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美容医療は一国に収まらない時代に入ったのか 多国籍クリニック増加の兆し 銀座の韓国発クリニックの開業に足を運んで 欧米などでもクリニック拡大や医師の移動が指摘される

カレンダー2026.5.26 フォルダー連載・コラム
美容クリニックが集まる銀座一丁目。(写真:Adobe Stock)

美容クリニックが集まる銀座一丁目。(写真:Adobe Stock)

 日経平均株価が過去最高値を更新した2026年5月25日。

 東京都中央区、美容クリニックの国内でも指折りの集積地である銀座一丁目で、韓国発のクリニックが新たに開業した。

 韓国ソウルに拠点を置くオガナセル皮膚形成外科の日本での拠点となる銀座院だ。入居するのはやはり美容クリニックが複数入るビルだ。

 韓国ならではの皮膚管理の考え方を日本に導入し、独自の診療を進めていく方針という。

 代表院長には、日本で美容医師として実績を持つ白夏林(ベク・ハリム)氏が就任した。

 こうした韓国のクリニックが日本に進出する動きは過去からあったが、最近も複数の話が聞こえてくる。美容医療ではクリニック、医師、運営会社、資金が国境を越えて動く流れが強まっている可能性がある。

 これは韓国から日本ということばかりではなく、世界的な潮流と言えるかもしれない。

 銀座で韓国発クリニックの開業を見て、そのような美容医療の変化について考えた。

韓国にとって日本は「有望」

美容医療のクリニックが多く入居する江南区のビル。(写真/編集部)

美容医療のクリニックが多く入居する江南区のビル。(写真/編集部)

  • 韓国から日本へ→ 韓国の美容クリニックが、日本市場への進出を強める動きが続いている。
  • 背景に価格競争→ 韓国内では低価格化が進み、収益を確保しにくくなっている。
  • 日本市場に注目→ 日本は施術単価が比較的高く、韓国のブランドや技術を生かせる市場と見られている。

 この2026年に韓国ソウルで複数のクリニックなどを取材した。

 その際にも、韓国の医師が日本で美容医療を提供しようと動いているということについて話を聞いていた。

 個別の計画は表からは見えづらいものの、ウェブで検索すると、韓国でも知られている美容クリニックチェーンが、日本の新宿などに「初めて施設を開設!」といった宣伝文書を複数確認することができる。2026年も大手の一つプムクリニックが進出したというが、そうした動きは続いている。

 ある韓国の医師がそうした動きの背景として指摘していたのは韓国内での価格競争だ。

 韓国では低価格で多数の施術を回す、いわゆる「工場系」と呼ばれるクリニックの存在感が強まっている。それはヒフコNEWSでも伝えたことがあった。

 ここにきて、そうした大量に施術を提供しているクリニックの増加により、施術の低価格化がさらに進んでいるようだ。施術内容にもよるが1回で数千円程度の価格のところもあるように耳にした。

 そうした状況の中で、医師の技術やSNSなどによる宣伝の力があったとしても、収益を確保する難易度が高まっている。

 それに対して、日本でも競争は緩やかではないが、韓国よりはましだという見方がある。美容施術の単価も韓国のような低価格にはなっていない。

 韓国のブランドやノウハウを武器として、日本での美容医療を本格的に展開しようという動きが出ていることは自然な流れになっている。

 こうした流れは、クリニックの進出だけでなく、医師の動きにもつながっている。

 海外の医師が日本で医療行為を行うには、原則として日本の医師免許が必要になる。厚生労働省は二国間協定に基づき、一部の国の医師については特例的に診療を認めているが、対象は英国、米国、フランス、シンガポール、ドイツに限られる。韓国はこの対象には含まれていない。そもそもこれらは患者の対象範囲や診療可能な医療機関が個別に定められる仕組みであり、外国医師が一般の美容クリニックで自由に診療できる制度ではない。

 そのため、韓国の医師が日本で美容医療を行うには、日本の医師国家試験に合格する必要がある。そうした高いハードルはあるものの、韓国国内の競争激化を背景に、日本の医師免許取得を目指す動きも出ている。

日本から海外へ向かう動きも

ロレアルが美容クリニックにも資金供給と報道。(写真/Adobe Stock)

ロレアルが美容クリニックにも資金供給と報道。(写真/Adobe Stock)

