の通りだ。

利用者がウェブサイトでクリニック発見 → 当日にカウンセリング予約 → 当日に一番高額なコース契約 & 前金支払 & ローン組む →当日施術へ→ モニター用写真撮影でトラブル → キャンセル申し出 → キャンセル拒否 → 国民生活センター紛争解決委員会仲介 → 利用者とクリニック側の主張 が食い違う → クレジット会社との対応を確認 → 和解不成立 & 手続き終了

 22年11月に、ウェブサイトでクリニックを見つけて、カウンセリングの連絡。連絡した当日の午後4時に予約が取れてカウンセリングを予約。

 「カウンセラーから一番高額なコースを勧められ、モニター割引等 6 万 5000 円の割引が受けられ ると言われ、37 万 4000 円の契約をすることとした(以下「本件契約」という。)。前金として 4 万 3000 円を支払い、残金は相手方クレジット会社で医療ローンを組んだ」

 当日の施術を行う内容だったが、マスクを着用して撮影すると聞いていたモニター用の写真撮影の際に、マスクを下げるように求められ、施術を希望したものの、キャンセルを申し出た。ここからトラブルが始まった。

 施術の取り消しを求める利用者と、キャンセルは受け付けないと拒否するクリニックの間で、返金トラブルは解決せず、国民生活センター紛争解決委員会が仲介に乗り出すことになった。

 クリニック側は利用者が署名した同意書に「全顔」の撮影と記述しており、同意書の説明もしたため非がないと主張した。

 委員会の仲介委員は、即日施術の必要性があったのかを指摘。クリニック側に返金の余地がないかを確認したが、クリニック側は施術の準備を始めていたことなどからキャンセル料金として契約金額全額を請求する方針であると回答。

 仲介委員は、クレジット会社に対して、クレジット申込書に「二重・目元」と記載され、予定の施術内容と異なる点や、当初の施術日は11月下旬と記載されている点を指摘。クレジット会社は、電話確認の段階で消費者から申出がなければ処理を進めると回答した。

 結局、返金額の減額などは考えられないというクリニックの考えは変わらず、和解は成立しないとして、手続きは終了になった。

 美容医療のトラブルをめぐっては、今回のようにカウンセリング当日の契約および施術が問題になる可能性がある。慎重に検討して施術を決めるのは賢明だろう。美容医療は、1カ月を超えて行われる場合には、特定継続的役務提供契約に該当するので契約書面を受け取ってから8日間は無条件で契約を解除できる「クーリングオフ」が適用される。一方で、当日施術を受けるようなケースでは適用が難しいと考えられる点も注意する必要がある。

参考文献

国民生活センターADRの実施状況と結果概要について(令和5年度第2回)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20231004_1.html

国民生活センターADR の実施状況と結果概要について(令和 5 年度第 2 回)
https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20231004_1.pdf

エステ返金トラブル解決の実態とは?国民生活センターが公開した和解プロセス
https://biyouhifuko.com/news/japan/2296/

「エステティックサービスの解約・返金相談急増 その施術本当に必要?」
https://biyouhifuko.com/news/japan/304/

成人年齢18歳に、10代の脱毛エステや医療のトラブル相談が急増
https://biyouhifuko.com/news/japan/1696/

なぜ大阪のエステ脱毛は書類送検に?女性のやけど事件の背景を大阪府警に聞いた
https://biyouhifuko.com/news/japan/2131/

あなたの美容医療、大丈夫?大手弁護士事務所のベリーベスト法律事務所が被害情報収集を開始
https://biyouhifuko.com/news/japan/2220/

ヒフコNEWSは、国内外の美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイトです。美容医療に関連するニュースを中立的な立場から提供しています。それらのニュースにはポジティブな話題もネガティブな話題もありますが、それらは必ずしも美容医療分野全体を反映しているわけではありません。当サイトの目標は、豊富な情報を提供し、個人が美容医療に関して適切な判断を下せるように支援することです。また、当サイトが美容医療の利用を勧めることはありません。

Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

お問い合わせ

下記よりお気軽にお問い合わせ・ご相談ください。