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体重減少効果で注目の「GLP-1薬」、まれながら重い副作用の報告、米国医師会雑誌が注意呼びかけ

カレンダー2023.11.17 フォルダー 海外

ポイント

  • 体重を減らす効果が注目される糖尿病薬にまれだが重い副作用の心配がある
  • 膵臓の炎症、胃腸が詰まる、胃腸がまひするといった副作用の可能性がある
  • 長期にわたって使うことにより、別の合併症が発生する可能性も考えられている
海外で肥満症薬として販売されているセマグルチド。商品名はWegovy。(写真/Adobe Stock)

海外で肥満症薬として販売されているセマグルチド。商品名はWegovy。(写真/Adobe Stock)

 体重を減らす効果が注目されている糖尿薬に、まれではあるものの、重い胃腸の副作用が報告されているとして、世界を代表する医学誌である米国医師会雑誌(JAMA)が2023年11月15日、医療関係者に対して注意を呼びかけている。

 日本でも自由診療でダイエットのために使う人が増えているとされ、メリットばかりではなく副作用にも目を向けることが重要だ。

胃腸の重い副作用が起こる心配

胃腸に起こるまれな副作用が指摘されている。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

胃腸に起こるまれな副作用が指摘されている。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 ヒフコNEWSでも伝えている通り、「GLP-1受容体作動薬(以下、GLP-1薬)」と呼ばれる薬が世界中で人気になっている。この薬は体重を減らす効果が注目され、そのために世界的に供給不足が起きている。

 この薬はもともと糖尿病の治療に使われていたが、体重を減らす効果が確認されたことから、肥満症の薬としても承認された経緯がある。最初に肥満症薬として米国で承認されたのがセマグルチドと呼ばれる薬であり、さらに同じ効果を持つ複数の薬が承認される予定だ。

※セマグルチドは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬として知られる薬。血糖値を下げるホルモンのインスリン分泌を促進し、血糖値を低下させる効果を持っている。もともと糖尿病治療を目的として開発されたが、体重減少の効果から肥満症治療を目的としても開発され、日本を含めて各国でそれぞれの治療目的で承認されている。なお、注射薬と飲み薬が存在しており、使用目的と薬の形態によって商品名が異なっている。糖尿病治療を目的とする場合、注射薬は「オゼンピック」という商品名で、飲み薬は「リベルサス」という商品名。肥満症治療を目的とする場合、注射薬は「ウゴービ」という商品名である。今後、肥満症治療を目的とした飲み薬が登場する可能性がある。

 今回、米国医師会雑誌では、セマグルチドをはじめとしたGLP-1薬を使った一部の人に、まれではあるものの、重い胃腸の合併症が発生する可能性があると、注意を呼びかけている。

 具体的には、GLP-1薬の使用により、膵臓の炎症が起こる可能性や、胃腸が詰まったり、まひを起こしたりする可能性がある。また、手術時に麻酔する場合に、GLP-1薬を使っていると、嘔吐により呼吸が困難になるリスクも指摘されている。GLP-1受容体作動薬の一般的な副作用としては、吐き気や嘔吐、便秘、下痢が報告されているが、このほかの重い副作用も気を付けると良さそうだ。

 なお、米国国立糖尿病・消化器・腎臓病研究所のスーザン・ヤノフスキー医師によると、特に体重の重い人で重い合併症に注意する必要があるという。

長期的な副作用の研究も進んでいる

研究が進行中。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

研究が進行中。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 さらに、長期的な副作用の可能性も疑われており、その研究も進行中だ。

 例えば、動物実験からは、甲状腺がんの一種のリスクが上昇する可能性があると示されている。さらに目の網膜に病気を起こす可能性についての研究も行われている。長期にわたって薬を使うことによる副作用の中には、まだ知られていないものも考えられている。

 ヤノフスキー医師らは、薬は少量から始め、増やすときにも、場合によっては増やすペースを落とすように求めている。

 日本でもこの薬は注目されているが、効果ばかりではなく、副作用にも注意しておくのは重要だ。

参考文献

Ruder K. As Semaglutide’s Popularity Soars, Rare but Serious Adverse Effects Are Emerging. JAMA. 2023 Nov 15. doi: 10.1001/jama.2023.16620. Epub ahead of print. PMID: 37966850.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37966850/

ダイエット目的の薬が不足、厚生労働省に糖尿病治療薬の要望書、関連団体が提出
https://biyouhifuko.com/news/japan/4213/

肥満症対策の新薬セマグルチド、心臓病などの予防効果も
https://biyouhifuko.com/news/research/2958/

肥満症の新たな治療法?セマグルチド飲み薬が体重減少に効果
https://biyouhifuko.com/news/research/2373/

「GLP-1ダイエット」広告、美容医療の新たな問題?厚労省が委員会で議論
https://biyouhifuko.com/news/japan/3731/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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