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首などのたるみ改善する新技術「レヌビオン」、脂肪など圧縮し引き締め、高周波とヘリウムガスで限られた部位を0.5秒だけ加熱、米国形成外科学会が特徴を解説

カレンダー2024.8.15 フォルダー 海外
首などのたるみを取る技術。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

首などのたるみを取る技術。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 米国形成外科学会(ASPS)が2024年8月、「レヌビオン(Renuvion)」という肌のたるみを改善する新しい美容施術について解説した。

 この施術は0.5秒という短い時間だけ、特定の範囲内の皮下脂肪を加熱。広範囲に熱を広げることなく、組織を引き締めるのが特徴だ。ヤケドなどのリスクを抑えることができる。

高周波でヘリウムガスをプラズマに

カニューレからプラズマになったヘリウムガスが出て、それにより限られた部位を85度ほどに加熱する。(写真/アフィックス・メディカル)

カニューレからプラズマになったヘリウムガスが出て、それにより限られた部位を85度ほどに加熱する。(写真/アフィックス・メディカル)

 レヌビオンは、皮膚を引き締め、若返りを実現する新しい技術。この施術は、首やあごの引き締めに特に効果的で、目の下のたるみを引き締めることにも利用可能であるという。

 米国形成外科学会の会員であるスザンヌ・トロット氏は、レヌビオンは高周波とヘリウムガスを組み合わせた「画期的な手法」で組織を引き締めるという。

 レヌビオンのプロセスは、まず局所麻酔を施した上で、小さなカニューレを皮膚の下に挿入することから行う。

※局所麻酔は、施術する部位に対して行う部分的な麻酔を指す。カニューレは細い管。

 カニューレ内部で、高周波エネルギーによってヘリウムガスを加熱し、ヘリウムガスが瞬時にプラズマ状態に変化する。このプラズマが、皮下脂肪を0.5秒間だけ加熱し、脂肪組織や皮膚の下の結合組織を引き締める。

※Renuvionの製造開発をしているアフィックス・メディカル(Apyx Medical)によると、限られた部位を85度程度に加熱する。

 プラズマが放つエネルギーはごく限られた部位にだけ影響するため、皮膚の表面近くまで熱が広がらない。施術後の部位は瞬時に元の温度に戻り、熱が皮膚の表面に吸収されるリスクが低い。このため、他の皮膚に熱を発生させるデバイスと比べるとヤケドなどの意図しない損傷が発生するリスクが低く、より安全であるという。

※トロット氏は、「シュリンクラップ(shrink wrap)」と表現している。これは圧縮し、引き締めることを意味する。中の空気を抜いて圧縮する真空パックのように、皮膚の内部を縮めるような効果があると説明している。

6カ月続くレヌビオンの効果

たるみを改善する美容施術の安全性が問われている。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

たるみを改善する美容施術の安全性が問われている。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 レヌビオンは、男女ともに首のリフトアップ手術まで踏み切るのはためらいのある人にとって、手術の前段階としての美容施術になるという。

 ディーププレーンネックリフトよりもダウンタイムやコストを抑えたい人に適しているという。

※ディーププレーンネックリフトは、首の深い層からリフトアップする手術。

 学会は、レヌビオンは他の手術と組み合わせることで、さらなる効果を発揮するという。例えば、あごの脂肪吸引と組み合わせることで、二重あごの改善が可能で、効果も長期間にわたって維持されるため優れているという。ディーププレーンフェイスリフトと組み合わせることで、手術単独では得られない弾力性の向上を実現できるという。

 トロット氏は、熱を発生させる非外科的な施術を受けたことがない人に特に効果的であるという。施術後、即効性があり、組織の収縮は最大6か月間続くため、長期的な効果が期待できる。

 ただし、新しい技術であるため、安全性や効果については未知な部分も多いと考えるのが賢明だろう。米国形成外科学会は、レヌビオンの使用は、体の解剖を十分に理解している形成外科医によって行われるべきだと強調している。

※アフィックス・メディカルによると、レヌビオンのリスクには、肥厚性瘢痕、稗粒腫(はいりゅうしゅ)/ニキビ、毛細血管拡張症(クモ状静脈)、皮膚の変色および色素沈着、休眠感染の再活性化、感染、あざや出血などがあると説明されている。肥厚性瘢痕は傷跡の盛り上がりで、稗粒腫は顔やまぶた周辺にできる白く硬いできもの。毛細血管拡張症は皮膚の表面に細い血管が目立って見えるもの。休眠感染はヘルペスなど、症状なく存在した感染症が再び活性化すること。

 日本国内では皮膚に熱を加える医療デバイスによるトラブルが多発しており、安全な施術が強く求められている。また、脂肪吸引も事故が繰り返されている現状がある。こうした背景の中で、レヌビオンは安全性に焦点が当たっており、日本でも導入する動きがある。今後、有望な施術として注目される可能性がある。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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