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「セクレトーム」や「パーソナライズ」美容皮膚科の実践とは、第111回日本美容外科学会(JSAS)

カレンダー2023.5.17 フォルダー 国内

ポイント

  • 脂肪幹細胞から分泌されるセクレトームが若返りなどを目的として検討されている
  • パーソナライズされたスキンケアのアプローチが肌の悩み解決につながっている
  • リモデリング製剤やホルモン補充療法がポジティブな効果を確認されている
日本美容外科学会(JSAS)。写真/編集部

日本美容外科学会(JSAS)。写真/編集部

 第111回日本美容外科学会(JSAS)では「美容皮膚科の未来」と題したシンポジウムが開催された。このシンポジウムでは、スキンケアの専門家が、幹細胞、毎日のスキンケア方法、製剤の処方、ホルモン補充など、さまざまな角度から議論し、美容皮膚科の分野での最新の進歩や実践が紹介された。

若返りのための「セクレトーム」

セクレトームは細胞から分泌される。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

セクレトームは細胞から分泌される。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 最初に講演した自治医科大学形成外科教授の吉村浩太郎氏は、主に脂肪幹細胞由来の幹細胞を使った治療に注目している。吉村氏が脂肪幹細胞から分泌されてくる有益な物質を利用する可能性を探っている。

 幹細胞が放出する有益な物質というと、「幹細胞培養上清液」や「エクソソーム」が注目されている。これらはヒフコNEWSでも伝えているが、吉村氏が利用を考えているのはエクソソームとともに細胞から分泌される有益な成分を抽出した「セクレトーム」である。既にセクレトームを提供するテレバイオという設立し、セクレトームの若返り効果に着目した研究を進めている。

 吉村氏は、「東京大学と共同で、セクレトームの不妊治療への応用の可能性を探る研究を行っている」と説明する。不妊症の要因の一つに、受精卵が子宮内膜に着床しづらいという問題がある。この難点は、子宮内膜が薄くなることが一因と考えられ、研究ではセクレトームを子宮内膜に注入し、子宮内膜の厚みを増すことで、着床を促すことを目指している。

 さらに吉村は、セクレトームを美容医療への応用の可能性も探る。例えば、頭皮にセクレトームを注入して、毛髪を促すアイデアなどがある。今後、応用範囲は増えそうだ。

第一線の専門家が解説するスキンケア実践

2023年5月11日に始まった日本美容外科学会(JSAS)学術集会。写真/編集部

2023年5月11日に始まった日本美容外科学会(JSAS)学術集会。写真/編集部

 続いて登壇した野本真由美スキンケアクリニック(新潟市中央区)総院長の野本真由美氏は、スキンケアの実践経験から得た考え方を披露した。野本氏が強調するのは、肌の悩みに合わせてアプローチすること。肌の健康を第一に考えることが美肌への早道ということだ。「先に引いて後に足す」という考え方を重要視している。

 パーソナライズした方法により肌の改善につながっている。同氏はTEWL(経皮水分蒸散量)、アレルギー、皮脂の過剰分泌、メラニンなどによる茶色み、ヘモグロビンなどによる赤み、食事などによる黄色みなどの要素を検討し、くすみや毛穴の開きに対処する方法を紹介する。生活習慣やメイクアップを見直してもらうことで、肌の健康状態や見た目を改善することができることを写真を示しながら解説した。

 次に、ヤナガワクリニック(大阪市中央区)院長の梁川厚子氏は、リモデリング治療で肌の質感や見た目を向上させる方法を紹介した。これらの方法は、肌の土台を改善し美しさを実現することを目的とする。同氏は肌の悩みの根本的な原因に対処し、真皮などの状態を改善することで、リモデリング治療が長期的に効果をもたらすと説明した。

 渋谷セントラルクリニック(東京都渋谷区)総院長の大友博之氏は、 ホルモン補充療法の活用について語った。同クリニックは、運動療法や栄養療法を含むアプローチを採用し、ホルモン補充療法が、身体的および精神的な健康に有益な影響をもたらすことに着目している。同氏はシワやたるみの発生にはホルモンが関与し、ホルモン補充療法はこれらの悩みを解決する上で意義があると指摘。実践の中で高い満足度を得られていることを紹介した。

 最適なスキンケアのヒントは日々の実践の中から生まれている。

日本美容外科学会(JSAS)。写真/編集部

日本美容外科学会(JSAS)。写真/編集部

参考文献

「乳歯歯髄幹細胞培養上清」「MSC-QQC細胞」応用広がる、第111回日本美容外科学会(JSAS)
https://biyouhifuko.com/news/

再生医療連載vol.1 日本独自の再生医療のルールを解説、知っておきたいこと
https://biyouhifuko.com/news/column/958/

再生医療連載Vol.2 再生医療委員会に5つの問題発覚、公正さ欠く実態など明らかに
https://biyouhifuko.com/news/column/1022/

再生医療連載Vol.3 エクソソームとはそもそも何か──第22回日本再生医療学会総会の会議を通して考える
https://biyouhifuko.com/news/column/1159/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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