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ゼップバウンド登場、90kg超の日本人で体重22.7%減も、偏見と「やせ薬」の危うさが課題に、虎の門病院・門脇氏ら登壇、保険適用と副作用など語る

カレンダー2025.5.2 フォルダー 国内
海外で先行して使用が広がるゼップバウンド。(写真/Adobe Stock)

海外で先行して使用が広がるゼップバウンド。(写真/Adobe Stock)

 2025年4月に肥満症の薬として「ゼップバウンド」という薬が新たに保険適用になった。この薬は、元々糖尿病の薬として使用されていた「マンジャロ」と同じチルゼパチドという成分を含むが、体重を減らす効果が認められて、保険の適用範囲が広がった形になる。

※チルゼパチドは、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド (GIP)/ グルカゴン様ペプチド1 (GLP-1)共受容体作動薬に分類される薬剤。これは糖尿病治療を目的として開発されたが、体重減少の効果から肥満症治療を目的としても開発された。チルゼパチドは、糖尿病治療薬としては「マンジャロ」という商品名で、肥満症治療薬としては「ゼップバウンド」という商品名となっている。

8割以上に副作用

秋田大学の脇氏。(写真/日本イーライリリー、田辺三菱製薬)

秋田大学の脇氏。(写真/日本イーライリリー、田辺三菱製薬)

  • 肥満症は病気→ 脇氏によると、肥満症は単なる食べ過ぎではなく、遺伝・心理・社会的要因が絡む慢性疾患であり、偏見(スティグマ)が治療の妨げになっている。
  • ゼップバウンドの効果→ 門脇氏は臨床試験で、ゼップバウンド10mgで17.8%、15mgで22.7%の体重減少を示し、プラセボ(1.7%)と比較して有意に効果があると報告した。
  • 副作用の懸念→ 一方で、便秘・吐き気・下痢といった胃腸症状は10mgで83.6%、15mgで85.7%に上り、特に15mgでは吐き気による中止例(5%)があったため、副作用への配慮も必要とされる。

 この4月、販売元の日本イーライリリーと田辺三菱製薬がプレスセミナーを開催し、秋田大学代謝・内分泌内科教授の脇裕典氏と、虎の門病院院長の門脇孝氏が講演した。

 秋田大学の脇氏は肥満症は偏見(スティグマ)に遭っていると説明した。肥満症というと、単なる食べ過ぎで起こり、その人の怠惰などが原因と見なされがちだが、遺伝、心理、社会文化、生活環境などが影響する慢性的な病気と指摘。「自己責任論に基づく偏見」によって治療の機会が奪われる問題があると説明した。

 その上で、門脇氏はゼップバウンド=チルゼパチドの臨床試験の結果を紹介した。

 これは糖尿病ではない肥満症のある日本人を対象とした臨床試験だ。主に、ゼップバウンド10mgと15mgの2つの用量の効果を確かめたもの。72週間にわたる効果を調べたもので、概ね1年半の臨床試験となっている。ゼップバウンドを週1回注射するグループと、偽薬=プラセボを飲むグループの合わせて3グループの体重変化などを比較している。

 10mgのグループは当初体重が92.4kg、15mgは91.7kg、プラセボが92.0kgで、いずれのグループもBMIが約33で、高血圧や脂質異常症などの病気を抱えている人も含む。

 結果として、注射を受けた場合、体重が10mgだと当初よりも17.8%減少、15mgだと22.7%減少した。プラセボグループは1.7%だったので大きな違いといえる。

 一方で、便秘、吐き気、下痢といった胃腸関連の副作用は10mgで83.6%、15mgで85.7%に達した。15mgでは吐き気で中止した人が5%存在した。これは10mgやプラセボのグループでは見られなかったことだ。胃腸の副作用は軽視できないと見られる。

虎の門病院の門脇氏。(写真/日本イーライリリー、田辺三菱製薬)

虎の門病院の門脇氏。(写真/日本イーライリリー、田辺三菱製薬)

日本肥満学会がステートメント

日本肥満学会が声明。(出典/日本肥満学会)

日本肥満学会が声明。(出典/日本肥満学会)

  • 適応外使用のリスク→ 日本イーライリリーは、承認外の使用には有害事象の情報がないとし、リスク理解と正しい情報提供の重要性を強調した。
  • 使用対象の明確化→ 門脇氏は、日本肥満学会の見解を引用し、肥満症と診断されない人への使用を否定。特に低体重・普通体重者への適応外使用に警鐘を鳴らした。
  • リスクの懸念→ 筋肉量減少や失明のリスクも報告されており、慎重な使用と早期のトラブル対応が求められる。

 講演では、美容目的での肥満症薬の「やせ薬としての使用」についても質問が出ていた。

 日本イーライリリーは、不適切な使用について適切な情報提供を行うと説明。有効性や安全性を検証した結果に基づいて国が承認したが、それ以外の人への使用では有害事象に関する情報が存在しないと指摘。リスクの理解が重要と説明した。

 さらに門脇氏は、日本肥満学会が「肥満症治療薬の安全適正使用に関するステートメント」を出しており、肥満症と診断されない肥満に用いるべきではないと強調した。低体重や普通体重の適応外使用には警鐘を鳴らしたいと述べた。

 ヒフコNEWSで伝えているが、肥満症薬には体重減少に伴う筋肉量の減少が懸念されている。さらに、失明につながる副作用も報告されている。

※非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)のリスクが指摘された。(参考文献に記事)

 安易な使用は避けるとともに、使用中にトラブルが発生した場合には迅速な対処が必要だ。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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