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美容医療はなぜ「診断」から始めるべきなのか シミをレーザーで取る前に考えるべきこと ヒルズグレイスクリニック院長・奥謙太郎氏に聞く Vol.1

奥謙太郎(おく・けんたろう)氏。ヒルズグレイスクリニック(HILLS GRACE CLINIC)院長、医療法人社団光悠会理事長。(写真/編集部)

奥謙太郎(おく・けんたろう)氏。ヒルズグレイスクリニック(HILLS GRACE CLINIC)院長、医療法人社団光悠会理事長。(写真/編集部)

奥謙太郎(おく・けんたろう)氏
ヒルズグレイスクリニック院長

  • 美容は医療の一分野→ エステとは異なり、診察と診断を前提に治療方針を立てる必要がある。
  • 自己判断だけでは不十分→ シミが見えていても、原因や背景を医師が確認して判断することが大切。
  • レーザーありきではない→ シミの原因には紫外線、ホルモン、生活習慣などが関わり、治療も一つではない。

──美容医療でも、まず診察と診断が重要になる。

奥氏: 美容医療は、エステなどとは全く違います。私は以前から、美容は医療であり、医療の一分野として考えるべきだとお話ししています。

 例えば、胃がんが疑われる場合を考えると分かりやすいと思います。診断にたどり着くまでには、画像診断を行い、内視鏡検査をし、外科的な切除が必要かどうかも検討します。診断から治療まで、患者さんの全身状態を見ながら組み立てていきます。

 美容医療も本来は同じです。ところが、シミの場合は目に見えるため、来院される方ご自身が「これはシミだ」と診断してしまうことがあります。そして、「このレーザーで取ってください」と、治療方針まで決めて来院されることがあります。

──症状が見えるために、自分で診断しやすい面がある。

奥氏: そうです。

 それを医療として考えると、不自然なことが起きていると分かりやすいと思います。胃がんかどうか分からない方が、「私は胃がんだと思うので、胃を全摘して、この方法で再建してください」と言うことはありません。

 ところが美容医療では、それに近いことが起きることがあります。シミには成因があり、背景となる病態があります。適切な診察と診断の過程があって初めて、治療方針が立ちます。そこを行うのが、本来の美容医療の仕事だと思っています。

──シミであればレーザー、という単純な話ではない。

奥氏: シミの原因は、紫外線だけではありません。ホルモンが関係する場合もありますし、ストレスや睡眠不足、身体的な負荷が関係することもあります。

 そう考えると、レーザーだけで対応すればよいという話にはなりません。身体的な負担を和らげること、腸内環境、外用、生活習慣など、さまざまな要素に目を向ける必要があります。

 目に見えているシミだけを取るのではなく、なぜそれができたのかを考えなければいけません。原因を考えずに症状だけを取ろうとすると、診療としては不十分になります。

──来院される方が、事前に情報を調べていることも多い。

奥氏: 美容医療では、来院される方が多くの情報を調べていることがあります。レーザーの名前や機器名を調べて、「これを受けたい」と来られることもあります。

 ただ、それは来院される方の問題ではありません。

 例えば大腸内視鏡を受ける時、カメラの種類やファイバーの太さまで詳しく調べる方はあまり多くないと思います。一方で、美容医療については調べる手段も多く、多くの情報にアクセスしやすい状況になっています。

 調べること自体は、全く悪いことではありません。大切なのは、どのような情報を持って来院されたとしても、医師が診察し、診断し、今の状態を正しく説明することです。

──来院後の医師の判断が重要になる。

奥氏: 今は情報があふれています。来院される方が、正しい情報だけに触れていただくのは、現実的には難しいと思います。

 だからこそ、何らかのきっかけで来院された時に、医師が診察を行い、今の状態と治療法を正しく説明することが大切になります。診察と診断は、医師の仕事です。治療に至るまでの過程として、診察と診断は欠かせません。

 来院される方が「シミを取りたい」とおっしゃったとしても、「ではこのレーザーを当てましょう」とはなりません。なぜそのシミができたのか。今の肌がどういう状態なのか。そこを見た上で、治療を考えていきます。

奥謙太郎(おく・けんたろう)氏。ヒルズグレイスクリニック(HILLS GRACE CLINIC)院長、医療法人社団光悠会理事長。(写真/編集部)

奥謙太郎(おく・けんたろう)氏。ヒルズグレイスクリニック(HILLS GRACE CLINIC)院長、医療法人社団光悠会理事長。(写真/編集部)

  • 画像診断で状態を把握→ スキンアナライザーを使い、肉眼では見えにくい肌の情報も確認する。
  • 医師が一連の流れを担う→ 診察、診断、治療方針の説明まで医師が行い、背景も含めて治療を組み立てる。
  • 長期的な評価にも活用→ 治療前後の変化を同じ条件で記録し、良い状態を保つために役立てる。

──実際の診療では、どのように診断を?

