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自然さと細やかさはなぜ評価されるのか 海外の手技から見えた日本の強み 麻布ビューティクリニック院長・加藤聖子氏に聞く Vol.2

カレンダー2026.5.23 フォルダーインタビュー
加藤聖子(かとう・きよこ)氏。麻布ビューティクリニック(AZABU BEAUTY CLINIC)理事長兼院長。(写真/編集部)

加藤聖子(かとう・きよこ)氏。麻布ビューティクリニック(AZABU BEAUTY CLINIC)理事長兼院長。(写真/編集部)

加藤聖子(かとう・きよこ)氏
麻布ビューティクリニック(AZABU BEAUTY CLINIC)理事長兼院長

  • 日本の技術を海外へ→ 日本の注入治療は自然さや細やかさで高い水準にあると見ている。
  • 英語発信の必要性→ 技術があっても、国際舞台では英語で説明し議論する力が求められる。
  • 海外学会が転機に→ 各国の医師の発表を見て、日本の注入治療を伝える意義を感じた。

──海外で講演する機会も多い?

加藤氏: 転機になったのは、海外の学会や教育プログラムに参加するようになったことです。会場では、各国の医師が英語で堂々とプレゼンテーションをしていました。ライブインジェクションや動画を使い、自分の注射手技をその場で見せながら説明する。そういう発表を目の当たりにして、とても刺激を受けました。

 同時に、日本の医師の技術は決して劣っていないとも感じました。むしろ、細かな仕上がりや自然さへのこだわりでは高いレベルにあると思っていました。

 それでも国際舞台では、日本の医師が積極的に発言する場面は多くありませんでした。中国やインドなどネイティブでない国の医師が英語で手を挙げて話す中で、日本の医師は存在感を出しきれていない。そこにもったいなさを感じました。

──海外の美容医療をどう見たか。

加藤氏: 海外の学会では、ライブインジェクションや動画を通して、各国の医師が自分の手技を見せながら議論していました。その中には、日本の感覚から見ると疑問を持つような手技もありました。一緒に参加していた日本の医師たちも、同じように感じている様子はありました。

──英語で伝える必要性。

加藤氏: その時、日本の医師に足りないのは英語だけではないかと思いました。英語で説明できれば、日本の医師は世界でも十分に通用するはずだと感じたのです。

 そこから、死に物狂いで英語を勉強しました。数年後には、なんとか国際舞台で英語で発表できるようになり、日本の注入治療の考え方や技術を紹介するようになりました。

 少しずつ、日本のチームも認められるようになっていきました。今では英語で発表する日本の先生も増えていますし、海外でも日本の注入治療は注目されるようになってきたと思います。自分で言うのはおこがましいですが、その流れを作る一端を担えたのではないかと思っています。

──各国の医師との交流も。

加藤氏: 私はアジア太平洋地域や中東の医師と関わることが多くありました。さらに、アメリカ以外の国から選ばれた医師が集まる教育プログラムにも参加しました。

 ヨーロッパ、ロシア、中東、アジアなどから参加者がいて、4年半ほど一緒に学びました。今では家族のような付き合いになっている医師もいます。

 各国で活躍する医師と技術や考え方を共有できることは、大きな財産になっています。海外の治療をそのまま取り入れるのではなく、顔立ちや文化、求められる仕上がりの違いを知る機会にもなりました。

  • 顔立ちに合わせる→ 白人とアジア人では骨格や皮膚の老化が違い、同じ方法をそのまま使えない。
  • アジア人は注入と相性→ たるみが少ない人も多く、注射や機器治療で自然に整えやすい。
  • 細かなニーズが技術を磨く→ 日本人や韓国人の繊細な要望に応える中で、注入技術が高まってきた。

──顔立ちによる治療の違いもある。

加藤氏: 欧米の医師から学ぶことはあります。ただ、白人とアジア人では顔立ちが違います。骨格も違いますし、皮膚の老化スピードやたるみ具合も違います。したがって、注入で必要になる量も変わります。海外の方法をそのまま日本人に当てはめればよいわけではありません。

 白人の場合は、真皮が薄く下垂しやすいため、注入量も多く必要になることがあります。そうした方法を日本人に使うなら、量を減らしたり、目的を調整したりする必要があります。そのまま行うと、不自然に見えることがあるからです。

 一方で、ブラジルの医師から学ぶこともあります。ブラジルは美容医療が盛んで、日系人のコミュニティもあります。そのため、アジア人の顔に慣れている医師もいます。白人向けの治療とアジア人向けの治療の違いを考える上で、参考になる部分があります。

──アジア人の顔に合う注入治療がある。

加藤氏: 今は、美容医療のマーケットの中心がアジアに移ってきていると感じています。アジア人は白人に比べるとたるみが少ない方が多く、注射や機器治療で対応できる範囲が広い。手術で大きく変えなくても、自然に整えられる方が多いのです。

 日本人や韓国人は、細かいところをとても気にする印象があります。少し段差が残っている、ここに違和感がある、というところまで気づかれます。医師にとっては大変な面もありますが、その細かなニーズに応えることで、技術も磨かれていきます。

──海外で発信することの価値は?

加藤氏: 日本の注入治療には、手技や仕上がりについて伝えられることがあると思っています。ただ、それを国際的な場で共有するには、英語で説明し、議論する力が必要です。技術だけでは届かない部分があると感じました。

 今では、英語で発表する日本の医師も増えてきています。日本の注入治療を、アジア人の顔に合った自然な治療として伝えていくことには意味があると考えています。(続く)

プロフィール

加藤聖子(かとう・きよこ)氏。麻布ビューティクリニック(AZABU BEAUTY CLINIC)理事長兼院長。(写真/編集部)

加藤聖子(かとう・きよこ)氏。麻布ビューティクリニック(AZABU BEAUTY CLINIC)理事長兼院長。(写真/編集部)

加藤聖子(かとう・きよこ)氏

麻布ビューティクリニック(AZABU BEAUTY CLINIC)理事長兼院長。1997年東京大学医学部卒業。同年、東京大学医学部附属病院整形外科学教室に入局。都内総合病院で整形外科を中心に、麻酔科、救命救急医療なども経験した。その後、都内美容外科に勤務し、フェイスリフト、脂肪吸引、目や鼻の形成術などの手術を執刀。2008年、麻布ビューティクリニックを設立。注入治療を中心に、違和感のない自然な美しさを目指した美容医療に取り組んでいる。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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