ウルフクリニック「経営関与の会社」破産へ、美容医療の信頼性に懸念抱かせかねない問題
ポイント
- 東京商工リサーチが、ウルフクリニックの経営に関与した会社の破産手続き開始を報告
- 900人以上の利用者が、返金トラブルに巻き込まれている可能性がある
- このような状況は、美容医療の信頼性に懸念を抱かせかねない
2023年6月16日、医療機関を含めた倒産動向に詳しい東京商工リサーチが、男性専門医療脱毛のウルフクリニックの経営に関与していたTBIが破産手続きを開始したと報告した。同クリニックは突然閉鎖され、利用者が路頭に迷う問題が継続していた。混乱の中、経営関与のTBIの破産手続きの開始についてもSNS上で漏れ伝わっていたが、今回より一般に認知されたことになった。
「前受金に依存していた」
東京商工リサーチによると、ウルフクリニックは22年の開業から店舗を全国5つに増やし知名度を高めた。ところが、4月に突然クリニックが休業、5月中再開予定とされていたが再開しないまま、店舗と利用者との間の返金トラブルが相次いだと説明している。関連する顧客は900人以上に上るという。
ウルフクリニックは、より多くの利用者を獲得するために、コース料金を半額にする割引料金を提供していた。
「月額で安く見せてるだけのクリニックに要注意」
「ウルフクリニックの医療脱毛は、コスパ最強、今なら全コース半額」
「安すぎて怪しいって?」
上に掲げた画像の通り、これらはウルフクリニックが自院のホームページに大々的に掲げていた宣伝文句だった。このようなマーケティング戦略を取ることで、「自分たちのクリニックはほかとは違う」とアピールしていたわけだが、結果として利用者に大きな不便を強いることになった。
東京商工リサーチの調べによると、同クリニックは新規開店にかかる費用や業界以内の競争のための費用がかさんでおり、利用者が最初に支払う前受金頼みになっていたという。
もともと競争が激しいとされるエステ脱毛だけではなく、医療脱毛も競争が激しくなっている状況は関係したかもしれない。
なぜ「クリニックの破産手続き開始」ではないのか
また、今回の問題は、クリニックの倒産といった形ではなく、「経営に関与する会社」であるTBIの破産手続き開始という形になっているのは特徴的だろう。
そもそも医療法に基づき、医科の医療機関は医師のみが開設者になれる。一方で、資金や物資、人材の提供といった形で、企業が実質的な経営を担っているケースはある。TBIも同様に、医師を開設者としながらウルフクリニックの経営に関わってきたと見られる。
今回は何らかの理由により、会社側の資金が尽き経営破たんに陥った。それ以前に、クリニックも突然閉鎖になり、実質破たんしていた。この経緯からは、一般的には表になりづらい経営実態の問題が浮き彫りになった。似た問題は今後も起こる可能性があり、クリニック選びでは注意しておいた方がよいかもしれない。
また、今回の件では、開設者だった医師の責任も問われる可能性がある。企業が実質的な経営を担っていたとしたら、医師にとっても想定外の重い責任になるだろう。今回のウルフクリニック関連の問題をきっかけに、似た経営形態のクリニックは医師から敬遠される可能性もあるだろう。仮にそうなれば、医師が寄りつかない医療機関は行き詰まることもあり得る。
今回の件は、1つの医療チェーンの話であるものの、日本国内の医療全般に思わぬ変化をもたらす可能性もある。
返金など救済の動向に注目
900人以上とも見られる利用者が救済されるかは不透明だ。利用者にとっては未消化分の施術料を返金してもらうのが端的な解決策になるだろうが、ウルフクリニックの経営を実質的に仕切っていた会社が破産となれば、返金は困難である可能性はある。
SNSの書き込みを見ると、十万円単位の被害を訴える声が見受けられる。東京商工リサーチによると、TBIの抱えた負債の総額は調査中ということ。今後、従業員や利用者、取引先、金融機関などに対する負債総額が明らかになった後に、返済の可否など全容が見えてくるだろう。
ヒフコNEWSで伝えたように、利用者がクレジットカード利用した場合であれば、「チャージバック」などの仕組みを利用して返金を受けられる可能性はある。これは必ず返金を受けられるとは限らないものの、クレジット払いだった利用者は早急に申請を試すのが賢明と言えるだろう。
また、同様に以前ヒフコNEWSで伝えたが、ウルフクリニックの突然の休業を受けて、他の医療脱毛やエステ脱毛の施設が、救済のために安価に施術を提供する動きが広がっていた。その後も、新たに複数の施設が救済を申し出ている状況になっていた。男性の顧客を増やすことは、医療脱毛、エステ脱毛のいずれにとってもメリットはあり得る。よってこうした救済が広がる可能性はあり、返金は叶わなくとも、施術を希望する人には少しもの救いになる面があるだろう。
もっともSNS上では、ウルフクリニックの経営に関与する企業はTBI以外にも存在すると指摘する声が見られ、いまだに不透明な点もあるようだ。ウルフクリニックが破産手続きに至った背景についての詳細は完全には分かっていないが、このような事態で多数の被害者が出たことにより、美容医療全般に対する信頼性も問われかないとも言える。今後、この問題に関連する動きについては引き続き注視する。
参考文献
TSR速報(株)TBI(東京商工リサーチ)
https://www.tsr-net.co.jp/news/tsr/detail/1197734_1521.html
男性医療脱毛ウルフクリニック突然閉鎖も根は共通か、診療所の倒産が過去30年で最多、東京商工リサーチ調査
https://biyouhifuko.com/news/japan/1536/
医療脱毛クリニック突然閉院、SNSで嘆きの声、相談窓口の設置も
https://biyouhifuko.com/news/japan/1123/
男性専門医療脱毛ウルフクリニック閉鎖で、救済の動きが広がる
https://biyouhifuko.com/news/japan/1330/
脱毛サロン倒産急増、予約トラブルなど影響、帝国データバンク
https://biyouhifuko.com/news/japan/860/
男性医療脱毛ウルフクリニック突然閉鎖、女性も知っておきたいクレジット返金ルール
https://biyouhifuko.com/news/japan/1952/
医療法(抜粋)(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/shikarinsyo/gaiyou/kanren/iryo.html
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