奥氏: 当院では、来院された方に対して、まず画像診断を行います。例えばシミが気になるという方であれば、しっかり洗顔していただいた上で、スキンアナライザーで写真を撮ります。その画像を確認した上で診察し、診断します。

 咳が止まらない方が来院された時に、レントゲンを撮ることがあります。それと同じように、肌についても、肉眼では見えない情報まで確認する必要があります。スキンアナライザーの画像を見ながら、どういうダメージがあるのか、どのような要因が考えられるのかを判断していきます。

 その上で、来院された方と対面し、生活習慣や背景を聞きながら、治療プログラムを組み立てていきます。カウンセラーが途中に入って治療だけを決めるような流れではありません。診察、診断、治療方針の説明まで、医師が一連の流れとして行います。

──画像診断は、治療後の評価にも関わる。

奥氏: 画像診断は、今ある状態を見るためだけのものではありません。将来に向けて、その方の状態を評価していくためにも必要です。

 治療前はどのような状態だったのか。治療後にどう変わったのか。良い変化があれば、それを維持するために何が必要なのか。逆に、ネガティブな変化があれば、どう是正していくのか。そうしたことを考えるためには、同じ条件で、精度の高い画像を撮り続けることが大切です。

 当院には、長く通ってくださる方も多くいらっしゃいます。10年通っている方であれば、その方がどのように変化してきたのかを確認できます。一度だけ診て終わるのではなく、良い状態を維持していただくところまで責任を持ちたいと考えています。

──原因を説明することで、来院される方の理解も変わる。

奥氏: 来院される方は、自分の症状が気になるから来られます。そして、多くの方は、その原因を知りたいと思っています。「なぜシミができたのか」を説明すると、ほとんどの方は納得してくださいます。

 原因が分かれば、治療だけでなく予防にもつながります。例えば紫外線が原因でできたシミであれば、治療後にどう予防していけばよいのかを理解しやすくなります。

 美容医療では、年齢のせいだから仕方がない、老化だから何となく起きる、と思われがちです。しかし実際には、症状には原因や背景があります。そこを説明し、来院される方が理解できるようにすることが、診療では大切だと思っています。

──美容医療は、症状だけを見るものではない。

奥氏: 肌という組織は、細胞の集まりです。組織を改善しようとするなら、細胞がどう成り立っているかを考えなければいけません。

 細胞の機能を高めるには、エネルギーを作る仕組み、材料、そして細胞に何を作らせるかという指令が必要です。どれかが滞ると、期待する機能は果たせません。

 例えば、非常に強い食事制限をしていて、タンパク質まで不足している場合、細胞機能は落ちます。その場合は、内科的なアプローチが必要になることもあります。また、細胞が外的刺激によって日常的にダメージを受けているなら、その刺激を遮断する方法を伝える必要があります。外用剤やサンスクリーンも、その一部です。

 シミやシワという症状がどこから出てきたのかを掘り下げて見ていくと、治療の入り口が変わります。症状だけを見て「シミだからレーザーを当てる」というものではありません。細胞や組織の状態をどう捉え、どう扱うか。そこに、診療としての美容医療があると考えています。(続く)

プロフィール

奥謙太郎(おく・けんたろう)氏。ヒルズグレイスクリニック(HILLS GRACE CLINIC)院長、医療法人社団光悠会理事長。(写真/編集部)

奥謙太郎(おく・けんたろう)氏。ヒルズグレイスクリニック(HILLS GRACE CLINIC)院長、医療法人社団光悠会理事長。(写真/編集部)

奥謙太郎(おく・けんたろう)氏

ヒルズグレイスクリニック院長、医療法人社団光悠会理事長。福島県立医科大学卒業後、大学病院や関連病院で皮膚科研修を行い、皮膚科および美容皮膚科クリニックの院長を歴任。2015年4月、あざみ野ヒルズスキンクリニックを開院。2018年4月に医療法人社団光悠会を設立し、2022年3月、ヒルズグレイスクリニックを開院した。皮膚科医として、レーザーや高周波、超音波などのエネルギーベースデバイスを用いた美容医療、画像診断、細胞・組織の状態に基づく診療に取り組む。米国レーザー医学会(ASLMS)フェロー。レーザー機器や各種美容医療機器を用いた治療法の研究、論文発表、国内外での講演、医師向け教育にも力を入れている。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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