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美容医療の施術後の修正、実践と進化、第111回日本美容外科学会(JSAS)

カレンダー2023.5.18 フォルダー 国内

ポイント

  • 第111回日本美容皮膚科学会(JSAS)で美容施術後の修正をテーマに議論された
  • フェイスリフト、鼻の整形、脂肪吸引、乳房手術での修正の実践が蓄積されている
  • 美容医療では修正を要することが多いためこれからの修正技術の進化も注目される
日本美容外科学会(JSAS)。写真/編集部

日本美容外科学会(JSAS)。写真/編集部

 美容医療の分野では、施術手術が必要になることが珍しくない。第111回日本美容外科学会(JSAS)では「アンチエイジング外科学会 修正手術セッション」としてシンポジウムで、美容医療における修正手術に関する課題と解決策が議論された。

フェイスリフトや鼻整形の工夫を紹介

2023年5月11日に始まった日本美容外科学会(JSAS)学術集会。写真/編集部

2023年5月11日に始まった日本美容外科学会(JSAS)学術集会。写真/編集部

 銀座キューヴォクリニック(東京都中央区)院長の久保隆之氏は、フェイスリフトの外科的な手術や糸を使うスレッドリフトについて歴史や基礎的な解剖学的な特徴などを示した上で、実例を基に手術の技術について解説した。

 講演では、人種や民族によってフェイスリフトの手術への必要度が異なることが紹介された。というのは、欧米の人たちは肌の老化に伴ってシワが目立ちやすく、フェイスリフトの手術を受けるニーズも高い。一方、日本人を含むアジア系の人は、顔のシワが少ない傾向がある。久保氏はスレッドリフトの症例を修正したケースを示しつつ、傷跡が少なくリスクの低い施術を好む日本人の好みに合わせたフェイスリフトの外科的な手術法を解説した。

 ヒフコNEWSでも、世界および米国のグローバルでの美容医療トレンドをお伝えしてきた。欧米ではフェイスリフトの外科的な手術も人気だ。美容医療が身近になる中で、日本人の肌質や好みなどを踏まえ、フェイスリフトのニーズがどのように変わるか注目されるのかもしれない。

 続いて、アネシス美容クリニック(名古屋市中区)の水野力氏は、鼻の整形手術に対して15年間にわたって取り組んできたアプローチを解説した。鼻の整形では、シリコンインプラントや胸の肋軟骨や耳の軟骨が使われることが多いが、シリコンが飛び出てきたり、石灰化したりと合併症を起こす問題がある。そうしたケースでは修正が必要になる。

 水野氏が実践しているのは、「筋膜被覆細片軟骨移植法」。文字通り筋肉を覆っている膜を使い、これに細かく切った軟骨を包んで鼻の整形に使う。この手法では自らの組織を使うため異物反応を起こしにくいことに加え、鼻先が動くため自然な状態を保てるのが利点だ。これまで手術を行った結果、長期の結果が良い点も重要だ。

 実績に裏打ちされる形で、より自然で合併症の少ない鼻の整形手術へと進化することが望まれる。

脂肪吸引の修正を振り返る

インプラントを入れたときにはその後の検査も必要。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

インプラントを入れたときにはその後の検査も必要。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 ジョウクリニック(大阪市北区)総院長の重本譲氏は、脂肪吸引後に起こり得る問題への対処法について解説した。よく起こる問題の一つに治療した部分に不均一な肌の凹凸が残ることが挙げられるが、重本氏は、大がかりな修正が必要だった実例を示し、それに伴う課題や注意点を強調した。その実例とは、脂肪吸引後に足の脂肪が過度に取られて歩行困難になり、松葉杖をついて通院することになるというケースだった

 この時は、脂肪吸引の際に筋肉なども傷つけたとみられ、施術を受けた本人は痛みも訴えていたという。ジョウクリニックでは脂肪吸引を片脚ずつ対応するため、脂肪吸引を受けていないもう片方の足から脂肪を移植。結果として最初に脂肪吸引をした足に脂肪が戻り、歩行できるまでに回復に至った。「片脚ずつ脂肪吸引する方針だったから修復が可能だったが、両脚同時に行っていたら無理だった」(重本氏)。

 最初に脂肪吸引に当たった医師はスタッフに対して多くの脂肪を取ったことを誇るような言動をしていたことを振り返り、「術者には虚栄心や自信過剰な面があった一方で、経験不足や技術不足なもあったと考える。そうした姿勢は慎むべきだろう」と語った。

 座長も務めた新宿美容外科・歯科(東京都新宿区)院長の酒井成身氏は、乳房の形成手術や乳房再建後の修正手術など、乳房の手術の実際を紹介した。

 酒井氏は、異物挿入で乳房が硬くなったケースや、乳がん手術後に乳房のバランスが崩れたケースなど、さまざまなケースに遭遇してきた。また、母乳育児をしやすくするために陥没乳頭を授乳可能な状態で乳頭を引き出して治す「酒井法」と呼ばれる手術法についても解説した。さらに、個人の希望に合わせた乳輪や乳房縮小手術のケースも紹介した。

 美容医療の治療後の修正は重要な役割を担っておりその技術の進歩も注目される。

参考文献

美容整形手術の最新動向、脂肪吸引が豊胸術を抜き、世界で最も人気のある美容整形手術に
https://biyouhifuko.com/news/world/925/

コロナ禍の中で美容医療を受ける人が急増、リモートワークの影響などか?
https://biyouhifuko.com/news/world/1049/

コロナ・パンデミックが世界の美容を変えた、その背景に韓国美容のトレンド
https://biyouhifuko.com/news/world/147/

「求める理想像に変化 SNS上の加工画像が『なりたい顔』」
https://biyouhifuko.com/news/world/361/

第5回全国美容医療実態調査最終報告書
https://www.jsaps.com/jsaps_explore_5.html

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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