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男性医療脱毛ウルフクリニック突然閉鎖も根は共通か、診療所の倒産が過去30年で最多、東京商工リサーチ調査

カレンダー2023.5.25 フォルダー 国内

ポイント

  • 東京商工リサーチ調査から、2022年度に診療所の倒産が増えている実態が明らかになった
  • 倒産件数は過去30年間で最多で、小規模な診療所の運営が困難になっている
  • 男性医療脱毛のウルフクリニック閉院が注目されたが、美容医療でも無縁でない可能性
一般診療所の倒産が過去30年で最多。(出典/東京商工リサーチ)

一般診療所の倒産が過去30年で最多。(出典/東京商工リサーチ)

 2023年5月23日、東京商工リサーチ調査から、2022年度に診療所の倒産が増えている実態が分かった。倒産件数は過去30年間で最多で、比較的小規模な医療機関の運営が困難になっている。美容医療でも男性医療脱毛のウルフクリニック突然閉鎖が注目されたが、無縁でない可能性がある。

開業が増え競争激化

販売不振や放漫経営がある。(出典/東京商工リサーチ)

販売不振や放漫経営がある。(出典/東京商工リサーチ)

 東京商工リサーチは、病院や診療所を含む、企業などの信用調査をする会社で、倒産を含めさまざまな業界動向についての情報を定期的に出していることでよく知られている。

 このたび発表された東京商工リサーチ「TSRデータインサイト」によると、22年度に診療所の経営が悪化する傾向が強まり、診療所の倒産が過去20年間で最多になったことが判明した。

※同調査では、日本産業分類の「一般診療所」(20人未満の入院設備を有する、または入院設備のない医療機関)の2022年度(4~3月)の倒産を集計、分析した。

 大病院や歯科医院の倒産が減っているにもかかわらず、診療所の倒産が急増している。収入が減少したり放漫経営があったりすることが原因になり倒産に至っている。

 今回、東京商工リサーチでは背景にある診療所が置かれる状況について分析している。それによると、診療所の経営が厳しくなっている傾向の背景には、設備の投資が比較的少なくて済む診療所の新規開業が増え、競争が激化していることが大きいと考えられている。

 また、22年度のデータを見ると、コロナ大流行の影響が顕著に現れていることも明らかになった。多くの診療所で、コロナによる患者数減少が見られていた。コロナ流行の当初は、補助金をはじめとした公的なサポートがあり、倒産は減っていた。ところが、21年以降に公的なサポートが減っていったため、対応が遅れた施設は経営が苦しくなった。

 さらに、後継者不在のまま院長が高齢になったり、診療報酬の違法な請求に手を染めていたりする、診療所の院長が課題に直面するケースも増えていた。こうした事情が、診療所の倒産増加につながった。

美容医療も置かれた状況は似ている可能性

安すぎて怪しい?と不安に応えようとしていたが閉院の事態に陥った。出典/ウルフクリニックホームページ

安すぎて怪しい?と不安に応えようとしていたが閉院の事態に陥った。出典/ウルフクリニックホームページ

 東京商工リサーチでは、22年度の診療所倒産は、小規模な医療機関が抱える構造的な課題を浮き彫りにしたと指摘する。

 日本政府は、「かかりつけ医機能」といった地域の医療を比較的小規模な診療所が支える仕組みを作ろうとしている。しかし、改革は診療所任せになっており、それらの診療所は積極的に動けず、経営が厳しい状況になっていることも多いようだ。先に書いたように、競争激化やコロナの影響などがあり、大きな改革を進めるどころではない可能性もあるだろう。

 今回の調査から見えた診療所の経営の厳しい状況は、美容医療でも共通している可能性がある。今回の調査結果と同様に、美容医療分野では小規模な施設が多数存在するため、初期投資が少なくて済むことで、診療所の数が増えていると考えられるからである。

 ヒフコNEWSでも伝えた男性医療脱毛ウルフクリニック突然閉鎖の問題においても背景には競争激化はあると推定された。これもヒフコNEWSで伝えたが、かねてエステ脱毛の倒産急増が明らかになっていた。その背景には利用者増加や店舗増加に伴い宣伝広告費の増加が迫られ、一方でスタッフ採用のための人件費増加などによる利益圧迫があった。これは医療脱毛でも同様な状況が当てはまると考えられた。多数の人たちに迷惑をかけているクリニック突然閉鎖という異常事態の背景に競争激化が起きていたと見られるのである。

 また、医療脱毛だけでなくても、美容医療を担う診療所は規模が大きくないところが少なくない。それだけにここで見てきたような競争激化をはじめとした課題が共通している可能性はある。結果、運営が行き詰まるところが出てくる可能性もゼロではない。美容医療の利用においては、医療機関の置かれた状況を知っておくことも参考になるかもしれない。

参考文献

2022年度の「診療所」倒産、過去最多の22件「コロナ関連」は減少、後継者難や不正発覚が増加
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1197674_1527.html

医療脱毛クリニック突然閉院、SNSで嘆きの声、相談窓口の設置も
https://biyouhifuko.com/news/japan/1123/

男性専門医療脱毛ウルフクリニック閉鎖で、救済の動きが広がる
https://biyouhifuko.com/news/japan/1330/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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