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フィラー注入の合併症、ヒアルロン酸とCaHAで何が違うのか、血管閉塞から数カ月後のしこりまで、対処法を欧州研究グループが整理

カレンダー2026.8.12 フォルダー最新研究

 シワや顔のボリューム減少などを改善する目的で広く使われているフィラー注入だが、安全性が比較的高いとされる治療でも、まれに重大な合併症につながる可能性がある。

 フランスやオランダ、ドイツなどの研究者からなる研究グループが2026年、代表的な注入剤であるヒアルロン酸(HA)とカルシウムハイドロキシアパタイト(CaHA)について、これまで報告されてきた合併症と現在の対処法を整理して美容皮膚科学誌で報告した。

直後に起こる内出血などから遅れて現れるしこりまで

横たわる患者のあご周辺に注射を行う美容医療の施術風景。

フィラー注入では、施術直後の腫れや内出血に加え、遅れて現れるしこりや炎症反応が報告されている。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

  • 代表的な注入剤→ヒアルロン酸とCaHAはいずれも顔のボリューム補充やシワ改善に使われ、全体として安全性が比較的高いフィラーとされる。
  • 起こり得る合併症→内出血や腫れ、痛みのほか、血管閉塞、感染、しこり、肉芽腫、遅れて起こる炎症反応などが報告されている。
  • 血管閉塞→フィラーで血流が妨げられると皮膚壊死につながることがあり、まれに視力障害や脳血管障害などの重大な合併症も起こり得る。

 フィラー注入は、切開を伴わずに顔のボリュームを補ったり、しわを改善したりできることから、世界的に広く行われる美容医療の一つとなっている。中でもヒアルロン酸とCaHAは代表的な注入剤だ。

 ヒアルロン酸は体内にも存在する多糖類で、ジェル状に加工したものを注入する。注入後すぐに組織のボリュームを補えるのが特徴だ。また、注入が過剰だった場合など、必要なときには「ヒアルロニダーゼ」という酵素によって分解できる。

 一方、CaHAは、微細なカルシウムハイドロキシアパタイト粒子をジェルの中に分散させた製剤で、注入直後に注入部位のボリュームを補うとともに、コラーゲン産生を刺激する作用も持つ。

 どちらも体になじみやすい性質を持ち、一般には安全性の高い治療と考えられている。

 しかし使用が広がるにつれて、さまざまな合併症も報告されている。

 注入直後から数日以内には、内出血や腫れ、痛みといった比較的軽い症状が起こることがある。これらは、針やカニューレが皮膚や血管を通過することに伴うもので、多くは一時的なものであることが多い。

 一方で注意が必要なのが血管閉塞だ。

 フィラーが誤って血管内に入ったり、血管の近くに注入されて外側から血管を圧迫したりすると、血流が妨げられる可能性がある。そうなると組織への血流が滞り、重い場合には皮膚壊死などにつながる。フィラーによる血管障害では、まれながら、視力障害や脳血管障害といった重大な合併症も報告されている。

 さらに合併症は注入直後だけに起こるわけではない。数週間から数カ月後、ときには年単位で時間が経ってから、しこりや異物反応による肉芽腫、慢性的なむくみ、炎症反応、感染などが現れる場合もある。こうした遅れて生じる症状には、免疫反応や感染など複数の要因が関係すると考えられている。

 研究グループは今回、2025年までに公表された英語論文を検索し、皮膚科、形成外科、眼科、美容医療分野の論文などから、ヒアルロン酸とCaHAで起こる合併症を、発症時期や原因、重症度などの観点から整理した。

 個別の症例報告よりも、専門家のコンセンサスや規模の大きな研究を重視して評価している。

ヒアルロン酸は「溶かせる」、CaHAでは予防と早期発見がより重要

目元に注射器を近づけ、フィラー注入を行う美容医療の施術。

ヒアルロン酸はヒアルロニダーゼで分解できる一方、CaHAには速やかに分解する酵素がなく、合併症の予防と早期発見がより重要となる。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

  • ヒアルロン酸→ヒアルロニダーゼで分解できるため、血管閉塞やチンダル現象、長引くむくみ、しこりなどへの対応に利用できる。
  • CaHA→速やかに分解できる酵素がないため、合併症の予防や早期発見、支持療法がより重要となる。
  • 治療前の確認→美容効果だけでなく、使用する製剤の種類、起こり得る合併症、発生時の対応方法まで事前に確認することが重要。

 今回のレビューで、ヒアルロン酸とCaHAでは多くの合併症が共通していることが確認された。

 内出血や腫れのほか、血管閉塞、感染、しこり、肉芽腫、遅れて起こる炎症反応などだ。一方、合併症が起きたときの対応には、製剤の性質による重要な違いがある。

 最大の違いの一つが「分解できるか」。ヒアルロン酸の場合、ヒアルロニダーゼを投与することで、注入したヒアルロン酸を酵素によって分解できる。このため、ヒアルロン酸による血管閉塞のほか、皮膚が青みがかって見える「チンダル現象」、長引くむくみ、しこりなどに対して、ヒアルロニダーゼを利用した治療法が組み立てられている。

 特に血管閉塞では、早く異常に気付き、速やかに対処することがその後の経過を左右する。

 一方でCaHAには、ヒアルロン酸を分解するヒアルロニダーゼのように、注入した製剤を速やかに分解できる酵素がない。このためCaHAによる合併症では、予防や支持療法がより重要となり、状況によっては外科的な除去が必要になることもある。

 研究グループは、ヒアルロン酸とCaHAはいずれも有効で、全体として安全性の高いフィラーであると評価している。そうではあるものの、「安全性が高い」からといって、合併症が起こらないわけではない。美容目的のフィラー注入は、通常は緊急性のない、本人が選択して受ける治療。だからこそ安全性を最大限に確保することの意味は大きい。フィラー治療を受ける際には、期待できる美容効果だけではなく、使用する製剤の種類、起こり得る合併症、それが生じた場合の対応方法についても事前に確認することが重要になる。

参考文献

Sukmanskaya N, Cotofana S, Alfertshofer M. Complications of Hyaluronic Acid and Calcium Hydroxylapatite Fillers—A Comprehensive Narrative Review of Clinical Presentation and Current Management Strategies. Journal of Cosmetic Dermatology. 2026;25:e71104. DOI: 10.1111/jocd.71104.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jocd.71104

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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