
池田欣生(いけだ・よしお)氏。東京皮膚科・形成外科総院長。フランス・パリで取材。(写真/編集部)
池田欣生(いけだ・よしお)氏
東京皮膚科・形成外科総院長
- 効果の戻りに注目→ 若返り治療後、時間とともに元に戻る現象が老化細胞への関心につながった。
- 若い要素だけでは不十分→ 周囲に老化細胞が多いと、若返り効果が引き戻される可能性があると考えた。
- 顔だけでなく全身へ→ 見た目の老化は皮膚だけでなく、内臓脂肪など全身の状態とも関係すると見ている。
──若返り治療をしても元に戻る現象が、老化細胞への関心につながった。
池田氏: はい。時間が経つと戻る現象に注目しました。70代の方などは特にそうで、注射すると若返りの効果が現れるのに、時間の経過とともに元に戻っていく。若い人ではそのように感じませんが、高齢の方は差が出やすい分、戻りも目立つ。そこが引っかかりました。
──若い細胞の要素を足すだけでは足りない。
池田氏: そうです。若返りにつながる細胞由来の物質を使っても、周りが老化していたら、結局そちらに引っ張られてしまうと考えるようになりました。
もともと見た目から考えていますから、最初は顔について考えました。皮膚は分裂を繰り返している場所ですし、真皮の浅いところは常に生まれ変わっている。そういう場所に老化細胞が多いと予想しました。老化細胞が周囲の分裂を止めているのだとしたら、それをどかせばよいのではないかという発想を持ちました。
──顔を若返らせる可能性を考えた。
池田氏: そうなんですが、首から上だけを考えても、首から下が老化していたら、またそこから影響を受けるとも考えました。顔だけを考えても不十分ではないかと思ったのです。
手の甲や首のように見えやすい場所もありますが、それ以上に、老化に強く関わる発信源の一つが内臓脂肪ではないかと思えました。内臓脂肪が多いというだけで、全身の老化が進む可能性があるのではないかと考えました。
見た目の老化は、皮膚や顔面だけの問題ではなく、脂肪や全身の状態とつながっていると見ています。
もっとも、首から下には多くの種類の細胞があり、老化細胞も一様ではないと考えています。未知の部分が多いです。
断食すると若返ると指摘されることがありますが、一時的に食べ物がなくなると、弱った細胞のほうが先に淘汰される可能性はあると考えます。もっとも安全性を担保した上での話ではありますが、そうした発想から解決できる可能性もあります。
- 予防医療の難しさ→ 日本の保険診療では、病気になる前の老化予防に対応しにくい。
- 早期介入への関心→ 老化細胞や細胞分裂の異常を早く見つけ、先回りして対応する発想が重要。
- 根拠の見極めが必要→ 老化予防はイメージで語られやすく、研究や根拠を慎重に確認する必要がある。
──老化予防はどのように実用化されていく?
池田氏: 日本の保険診療は病気になってから手当てしますが、予防医療をカバーしませんから制度上、扱いづらいです。病気になる前に何かをする、老化に先回りして何かをすることが難しい。
例えば、がんも、病気になる前に対処することは大切ですが、そこは保険の仕組みとは必ずしも合わない。病気としてはっきりしないと動きにくいのです。例えば老化細胞が出している物質や、細胞分裂の異常を早く見たいと思っても、保険医療の中で対応するのは簡単ではありません。
──老化予防の情報は多いが、根拠の見極めが難しい。
池田氏: 老化予防の分野はイメージで売られやすいので、きちんと研究している人のものなのか、どこまで根拠があるのかを見ないといけません。私は簡単には信じないほうがいいと思っていますが、一方で、これまで怪しいと見られていたものの中にも証明されていくものはあるかもしれません。全部を否定するのでもなく、飛びつくのでもなく、調べながら見ていくしかないと思っています。(続く)
プロフィール

池田欣生(いけだ・よしお)氏。東京皮膚科・形成外科総院長。フランス・パリで取材。(写真/編集部)
池田欣生(いけだ・よしお)氏
東京皮膚科・形成外科総院長。大阪医科大学(現大阪医科薬科大学)卒業後、田嶋定男元教授、谷野隆三郎元教授の下で形成外科の診療に従事。2000年に銀座・いけだクリニック(現・東京皮膚科・形成外科)を開設しダウンタイムの少ない手術を追求し、エンジェニードル、美容用チタンピン鑷子(せっし)、Gコグスレッドなどの開発に取り組む。2010年に日本アンチエイジング外科学会、2017年には医療アートメイク学会を設立し、会長を務める。2023年、第111回日本美容外科学会(JSAS)学会長。銀座、品川、日本橋、大阪、香川、上海を拠点に美容医療の普及に取り組んでいる。日本形成外科学会専門医。日本美容外科学会(JSAS)専門医。東海大学病院形成外科非常勤講師。