  • 日本から海外へ→ 日本の美容医療グループも、タイなど海外市場への展開を進めている。
  • 越境しやすい分野→ 自由診療の美容医療は、資本力やブランドを背景に国境を越えて広がりやすい。
  • 資金も国際化→ クリニックだけでなく、医療機器や製剤にも世界的な資金流入が進んでいる。

 美容医療が越境していく動きは、韓国から日本への一方向でもない。

 日本側から海外へ出る動きとしては、SBCメディカルグループホールディングスの動きが目立っている。

 同グループは、タイのBLEZ ASIAと組み、バンコクのBLEZクリニックに美容皮膚科セクションを新設する取り組みを発表したところだ。発表によると、2026年5月に開設記念レセプションが行われ、サービス開始は同年6月を予定する。シミやくすみなどに対応するピコレーザー治療を中心に美容医療をタイ市場へ広げる構想を打ち出している。まずはタイ在住の日本人駐在員層を主な対象に、日本品質の美容医療サービスを提供し、将来的にはタイ現地顧客やASEAN市場への展開も視野に入れるとしている。

 同グループは2024年9月に米国のNASDAQへ上場し、米国とアジアを中心にグローバル展開を進める。

 美容医療は自由診療であり、保険診療の価格や給付範囲に縛られにくい。そのため、資本力やブランド、運営ノウハウを背景に、国境を越えて展開しやすい側面がある。

 資本力を持ったクリニックが国際的に広がっていく動きが進む。こうした動きは、アジアばかりではない。ヒフコNEWSで伝えているが、オーストラリアのLaser Clinicsが、英国、ニュージーランド、カナダにチェーンを拡大している。フランスのLASEOも、ベルギーに展開。ブラジルのEspaçolaserは、800施設を展開するが、ブラジル外にも施設を広げている。

 一方で、規制に合わせて医師の移動も起きている。ヒフコNEWSの取材では、フランスでは規制の強化を背景に国外へ向かう医師がいる一方、英国では規制が比較的緩いことによる競争の激しさを嫌い、英国外へ移る医師もいるという話が聞かれた。

 資金の出どころにも動きがある。世界最大の化粧品企業であるロレアルは北米と中国の美容クリニックに資金を提供していることを2025年のロイター発のニュースとして報じられている。

 同グループは皮膚科と注入剤分野で存在感を持つガルデルマの株式取得を進める。このほかにも、金融企業などが医療機器や医療製剤企業に資金を供給する動きは複数ある。

 美容医療全体が、もはや一国の中だけで完結する産業ではなくなりつつある。

 韓国発クリニックが日本に拠点を構え、日本のグループが東南アジアに広がり、世界の大手企業や投資家が周辺企業に資金を入れる。医療の安全をどう守り、どのように規制をしていくのかなど、課題も考えられる。

 銀座で見た動きは、美容医療が大航海時代のように、一国ではとどまらず、多国籍化に進んでいることを感じさせる出来事の一つだった。今後、どのように、日本、そして世界が動いていくのかは引き続き注目されそうだ。

参考文献

日経平均終値6万5158円で最高値 原油安が演出する「AI成長物語」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFL250JFTV20C26A5000000/

韓国のクリニック選び、全国展開チェーン「工場系」その落とし穴、安さに惑わされずに満足を得るための見極め方、韓国在住美容インフルエンサーのスアオンニさんに聞く 前編
https://biyouhifuko.com/news/interview/12758/

二国間協定に基づく外国の医師又は歯科医師
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/rinsyo/index_00021.html

世界の美容医療は今どうなっているのか 美容クリニック編 非外科的施術チェーン世界で拡大 世界の美容医療の今を知る Vol.1
https://biyouhifuko.com/news/column/16091/

SBC Medical and BLEZ ASIA Celebrate Opening of New Aesthetic Dermatology Section at BLEZ CLINIC in Bangkok
https://ir.sbc-holdings.com/sbc-medical-and-blez-asia-celebrate-opening-of-new-aesthetic-dermatology-section-at-blez-clinic-in-bangkok/?utm_source=chatgpt.com

L’Oreal takes stakes in Chinese, N.American clinics to understand medical aesthetics market
https://krro.com/2025/02/07/loreal-takes-stakes-in-chinese-n-american-clinics-to-understand-medical-aesthetics-market/

美容医療専門医が存在しないフランス 2026年から医師教育を本格化 「大学間ディプロマ」の仕組みとは? 制度設計者ジャン・ポール・メニンゴー氏に聞く
https://biyouhifuko.com/news/interview/16877/

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ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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