仏ロレアルグループは、2024年8月5日、皮膚科分野の幅広い製品を有するスイス・ガルデルマの10%の株式を取得することを発表した。
美容医療分野に関連したブランドを有するガルデルマが、国際展開する大手化粧品グループとの関係を強めることで、今後、美容医療分野においても研究開発や販売などの力を強めることが予測される。
ガルデルマは1981年に食品大手のネスレとロレアルが共同で設立した会社。10年前の2014年にロレアルがガルデルマの株式を手放していたが時を経て買い戻す形となる。今回の株式取得は化粧品と皮膚科の領域が距離を縮めるトレンドを象徴する。
皮膚科と化粧品の知識、技術が融合
今回、ロレアルグループは、スイスなどの投資会社が保有する株式を取得することを発表した。取得金額は非公開としている。今後、ガルデルマの持つ皮膚科分野の専門性に、ロレアルの持つ化粧品と肌の知識や技術が融合することになる。
ガルデルマは、ヒアルロン酸注入製剤の「レスチレン」、ボツリヌス療法の各種製剤、皮膚を刺激するバイオスティミュレーターなどの、製品群を保有している。これらは日本でも使用されている製品だ。
ロレアルグループでは、この7月に日本ロレアルが国内で国際的に知名度の高い「スキンシューティカルズ」のブランドを展開することを発表したばかり。今後、ガルデルマとのつながりを強化することで、美容医療への影響力を強める可能性は高い。また、ガルデルマが、国際的な化粧品大手の後ろ盾を得て、存在感を高めることも予想される。
株式の取得を発表したことを受けて、ロレアルグループ最高経営責任者(CEO)であるニコラ・イエロニムス氏は、「戦略的投資とパートナーシップは、ロレアルにとって野心的な一歩。急成長する美容市場での新たな機会を探ることができる」とコメントを発表している。
ドクターズコスメの成長に拍車かかる
美容医療分野では、ドクターズコスメの存在感を一気に高まりを見せている。国内大手である資生堂、コーセー、ポーラ・オルビスホールディングスなどがドクターズコスメを強化する動きを継続的に見せている。矢野経済研究所の推測では、ドクターズコスメ市場は継続的に拡大すると予測されているが、このところ各社の動きが激しく、従来の予想を上回って成長が進む可能性も考えられる。
また、今回のロレアルグループは、美容医療で一般的に使われている製剤の製品群を強化していく方向性を示したが、これらは化粧品を超えるアイテムになる。化粧品企業がこれからは従来医薬品企業が扱っていた製剤を扱うようになる可能性もある。
もっとも日本では製剤の中には国内未承認の物も珍しくない。それらは医師の責任の下で使われている場合がある。未承認の製品によって副作用が起きて後遺症など重大なトラブルが起きたときには国の救済を受けられない。美容医療の製剤が健全に発展していくためには、国の関わり方についても考えていく必要がある。
美容医療を受ける立場からすると、製品が多様になっていく中で、より効果的で安全性の高い製品を慎重に見極める目が問われるといえる。